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第一章 大悪魔との契約

5話 アカネの帰る場所

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 「アカネ画像を撮るぞ」

「がぞう……とる?」

「流石は主様、その手がありましたか。アカネ様をお手元のスマートフォンに画像として取り込み、それを触媒として霊を呼び出すのですね」

「その通り、心霊写真を作るのだ。ささ、アカネ我と一緒に写真を取るぞこちらへ来い」

「――うん」

こうしてアカネと私のツーショット写真が完成した。そして、

「そうだ。ちょっと待ってろ……」

私は帰宅途中の先輩にあたるだろう生徒に声を掛けた。

「おい――そこの民衆よ。私は闇の大邪神の神官、デイネブリスパピヨンだ。悪いがこの魔法器具スマートフォンに目を向けてくれ……」

「? べ、別にいいけど……これがどうかしたの?」

「何か見えんか。足のない幽霊とか……」

「いや、見えないけど……ごめんなさい私急いでるからこの辺で良い……?」

「わかった。話を聞いてくれてありがとう」

先輩にあたるだろうその女子生徒はそそくさとその場を後にした。

(やはり、霊感がないと見えないのか……ツイッターあるいはユーチューブでバズると思ったが、無理そうだな)

「おねいちゃん……?」

「ああ、悪かったこっちの事情だ。さて準備に取り掛かるぞ」

降霊術の準備はこうだ。まず電柱に日傘をくくりつけ、次にば捨て地に路上を舐めてもらい清潔な環境作り、償還の陣を書き、最後に呼び寄せるための私の髪の毛と、スマートフォンを陣の中心部に置いて完成だ。

(あとは詠唱だな……これだけで一本の動画になりそうなのに。実にもったいない、ええい、こうなればカメラの出番だ。ついでに撮ってやろうではないか。霊感の強き選ばれしものなら見られるであろう)

ついでに動画投稿用の機材を鞄から出して、動画投稿のための準備をした。
さて、これで全ての準備は整った。後は本に書かれた詠唱を読めば、降霊術はたぶん成功だ。

「今更ながらなぜ、降霊術をとり行うんです? この娘は迷子なのですよ」

「ほんと、今更だな。なあ~~に、すぐにわかるよ」

使い魔は私と違って頭がよろしくないらしい。こんなこともわからないとは驚いた。

「さて、ゴホン。読み上げるぞ」

陣の前へ。アカネの立ち位置は私の隣である右側、肩に乗っていたバステトは左側だ。動画の録画機器もすでに動いている。もう準備は万全だった。行くぞは言うまい。

「降りたまえ降りたまえ、我が血肉を捧げし聖なる霊よ。明豊アカネの前にやって来るがいい。差し支えなければ我が眷属として迎え入れてやろうぞ」

その時、陣の中心部からビュンと風が放たれた。

(おお~~、これだけでも動画の内容としては相応しいものになりそうだ)

「主様! アカネ様! 陣の中心部を、前をご覧ください」

バステトが叫ぶので二人で見た。そこには足のない幽霊が二体とも浮遊していた。

「これは、ここはどこだ」
「一体何が……」

男性の霊と女性の霊だ。年はもう80代にみえる。

「お父さん! お母さん!」

「――まさか、アカネ! アカネなのか!?」
「嘘……やっと見つけたの?」

「ハーハッハッハッハッ! ――見よ感動の再開ではないか。やはりそれなりに年を取っていたな。アカネの父と母よ」

「キミは誰だ」

「アカネの主様と名乗っておこう。この度お前たち二人を呼び出したのには理由がある。聞きたいことがある、まず一つアカネの家はどうなっている」

「もう、無いよ。土地ごと売ってしまって別の場所に引っ越したからね」
「そう、アカネが亡くなった場所に居続けることが耐えられなくなったの」

「そうだったんだ~~」

「でも、ようやく会えた。これで家族三人幸せに暮らせるぞ」
「そうね、まさかこんな所で迷子になっているとは思わなかったものね」

「二つ目の質問だ。あの世に家はあるのか?」

「もちろんだとも。アカネと三人で暮らすのにマイホームを建てたんだ」
「ええ。広くて大きな家よ。前に住んでいたところとは比べ物にならないくらい」

「ほんと!」

「では、三つ目の要件だ。アカネをあの世とやらに連れて行ってほしい」

「あの世……ここはもしや現世なのか。 ――!? ここはアカネの事故現場ではないか……?」
「ほんとね……ずっと探していたのに、まさかこんなところで成仏出来ていなかったなんて、どうりで天国で探しても見つからないわけだわ」

「お母さぁ~~ん」

アカネが母親に抱きついて行った。

「何かよくわからないが、娘が世話になった感謝するよ」
「本当にお世話になったわ。なんか涙が出てきちゃう……ありがとう優しいお嬢さん。さて、行きましょうか。あの世に」

「うん! おねいちゃんありがとう」

「ああ、もう迷子にならないようにしろよ。私はまだあの世へ行くには、未練がありすぎるから面倒は見られない」

「わっかた。行こ、お父さん、お母さん」

「それでは、行くとしようか。お嬢さんこれはどうやって呼び出してるのかなぁ」
「帰る方法がわからないわ」

「帰る方法ならこうだ。聖なる霊よどうか帰りたもうれ帰りたもうれ」

突然、アカネとその父と母が光出し姿を薄くさせていった。そうして消えていった。最後にアカネはこう言い残した。

「おねいちゃん。今度会ったら遊ぼうね」

「ああ、バイバイ。アカネ……」

こちらもあちらも小さく手を振って別れを告げた。
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