47 / 69
第四章 希望華
国会樹治塔に到着
しおりを挟む
中央区域の白葉の並木道を抜けると、フォレンリース国会樹治塔が見えてくる。
全長五一メートルの円筒型の巨大建造物は、枝分かれするように別塔が取り付けられている。ここでは日夜、国のお偉いさんたちが難しい話をしているらしい。
ようやくここへ到着した俺とヴァラレイスは、木のようにどっしりと構えている塔の全景を見ていた。
「……ここで当たりみたいだな。見ろ、指で地面をなぞってみたが、花粉がこれくらい採取できたぞ」
ヴァラレイスの指先に付着した煤のようなものが、どうやら絶望華の花粉らしい。
「――ま、待ってくれ、花粉がこんなに充満しているなら、俺はこのまま迂闊に近づいていいのか? ここで呼吸しても大丈夫なのか?」
「安心しろ、花粉は悪夢種を作り出すだけだ。ほとんど害はない…………まぁ、この花粉自体にアレルギーを感じるのなら、咳やくしゃみはするかもしれないが、ここまで来てそんなこともなかっただろう?」
「……ないけどさぁ(咳やくしゃみか……けれど、気を付けることに越したことはないだろう……念のため口をこうしておこう)」
俺はズボンのポケットから一枚のハンカチを取り出して、口と鼻に当てて呼吸をすることにしておく。
「好きにしろ……」
ヴァラレイスが先行して、国会樹治塔の敷地内へと足を進めていく。
「――お、おいおい、堂々と門から入るのか。誰かに見つかってしまうだろ」
「ああ、そうだった……では、手を貸してくれ、皆の視界に入らなければ問題はない」
俺はヴァラレイスの真っ白い手を取った。ひんやりとした冷たい手はスベスベとしていて手触りも――(――うわああああ!!)
「お前……また気色悪いことを思い浮かべているな。私の手の感触に浸るな。ザラザラでドロドロとした手に変てやってもいいんだ。もういい、やっぱり腕を引っ張って行こう」
「お、おい、照れなくてもいいじゃないか――――うおっとっと! (危ない、躓きそうだった……)」
ヴァラレイスは、か弱い力でしっかりと俺の腕を掴み、塔に向かって引っ張って行く。正門を通り、近場にあった警備員の待機所も通過して、人目を気にせず早足で進んでいく。万が一誰かがいたとしても、こちらの姿が見られないように、ヴァラレイスが透明にしてくれているから安心だった。
「……ホロム辺りをよく見てみろ」
「?」
俺は、国会樹治塔の敷地内にある花壇に、目を配らせてみると、よく手入れが行き届いているように感じた。あと、ここの役員がベンチで眠りについている姿も目に映る。だが、一人だけならまだしも、そういう人が数十人にわたって、至るところで見受けられ流石に不信感を抱いた。
「……眠っている人が多い。しかも、役員だけじゃなく、警備員まで……ヴァラレイスこれって――」
「……花粉の吸いすぎもいけないか。たぶん、夜中になると睡眠効果を作用させてしまうから、所かまわず眠るんだろうな。けど、朝になればまた目を覚ますさ。きっと彼らは、自分たちが疲れているだけなんだと、勝手に結論を出してしまうだろうが、全ては絶望華が原因だ」
(……国会樹治塔までこんな状態だったのなら、異常事態の対応が遅れてしまうのも当然か)
腕を引かれて行きながら考える。
「……ここに保管されている可能性は高そうだ」
国会樹治塔の正面玄関の前に到着すると、ヴァラレイスが建物を見上げて口にした。そして、また俺の腕を引っ張りだして、大きな扉に構わず突き進んでいく。わかりきっていたことだが、すり抜けて中に入るため、扉を開く動作も素振りも必要はない。
全長五一メートルの円筒型の巨大建造物は、枝分かれするように別塔が取り付けられている。ここでは日夜、国のお偉いさんたちが難しい話をしているらしい。
ようやくここへ到着した俺とヴァラレイスは、木のようにどっしりと構えている塔の全景を見ていた。
「……ここで当たりみたいだな。見ろ、指で地面をなぞってみたが、花粉がこれくらい採取できたぞ」
ヴァラレイスの指先に付着した煤のようなものが、どうやら絶望華の花粉らしい。
「――ま、待ってくれ、花粉がこんなに充満しているなら、俺はこのまま迂闊に近づいていいのか? ここで呼吸しても大丈夫なのか?」
「安心しろ、花粉は悪夢種を作り出すだけだ。ほとんど害はない…………まぁ、この花粉自体にアレルギーを感じるのなら、咳やくしゃみはするかもしれないが、ここまで来てそんなこともなかっただろう?」
「……ないけどさぁ(咳やくしゃみか……けれど、気を付けることに越したことはないだろう……念のため口をこうしておこう)」
俺はズボンのポケットから一枚のハンカチを取り出して、口と鼻に当てて呼吸をすることにしておく。
「好きにしろ……」
ヴァラレイスが先行して、国会樹治塔の敷地内へと足を進めていく。
「――お、おいおい、堂々と門から入るのか。誰かに見つかってしまうだろ」
「ああ、そうだった……では、手を貸してくれ、皆の視界に入らなければ問題はない」
俺はヴァラレイスの真っ白い手を取った。ひんやりとした冷たい手はスベスベとしていて手触りも――(――うわああああ!!)
「お前……また気色悪いことを思い浮かべているな。私の手の感触に浸るな。ザラザラでドロドロとした手に変てやってもいいんだ。もういい、やっぱり腕を引っ張って行こう」
「お、おい、照れなくてもいいじゃないか――――うおっとっと! (危ない、躓きそうだった……)」
ヴァラレイスは、か弱い力でしっかりと俺の腕を掴み、塔に向かって引っ張って行く。正門を通り、近場にあった警備員の待機所も通過して、人目を気にせず早足で進んでいく。万が一誰かがいたとしても、こちらの姿が見られないように、ヴァラレイスが透明にしてくれているから安心だった。
「……ホロム辺りをよく見てみろ」
「?」
俺は、国会樹治塔の敷地内にある花壇に、目を配らせてみると、よく手入れが行き届いているように感じた。あと、ここの役員がベンチで眠りについている姿も目に映る。だが、一人だけならまだしも、そういう人が数十人にわたって、至るところで見受けられ流石に不信感を抱いた。
「……眠っている人が多い。しかも、役員だけじゃなく、警備員まで……ヴァラレイスこれって――」
「……花粉の吸いすぎもいけないか。たぶん、夜中になると睡眠効果を作用させてしまうから、所かまわず眠るんだろうな。けど、朝になればまた目を覚ますさ。きっと彼らは、自分たちが疲れているだけなんだと、勝手に結論を出してしまうだろうが、全ては絶望華が原因だ」
(……国会樹治塔までこんな状態だったのなら、異常事態の対応が遅れてしまうのも当然か)
腕を引かれて行きながら考える。
「……ここに保管されている可能性は高そうだ」
国会樹治塔の正面玄関の前に到着すると、ヴァラレイスが建物を見上げて口にした。そして、また俺の腕を引っ張りだして、大きな扉に構わず突き進んでいく。わかりきっていたことだが、すり抜けて中に入るため、扉を開く動作も素振りも必要はない。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あれ?なんでこうなった?
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。
…‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!!
そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。
‥‥‥あれ?なんでこうなった?
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる