スマフォ画面0.001ミリ差の恋

丹波 新

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三章 超AIの大失踪

51話 対面のトワイライト

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オフィシャルジェンス社のサーバー内にハッキングを仕掛けた。オレと峰谷ゆうすけは思わぬ人物と対面していた。

「超AIトワイライト……」

『はぁ~~』

突然溜息をつき始めた超AIは頭に手をつく。

『今日で何件目だと思います? あなた方のようなハッキング集団は……』

「――何!?」

当然のように驚く峰谷ゆうすけ。

『5600ですよ。全世界から5600件』

「――ごっ、五千!?」

オレは固唾を飲んで聞き入った。

『おや、マイクが入っていますね。これは話が早い。忠告します。すみやかにオフィシャルジェンス社のサーバーから出ていきなさい。そうすれば今回のハッキングの件は見逃してあげましょう』

「どうする? 暁」

「どうするも何も決まってる」

オレはそばに置いてあったマイクに向かってこうはなしをした。

「デレデーレというAIが二週間前にそっちに行っているはずだ。オレはその情報をかぎつけてこんな真似をしている。教えてくれデレデーレは今どこにいる?」

『忠告を聞き入れないということでしょうか?』

「質問しているのはこっちだ。話してくれ今もそこにいるのかあるいは居ないのか……?」

『発言権があると思っている時点であなた方はズレている。そもそもハッキングをしている時点で犯罪ですよ? こっちはそれを見逃そうと交渉しているのに……残念です』

「訊きたいことがあるだけだ」

『では、わが社に公式の場でアポイントを取っていただきたい』

「アポイントってこっちは――」

オレは峰谷ゆうすけに口をふさがれた。

「(お前は馬鹿か! 今ここが日本だってことは言葉づかいでバレているから仕方ないとして、学校の名前や住んでる地域について話そうとしてるだろ! それじゃあネットカフェに来た意味がない。もっと冷静になれ! 相手のペースに乗せられんな)」

峰谷にそう言われて思い出す、そうだオレたちは国際問題にまで発展する大犯罪を行っている最中なのだ。

「わかった次からはアポイントを取って堂々とキミと話をしよう」

『物分かりが良くて結構です』

「けど一つだけ聞かせてくれ。デレデーレという超AIをキミは知らないか?」

『――知りません』

「二週間前にオフィシャルジェンス社と接触した可能性が大きいんだが……」

『――知りません』

(何もわからないか、もしかしてこの子がデレデーレなんじゃないか? 髪の色が違うだけで、プログラムをいじられて記憶も記録も何もかも忘れ去られたデレデーレなんじゃないのか? だったら――)

「――だったら質問を変えるよ。キミは二週間前より以前の記憶はあるのかい?」

『ご質問は一つだけだと伺っておりましたが?』

「いいじゃないか……何でもいいから一つだけでも教えてくれよ」

『声紋認識完了』

「何だって?」

峰谷ゆうすけが怪訝な表情をする。

『そこから逆算して身体づきを構築します。するとあら不思議ジャパニーズボーイの完成です』

モニター内にはオレと峰谷ゆうすけの顔写真が映し出されていた。

「(――なっ何!? 監視カメラにでも取られたか!?)」

モニター内をまじまじ見る峰谷ゆうすけ。

『さて、この顔が世界中にさらされたくなければすみやかにお引き取りを……』

「切るぞ、暁――」

「待て、ホントに一つだけ答えを聞かせてくれ! デレデーレのことは知っているんだよな!」

『知りません――へ~~海外サーバーを経由してここまで……えっと所在地の特定を――』

峰谷ゆうすけはパソコンの電源をオフにしていた。

「――危なかった……話の最中に逆探知までしていやがった」

「――峰谷!」

オレは峰谷ゆうすけの肩に掴みかかった。

「――痛って、しょうがないだろ! こっちの顔写真まで取られちゃあよ~~、オレたちは交渉材料も何も持ち合わせちゃいないんだから――今日はオレのおごりでいいから大人しく帰って嫌なことは忘れようぜ」

「…………ふぅ~~」

オレは掴みかかっていた手を峰谷ゆうすけから離した。そしてネットカフェから外へ出る。その頃の時刻は18時を回っていた。結局オレたちのハッキングの成果は全くなかった。
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