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第三章 廃墟の遊園地
29話 メリーゴーランドの後始末
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私はメリーゴーランドは無事に乗り終え、皆から少し離れたメリーゴーランドの前で、日傘を差し考え事をしていた。
(どうしようかしら……この馬たち、確かにお化けなのだけど、今ここで退治してしまったらこの遊園地の目玉が消えてしまうんじゃないかしら)
他者の意見も聞いておきたいので、左肩のバステトに声を掛ける。
「ねぇ、バステト……ここのお化けは退治した方がいいのかしら……?」
「その方がいいでしょう。だって主様も体験したはずです。ニンジンを与えなければ今にもメリーゴーランドから飛び出そうとする勢いの馬だったのですよ……? 退治しておいた方が安全です」
「そうよねぇ~~危ないものねぇ~~…………デビルン、あの馬全部、始末してもらえるかしら」
「別に始末してもいいけど、被害は考えないぞ……」
「メリーゴーランドごと破壊しようと言うの……?」
「そういうこと……」
「遊園地を救いに来たのに、壊してしまったら本末転倒じゃない……却下よ却下。はぁ~~、私が退治するしかないのかしら」
愚痴をこぼしながらも妖怪退治の本を開いて対抗策の項を探していく。
(えっと、これかしら……取り憑かれた物体の元に戻し方……なになに、まずはお札を用意します。次にそのお札を……)
「主様、クリス様がこちらに……」
バステトの声に肩がビクンとなって少し驚いたが、振り返るとクリスチャンが私をカメラで撮影していた。
「えっと、また何かするの? アゲハちゃん。先輩たちが次のエリアに行きましょうって言ってるよ」
「わかってるから、もう少し待っててと伝えに行ってきてくれるかしら……? こっちはやらなくてはならないことがあるのよ……それとまたここに戻って来たら撮影もよろしくね」
「は~~い、りょ~~かいで~~す」
クリスチャンがタッタッとダークネス・カイザー様達のところまで戻って行く。
(……どうやらバステト達との会話は聞かれていなかったようね)
ホッと息をついていたところ、デビルンがこんなことを言って来た。
「なんだ~~? 俺様達との会話、聞かれちゃまずいのか? 気にすんな気にすんな……あの手の人間は、えっ何この子一人でブツブツ言ってて気持ち悪い――で片付けられるから」
「それが嫌だから隠してるんでしょうに……私はオカルトに手を染めたけど、電波女や厨二女になんてなりたくないわ」
妖怪対策の本を熟読し終わったと同時に、クリスチャンが戻ってくる。
「じゃあ撮影を再開しよう。今度は何するの~~」
「今度は地味よ。まぁ見てて……じゃあ撮影を再開してちょうだい」
私は荷物の中から無数のお札とニンジンを取り出して、クリスチャンにも準備を急がせた。
「――3! ……2! ……1! ……アクション!」
「フフフ、見よ! 我が使い魔たちよ! これこそ、この世に在らざる存在達、魑魅魍魎よ!」
ニンジンを馬の前に持っていくと、パクリと食べてしまうメリーゴーランドだった。
「このメリーゴーランドには悪霊が憑りついている! この馬の一体一体がお化けの正体! CGでもなければホログラムでもない、れっきとしたリアル! だから我が力を持って存分に祓ってくれようぞ! 見るがいい我が力!」
汝らの血あらば、身もあるであろう、ならば唱える、力のあるべき場所を、本物の姿を取り戻さん! 悔いて地獄に落ちよ! 懺悔して煉獄に身を任せよ! その先は天国ぞ! クイーンエクスターミネレ!」
手でペタリペタリとではなく、バサリバサリとお札が全て宙を飛んでいき、全ての馬のおでこに張り付いた。
「――浄化!!」
その最後の一言で全ての馬は光出し、精気を失ったかのように、元の無機質な馬へと戻っていった。
「メリーゴーランド! 攻略! ――はいカット!」
私はクリスチャンに撮影カメラを停止するように促した。
「お疲れ様アゲハちゃん! 今のはどういう仕組みで光ったり、お札が飛んで行ったりしたの!? お札も消えちゃったし――」
「説明なんているかしら、私は真のオカルト少女なのよ、これくらいできて当然でしょ。それにしても、いいお札を使ったからかしら、一枚5000円するお札なのだけど……うまくいって良かったわ」
「ご、5000、えん……ゴクリ……それが数十枚も、蒸発しちゃうなんて……」
「さぁ、用事も済んだし、先輩方の元へ帰りましょうか」
そうして私たちはメリーゴーランドを後にした。
(どうしようかしら……この馬たち、確かにお化けなのだけど、今ここで退治してしまったらこの遊園地の目玉が消えてしまうんじゃないかしら)
他者の意見も聞いておきたいので、左肩のバステトに声を掛ける。
「ねぇ、バステト……ここのお化けは退治した方がいいのかしら……?」
「その方がいいでしょう。だって主様も体験したはずです。ニンジンを与えなければ今にもメリーゴーランドから飛び出そうとする勢いの馬だったのですよ……? 退治しておいた方が安全です」
「そうよねぇ~~危ないものねぇ~~…………デビルン、あの馬全部、始末してもらえるかしら」
「別に始末してもいいけど、被害は考えないぞ……」
「メリーゴーランドごと破壊しようと言うの……?」
「そういうこと……」
「遊園地を救いに来たのに、壊してしまったら本末転倒じゃない……却下よ却下。はぁ~~、私が退治するしかないのかしら」
愚痴をこぼしながらも妖怪退治の本を開いて対抗策の項を探していく。
(えっと、これかしら……取り憑かれた物体の元に戻し方……なになに、まずはお札を用意します。次にそのお札を……)
「主様、クリス様がこちらに……」
バステトの声に肩がビクンとなって少し驚いたが、振り返るとクリスチャンが私をカメラで撮影していた。
「えっと、また何かするの? アゲハちゃん。先輩たちが次のエリアに行きましょうって言ってるよ」
「わかってるから、もう少し待っててと伝えに行ってきてくれるかしら……? こっちはやらなくてはならないことがあるのよ……それとまたここに戻って来たら撮影もよろしくね」
「は~~い、りょ~~かいで~~す」
クリスチャンがタッタッとダークネス・カイザー様達のところまで戻って行く。
(……どうやらバステト達との会話は聞かれていなかったようね)
ホッと息をついていたところ、デビルンがこんなことを言って来た。
「なんだ~~? 俺様達との会話、聞かれちゃまずいのか? 気にすんな気にすんな……あの手の人間は、えっ何この子一人でブツブツ言ってて気持ち悪い――で片付けられるから」
「それが嫌だから隠してるんでしょうに……私はオカルトに手を染めたけど、電波女や厨二女になんてなりたくないわ」
妖怪対策の本を熟読し終わったと同時に、クリスチャンが戻ってくる。
「じゃあ撮影を再開しよう。今度は何するの~~」
「今度は地味よ。まぁ見てて……じゃあ撮影を再開してちょうだい」
私は荷物の中から無数のお札とニンジンを取り出して、クリスチャンにも準備を急がせた。
「――3! ……2! ……1! ……アクション!」
「フフフ、見よ! 我が使い魔たちよ! これこそ、この世に在らざる存在達、魑魅魍魎よ!」
ニンジンを馬の前に持っていくと、パクリと食べてしまうメリーゴーランドだった。
「このメリーゴーランドには悪霊が憑りついている! この馬の一体一体がお化けの正体! CGでもなければホログラムでもない、れっきとしたリアル! だから我が力を持って存分に祓ってくれようぞ! 見るがいい我が力!」
汝らの血あらば、身もあるであろう、ならば唱える、力のあるべき場所を、本物の姿を取り戻さん! 悔いて地獄に落ちよ! 懺悔して煉獄に身を任せよ! その先は天国ぞ! クイーンエクスターミネレ!」
手でペタリペタリとではなく、バサリバサリとお札が全て宙を飛んでいき、全ての馬のおでこに張り付いた。
「――浄化!!」
その最後の一言で全ての馬は光出し、精気を失ったかのように、元の無機質な馬へと戻っていった。
「メリーゴーランド! 攻略! ――はいカット!」
私はクリスチャンに撮影カメラを停止するように促した。
「お疲れ様アゲハちゃん! 今のはどういう仕組みで光ったり、お札が飛んで行ったりしたの!? お札も消えちゃったし――」
「説明なんているかしら、私は真のオカルト少女なのよ、これくらいできて当然でしょ。それにしても、いいお札を使ったからかしら、一枚5000円するお札なのだけど……うまくいって良かったわ」
「ご、5000、えん……ゴクリ……それが数十枚も、蒸発しちゃうなんて……」
「さぁ、用事も済んだし、先輩方の元へ帰りましょうか」
そうして私たちはメリーゴーランドを後にした。
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