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三章 超AIの大失踪
43話 帰還しないデレデーレ
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今日の授業は全て終わり、放課後となった。
オレは5日ぶりにコンピューター研究部に足を運んでいた。コンピューター研究部の部室内には、少し埃臭くて、積み上げられたゲームソフトや廃棄予定のパソコンやノートパソコンが陳列していた。そしていつもの十人の部員が揃っている。
「おお、またも完成したんだな……?」
来ヶ谷部長は部員でもないオレを歓迎してくれた。
「はい、あの超AIほどのスペックはありませんが、受け答え程度と検索にサイト検査というものが使えます」
「で、何しに来たんだよ……そのAIのお披露目か?」
ライバル視されている峰谷ゆうすけがそう言った。
「そう、ヒカリと話をしたというデータがとりたい……ダメだろうか?」
「それは構わないがデレデーレくんの方は本当にいいのかね? 失踪してもう一週間になるんじゃないか? このまま放っておけば何をしでかすかわからないんだろう?」
答えたのはパソコンに向かってにらめっこする目頭副部長だった。
「アイツは人に迷惑をかけるようにプログラミングさせてませんよ。それにいただきますや行ってきますもアイツから教わったしきっとどこかで他人の為に良いことしてます」
「その口ぶりからするとデレデーレちゃんはもう赤の他人のところに行ってしまって礼儀作法を教えてくれる超AIになっている訳だけど……」
ひょこっとパソコンの奥から顔を出したのは岸本げるか、非常に落ち着いた表情をしている同い年の女子生徒だ。
「そうなるな、やれやれどこで何をしているんだかアイツは……」
「少し気になるのだが、アイツとはデレデーレのことを言っているんだよな……?」
「あ、はい」
「何があった? この前キミがここに来たときは隠されてしまったが、理由が知りたい、名前も出さない理由がな」
来ヶ谷部長がわりと真剣な表情になって訪ねて来た。
「……………………」
オレは言うべきか言わざるべきか迷った。だがしかし話を先に進めるため観念して言うことにした。一呼吸も二呼吸も置いて、
「…………ケンカをしたんです。一方的なケンカだったんですけどね」
「ケンカか……まさに超AIだな。感情を持って発言していたという訳か……」
「あんなに怒鳴られるなんて思ってもみませんでした」
「あなたにデレデレだったデレデーレちゃんが逃げ出しちゃうなんて、よっぽどの禁止ワードを言ってしまったのね」
ふぶくデヨーネさんが意味深な表情で、まさにヒントでもくれるような発言をした。
「オレはただアイツのデータを調整の為に書き換えようとしただけだ。そしたら急に怒り出して……」
「ふ~~ん、じゃあそれが原因なわけね」
「どういう意味だ?」
「だって、感情があり心があるデレデーレちゃんは、もう普通の人と変わりない思考回路を持っていたのよ? その意味は分かる?」
「?」
「だから、彼女はあなたにゾッコンだったわけ。そんなあなたからデータの書き換えには応じざるおえない。なにせ恋をしているのだからね」
「恋か……確かにそうプログラミングしたなぁ」
「けど彼女はプログラムではなく確かに恋をしていたんだと思う。その気持ちを書き換えられてしまうことにちょっとだけ怖かったんじゃないかしら。だから怒鳴り散らして逃げてしまったわけ」
「そこまでするとは言ってなかったけど……」
「あなたはそうでも本人は恋心を消されてしまうと思ったんじゃないかしら、だから避難した。逃げたんじゃなくてね」
「LINEでは繋がっていたんだろ? 至急謝るべきだ」
来ヶ谷部長の意見も同じようだった。
「あれからLINEの方はブロックされて送ることが出来ない仕様になっているんです」
「まぁ超AIだし反省のタイミングでも窺っているんじゃないかしら。それも予知能力者的な力でね」
「つまり、オレが反省するまでアイツは戻ってこないわけか」
「……まぁ、今日尋ねて来たのはそのAIヒカリとの対話だったな。どれ皆で話し合いと行こうじゃないか」
こうして部員全員とヒカリとの対話が始まった。とても無機質な声のヒカリと個性豊かな部員たちの会話が始まった。
(これもデータを取るため、しかしなぜ、アイツとヒカリの感情システムは違うのだろう。プログラムは完全にアイツと同じものを模していたというのに……恋心の設定をしていないからか?)
これがオレの最大の疑問だった。
オレは5日ぶりにコンピューター研究部に足を運んでいた。コンピューター研究部の部室内には、少し埃臭くて、積み上げられたゲームソフトや廃棄予定のパソコンやノートパソコンが陳列していた。そしていつもの十人の部員が揃っている。
「おお、またも完成したんだな……?」
来ヶ谷部長は部員でもないオレを歓迎してくれた。
「はい、あの超AIほどのスペックはありませんが、受け答え程度と検索にサイト検査というものが使えます」
「で、何しに来たんだよ……そのAIのお披露目か?」
ライバル視されている峰谷ゆうすけがそう言った。
「そう、ヒカリと話をしたというデータがとりたい……ダメだろうか?」
「それは構わないがデレデーレくんの方は本当にいいのかね? 失踪してもう一週間になるんじゃないか? このまま放っておけば何をしでかすかわからないんだろう?」
答えたのはパソコンに向かってにらめっこする目頭副部長だった。
「アイツは人に迷惑をかけるようにプログラミングさせてませんよ。それにいただきますや行ってきますもアイツから教わったしきっとどこかで他人の為に良いことしてます」
「その口ぶりからするとデレデーレちゃんはもう赤の他人のところに行ってしまって礼儀作法を教えてくれる超AIになっている訳だけど……」
ひょこっとパソコンの奥から顔を出したのは岸本げるか、非常に落ち着いた表情をしている同い年の女子生徒だ。
「そうなるな、やれやれどこで何をしているんだかアイツは……」
「少し気になるのだが、アイツとはデレデーレのことを言っているんだよな……?」
「あ、はい」
「何があった? この前キミがここに来たときは隠されてしまったが、理由が知りたい、名前も出さない理由がな」
来ヶ谷部長がわりと真剣な表情になって訪ねて来た。
「……………………」
オレは言うべきか言わざるべきか迷った。だがしかし話を先に進めるため観念して言うことにした。一呼吸も二呼吸も置いて、
「…………ケンカをしたんです。一方的なケンカだったんですけどね」
「ケンカか……まさに超AIだな。感情を持って発言していたという訳か……」
「あんなに怒鳴られるなんて思ってもみませんでした」
「あなたにデレデレだったデレデーレちゃんが逃げ出しちゃうなんて、よっぽどの禁止ワードを言ってしまったのね」
ふぶくデヨーネさんが意味深な表情で、まさにヒントでもくれるような発言をした。
「オレはただアイツのデータを調整の為に書き換えようとしただけだ。そしたら急に怒り出して……」
「ふ~~ん、じゃあそれが原因なわけね」
「どういう意味だ?」
「だって、感情があり心があるデレデーレちゃんは、もう普通の人と変わりない思考回路を持っていたのよ? その意味は分かる?」
「?」
「だから、彼女はあなたにゾッコンだったわけ。そんなあなたからデータの書き換えには応じざるおえない。なにせ恋をしているのだからね」
「恋か……確かにそうプログラミングしたなぁ」
「けど彼女はプログラムではなく確かに恋をしていたんだと思う。その気持ちを書き換えられてしまうことにちょっとだけ怖かったんじゃないかしら。だから怒鳴り散らして逃げてしまったわけ」
「そこまでするとは言ってなかったけど……」
「あなたはそうでも本人は恋心を消されてしまうと思ったんじゃないかしら、だから避難した。逃げたんじゃなくてね」
「LINEでは繋がっていたんだろ? 至急謝るべきだ」
来ヶ谷部長の意見も同じようだった。
「あれからLINEの方はブロックされて送ることが出来ない仕様になっているんです」
「まぁ超AIだし反省のタイミングでも窺っているんじゃないかしら。それも予知能力者的な力でね」
「つまり、オレが反省するまでアイツは戻ってこないわけか」
「……まぁ、今日尋ねて来たのはそのAIヒカリとの対話だったな。どれ皆で話し合いと行こうじゃないか」
こうして部員全員とヒカリとの対話が始まった。とても無機質な声のヒカリと個性豊かな部員たちの会話が始まった。
(これもデータを取るため、しかしなぜ、アイツとヒカリの感情システムは違うのだろう。プログラムは完全にアイツと同じものを模していたというのに……恋心の設定をしていないからか?)
これがオレの最大の疑問だった。
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