31 / 52
第三章 廃墟の遊園地
31話 第三のアトラクション! バイキング!
しおりを挟む
バイキングとは、海賊船にも似た遊具に乗り込んで、起動と開始にブランコのように前後に揺れ動くアトラクションの事だ。たった今乗船したバイキングの乗組員は最大60名となかなかに大掛かりな物だった。
「この金塊の山に免じて、荷物と衣服を奪うことはやめておこう」
小袋にはピカピカに磨かれた5円玉が数百枚ある。それを見て手のひらを返したという訳だ。
(ダークネス・カイザー様は何であんなものを持っていたのかしら……さすがは我がクレヴァナルを束ねるリーダーと言えばそれまでだけど……)
「貴方、いつもそんなに小銭を持って出歩いてるのですか?」
ビーブリオテーカ様が、私と同じような疑問を持ちツッコミを入れた。
「闇の取引を心得ていると言ってもらいたいものだなぁ! ビーブリオテーカよ! そんなことより、全員このスピリットナービズに乗り込むぞ!」
「は、はい」
「むっ! そこの男、ここはアイアイサーと言うべき場面だぞ! 何だその気の抜けた返事は! もう一度やり直せ!」
「あ、あいあいさー……」
荷物をまとめていたソリトゥス様は、元気なく答えた。無理もない女性陣の荷物を一手に引き受け、長時間にも渡って、あのもやしっ子のソリトゥス様だ、疲れない方がおかしいのだ。
「まぁ、いい乗れ! 我がスピリットナービズの乗り心地に酔いしれるが良い!」
(船酔いしなければいいけど……ソリトゥス様の見かけだとしそうなのよねぇ)
私たちは全員――スピリットナービズに乗船し、安全装置をしっかりと固定し安全を確保する。これで条件は整った、何時動いても大丈夫だ。今回は撮影カメラを固定したヘルメットをかぶり、動画撮影をすることにした。視聴者の皆にもこのアトラクションの臨場感を少しでも届けて客足を増やさなくてはならない。バステトもバイキングから離れた場所で見守ってくれている。一応、身長制限があったのだが、全員難なく突破した。
「いやいや、アイツはどうするんだよ! このまま乗るのはいいけど、その後だ! あのお化け退治できるのか?」
「(何を言ってるの……? いつもみたいに貴方が退治すればいいじゃない……それとも何、自称大悪魔さんは数百年という語感だけで臆してしまったの?)」
「ビビってるわけじゃないが、アイツの妖力とんでもないぞ! おまけに武器を持っている。少し本気を出さないとやられちまうのは確かだ。どうするアイツ倒した方がいいか?」
「(そうねぇ~~武器も持ってるし、危ないから倒しちゃってくれるかしら。まぁ出来るのならだけど……)」
「……お前、完全に俺様の事舐めてるよなぁ、一応これでも大のつく悪魔様なんだぞ――」
私とデビルンが口論していると、バイキングが動き出した。
まずは前にゆっくりと動き出し、次に後ろへとゆっくり動き出す。まるでブランコにでも乗っているかのような動き、少しずつ前後の動きが速度を増ししてゆく。
「き、きゃあ――」
クリスチャンが絶叫を上げかけた。
「う、こ、これはなかなか酔いが来ますねぇ、うっぷ」
案の定、船酔いするソリトゥス様。
「この程度の速度と到達点では私は満足できません」
到達点はおよそ58度、これでもかなりきついのに、さすがはビーブリオテーカ様だ。余裕の表情を浮かべている。
「フーハッハッハッハッ! まだまだこれからよー! 小娘が、もっとだもっと速度を上げてやる! そして真の絶叫を上げるがいい!」
(えぇ……何このガイコツ、船の先頭部分で仁王立ちしているのだけど……思いっきりカメラに映ってるじゃない――下でも向こうかしら……いえ、ダメね。それじゃあバイキングの宣伝になりはしない。ここは正面を向くのが正解。例え骸骨が映ろうとも
、何が起きようとも――)
直後私は失神しそうになった。なんとバイキングが一回転したのだ。これに驚いたクリスチャンは――
「キャああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
という絶叫を上げ続け、あとはしばらく自分の太もも付近に目線を合わせ、次第に瞳を閉じて、この悪夢が早く終わるように祈りながら耐え続けるのであった。
「フーハッハッハッハッ! フーハッハッハッハッ! いいぞいいぞ! 我が名はダークネス・カイザーこの世の全てを統べる者なり!」
ダークネス・カイザー様のテンションは最高潮だった。
「…………………………」
顔を硬直させるビーブリオテーカ様。流石に今の一回転には驚いたらしい。
「――よ、よ、酔った」
口元抑えるソリトゥス様。
「なかなかおもしれ―なコレ! グルングルン行くぞーー! ひゃっほーーい!」
デビルンは余裕うそうだが、私はそうとも言ってられない。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫を上げているのは、何もクリスチャンだけではない。軽く涙目の私も限界だった、何せ……
「ちょっと! ちょっと! いつまで続くのよ! この回転は!? 早く止めてくれないかしらあ!?」
バイキングはもう7回転もしているのだから。
「な~~に、ぬかしてんだ! 一度航海に出た船がそう簡単に冲に上がれるかよ! まだ前回転だけじゃないか! 後ろ回転も残っているんだ! あと10分頑張んな!」
「無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
それからしばらく一生分のバイキングを楽しんだ。視聴者のことは何とか考えて前だけを見ることが出来た。今の私の姿は大邪神を崇める私にとっては、憎き勇者その者であっただろう。
(――もう二度とこんなバイキングには乗りたくないわ)
私は心の底からそう思った。
「この金塊の山に免じて、荷物と衣服を奪うことはやめておこう」
小袋にはピカピカに磨かれた5円玉が数百枚ある。それを見て手のひらを返したという訳だ。
(ダークネス・カイザー様は何であんなものを持っていたのかしら……さすがは我がクレヴァナルを束ねるリーダーと言えばそれまでだけど……)
「貴方、いつもそんなに小銭を持って出歩いてるのですか?」
ビーブリオテーカ様が、私と同じような疑問を持ちツッコミを入れた。
「闇の取引を心得ていると言ってもらいたいものだなぁ! ビーブリオテーカよ! そんなことより、全員このスピリットナービズに乗り込むぞ!」
「は、はい」
「むっ! そこの男、ここはアイアイサーと言うべき場面だぞ! 何だその気の抜けた返事は! もう一度やり直せ!」
「あ、あいあいさー……」
荷物をまとめていたソリトゥス様は、元気なく答えた。無理もない女性陣の荷物を一手に引き受け、長時間にも渡って、あのもやしっ子のソリトゥス様だ、疲れない方がおかしいのだ。
「まぁ、いい乗れ! 我がスピリットナービズの乗り心地に酔いしれるが良い!」
(船酔いしなければいいけど……ソリトゥス様の見かけだとしそうなのよねぇ)
私たちは全員――スピリットナービズに乗船し、安全装置をしっかりと固定し安全を確保する。これで条件は整った、何時動いても大丈夫だ。今回は撮影カメラを固定したヘルメットをかぶり、動画撮影をすることにした。視聴者の皆にもこのアトラクションの臨場感を少しでも届けて客足を増やさなくてはならない。バステトもバイキングから離れた場所で見守ってくれている。一応、身長制限があったのだが、全員難なく突破した。
「いやいや、アイツはどうするんだよ! このまま乗るのはいいけど、その後だ! あのお化け退治できるのか?」
「(何を言ってるの……? いつもみたいに貴方が退治すればいいじゃない……それとも何、自称大悪魔さんは数百年という語感だけで臆してしまったの?)」
「ビビってるわけじゃないが、アイツの妖力とんでもないぞ! おまけに武器を持っている。少し本気を出さないとやられちまうのは確かだ。どうするアイツ倒した方がいいか?」
「(そうねぇ~~武器も持ってるし、危ないから倒しちゃってくれるかしら。まぁ出来るのならだけど……)」
「……お前、完全に俺様の事舐めてるよなぁ、一応これでも大のつく悪魔様なんだぞ――」
私とデビルンが口論していると、バイキングが動き出した。
まずは前にゆっくりと動き出し、次に後ろへとゆっくり動き出す。まるでブランコにでも乗っているかのような動き、少しずつ前後の動きが速度を増ししてゆく。
「き、きゃあ――」
クリスチャンが絶叫を上げかけた。
「う、こ、これはなかなか酔いが来ますねぇ、うっぷ」
案の定、船酔いするソリトゥス様。
「この程度の速度と到達点では私は満足できません」
到達点はおよそ58度、これでもかなりきついのに、さすがはビーブリオテーカ様だ。余裕の表情を浮かべている。
「フーハッハッハッハッ! まだまだこれからよー! 小娘が、もっとだもっと速度を上げてやる! そして真の絶叫を上げるがいい!」
(えぇ……何このガイコツ、船の先頭部分で仁王立ちしているのだけど……思いっきりカメラに映ってるじゃない――下でも向こうかしら……いえ、ダメね。それじゃあバイキングの宣伝になりはしない。ここは正面を向くのが正解。例え骸骨が映ろうとも
、何が起きようとも――)
直後私は失神しそうになった。なんとバイキングが一回転したのだ。これに驚いたクリスチャンは――
「キャああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
という絶叫を上げ続け、あとはしばらく自分の太もも付近に目線を合わせ、次第に瞳を閉じて、この悪夢が早く終わるように祈りながら耐え続けるのであった。
「フーハッハッハッハッ! フーハッハッハッハッ! いいぞいいぞ! 我が名はダークネス・カイザーこの世の全てを統べる者なり!」
ダークネス・カイザー様のテンションは最高潮だった。
「…………………………」
顔を硬直させるビーブリオテーカ様。流石に今の一回転には驚いたらしい。
「――よ、よ、酔った」
口元抑えるソリトゥス様。
「なかなかおもしれ―なコレ! グルングルン行くぞーー! ひゃっほーーい!」
デビルンは余裕うそうだが、私はそうとも言ってられない。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫を上げているのは、何もクリスチャンだけではない。軽く涙目の私も限界だった、何せ……
「ちょっと! ちょっと! いつまで続くのよ! この回転は!? 早く止めてくれないかしらあ!?」
バイキングはもう7回転もしているのだから。
「な~~に、ぬかしてんだ! 一度航海に出た船がそう簡単に冲に上がれるかよ! まだ前回転だけじゃないか! 後ろ回転も残っているんだ! あと10分頑張んな!」
「無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
それからしばらく一生分のバイキングを楽しんだ。視聴者のことは何とか考えて前だけを見ることが出来た。今の私の姿は大邪神を崇める私にとっては、憎き勇者その者であっただろう。
(――もう二度とこんなバイキングには乗りたくないわ)
私は心の底からそう思った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ま性戦隊シマパンダー
九情承太郎
キャラ文芸
魔性のオーパーツ「中二病プリンター」により、ノベルワナビー(小説家志望)の作品から次々に現れるアホ…個性的な敵キャラたちが、現実世界(特に関東地方)に被害を与えていた。
警察や軍隊で相手にしきれないアホ…個性的な敵キャラに対処するために、多くの民間戦隊が立ち上がった!
そんな戦隊の一つ、極秘戦隊スクリーマーズの一員ブルースクリーマー・入谷恐子は、迂闊な行動が重なり、シマパンの力で戦う戦士「シマパンダー」と勘違いされて悪目立ちしてしまう(笑)
誤解が解ける日は、果たして来るのであろうか?
たぶん、ない!
ま性(まぬけな性分)の戦士シマパンダーによるスーパー戦隊コメディの決定版。笑い死にを恐れぬならば、読むがいい!!
他の小説サイトでも公開しています。
表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ
まみ夜
キャラ文芸
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻(ホラー風味)は現在、更新休止中です。
続きが気になる方は、お気に入り登録をされると再開が通知されて便利かと思います。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
怪盗ヴェールは同級生の美少年探偵の追跡を惑わす
八木愛里
キャラ文芸
運動神経がちょっと良い高校生、秋山葵の裏の顔は、怪盗ヴェールだった。老若男女に化けられる特技を活かして、いとこの長島澪のサポートを受けて高価な絵を盗む。
IQ200の頭脳で探偵を自称する桐生健太は、宿敵の相手。怪盗ヴェールが現れるところに、必ず健太の姿がある。怪盗ヴェールは警察の罠を華麗にかわして、絵を盗む。
私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~
阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
平凡な女子高生、若下野 葵がある日突然征夷大将軍に!?
無理難題に葵は元気に健気に立ち向かう!
そして葵に導かれるかのように集まった色男たち!
私立大江戸城学園を舞台に繰り広げられる、愛と欲望が渦巻くドタバタストーリー!?
将軍と愉快な仲間たち、個性たっぷりなライバルたちが学園生活を大いに盛り上げる!
JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。
尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
キャラ文芸
ホラー・ミステリー+ファンタジー作品です。残酷描写ありです。苦手な方は御注意ください。
完全フィクション作品です。
実在する個人・団体等とは一切関係ありません。
あらすじ
趣味で怪談を集めていた主人公は、ある取材で怪しい物件での出来事を知る。
そして、その建物について探り始める。
あぁそうさ下らねぇ文章で何が小説だ的なダラダラした展開が
要所要所の事件の連続で主人公は性格が変わって行くわ
だんだーん強くうぅううー・・・大変なことになりすすぅーあうあうっうー
めちゃくちゃなラストに向かって、是非よんでくだせぇ・・・・え、あうあう
読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。
もしよければお気に入り登録・イイネ・感想など、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
ありがとうございます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる