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第四章 希望華

国会樹治塔に到着

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 中央区域の白葉の並木道を抜けると、フォレンリース国会樹治塔が見えてくる。
 全長五一メートルの円筒型の巨大建造物は、枝分かれするように別塔が取り付けられている。ここでは日夜、国のお偉いさんたちが難しい話をしているらしい。
 ようやくここへ到着した俺とヴァラレイスは、木のようにどっしりと構えている塔の全景を見ていた。

「……ここで当たりみたいだな。見ろ、指で地面をなぞってみたが、花粉がこれくらい採取できたぞ」

 ヴァラレイスの指先に付着した煤のようなものが、どうやら絶望華の花粉らしい。

「――ま、待ってくれ、花粉がこんなに充満しているなら、俺はこのまま迂闊に近づいていいのか? ここで呼吸しても大丈夫なのか?」
「安心しろ、花粉は悪夢種を作り出すだけだ。ほとんど害はない…………まぁ、この花粉自体にアレルギーを感じるのなら、咳やくしゃみはするかもしれないが、ここまで来てそんなこともなかっただろう?」
「……ないけどさぁ(咳やくしゃみか……けれど、気を付けることに越したことはないだろう……念のため口をこうしておこう)」

 俺はズボンのポケットから一枚のハンカチを取り出して、口と鼻に当てて呼吸をすることにしておく。

「好きにしろ……」

 ヴァラレイスが先行して、国会樹治塔の敷地内へと足を進めていく。

「――お、おいおい、堂々と門から入るのか。誰かに見つかってしまうだろ」
「ああ、そうだった……では、手を貸してくれ、皆の視界に入らなければ問題はない」

 俺はヴァラレイスの真っ白い手を取った。ひんやりとした冷たい手はスベスベとしていて手触りも――(――うわああああ!!)

「お前……また気色悪いことを思い浮かべているな。私の手の感触に浸るな。ザラザラでドロドロとした手に変てやってもいいんだ。もういい、やっぱり腕を引っ張って行こう」
「お、おい、照れなくてもいいじゃないか――――うおっとっと! (危ない、躓きそうだった……)」

 ヴァラレイスは、か弱い力でしっかりと俺の腕を掴み、塔に向かって引っ張って行く。正門を通り、近場にあった警備員の待機所も通過して、人目を気にせず早足で進んでいく。万が一誰かがいたとしても、こちらの姿が見られないように、ヴァラレイスが透明にしてくれているから安心だった。

「……ホロム辺りをよく見てみろ」
「?」

 俺は、国会樹治塔の敷地内にある花壇に、目を配らせてみると、よく手入れが行き届いているように感じた。あと、ここの役員がベンチで眠りについている姿も目に映る。だが、一人だけならまだしも、そういう人が数十人にわたって、至るところで見受けられ流石に不信感を抱いた。

「……眠っている人が多い。しかも、役員だけじゃなく、警備員まで……ヴァラレイスこれって――」
「……花粉の吸いすぎもいけないか。たぶん、夜中になると睡眠効果を作用させてしまうから、所かまわず眠るんだろうな。けど、朝になればまた目を覚ますさ。きっと彼らは、自分たちが疲れているだけなんだと、勝手に結論を出してしまうだろうが、全ては絶望華が原因だ」
(……国会樹治塔までこんな状態だったのなら、異常事態の対応が遅れてしまうのも当然か)

 腕を引かれて行きながら考える。

「……ここに保管されている可能性は高そうだ」

 国会樹治塔の正面玄関の前に到着すると、ヴァラレイスが建物を見上げて口にした。そして、また俺の腕を引っ張りだして、大きな扉に構わず突き進んでいく。わかりきっていたことだが、すり抜けて中に入るため、扉を開く動作も素振りも必要はない。
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