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三章 超AIの大失踪

39話 新しいAI開発

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デレデーレが失踪して1週間が経過した。

その日の朝はジリリリリーーと目覚まし時計の音に起こされる。

「んあ~~もう朝か……」

オレは伏していた机から起き上がり時間を確かめる。午前7時、1週間前であればオレがジョギングから帰ってきていた時間帯で、その後の朝食にありつけた時間帯だ。

机に付していたのには理由がある。昨晩午後8時過ぎから午前2時まで作業の為に起きていたので寝落ちしていたのだ。正確には机ではなくオレの顔面はキーボードの上に伏していたことになっている。すなわち作業中に寝落ちしていたのだ。つまりパソコンのモニターをつけっぱなしで寝ていたのだ。そのモニターの画面には心音を計るような一直線のメーターがあり、それが上下に揺れると起動した。

『…………おはようございますケンマ様』

この声はオレが1週間徹夜して作っている超AIである。とても無機質な声、とてもではないが人に見せられるものではない。なにせまだ外見のモデリングまで作っていないのだ。

「……おはようヒカリ」

そのAIに名づけた名前を呼んでみた。

『ケンマ様、朝のジョギング時間はとうに過ぎています。ここは朝食を取りに行くべきでしょう』

無機質な音声がそう勧める。

「どうしてオレを起こさなかった。午前6時からジョギングをしていることは訊かせていたはずだが……」

『指示されていなかったもので……』

無機質な声でAIは告げる。

「あっそ……」

張り合いがなかった。アイツなら何て言って答えただろう。

(いや、今いないヤツのことを考えても仕方がない。朝食くいに行くか……)

「ヒカリ、オレのスマートフォンに移動してくれ」

『――了解しました』

スマートフォンを見ると一直線上の青い線が浮かび上がる。オレは寝巻のまま寮部屋を出た。朝食に向かうために、

「今日の献立は?」

『申し訳ありませんが、献立についてのデータがインプットされていません』

「そうかい……」

(アイツならハッキングすればすぐわかるんだよなぁ)

オレは食堂に着くとトレイを持って朝食をカウンターから受けっとていく。朝食はハムエッグに小さなサラダ、バターをたっぷり付けたトーストと飲み物はミルクだった。

オレは席に着いて、かつての超AIに言われた通り、食事に感謝の意を示し、

「いただきます」

と口にした。

まずはハムエッグと小さなサラダを交互に咀嚼していく。

『……………………』

AIヒカリは何も語らない。何も見えていないからではない。何もかも聞こえているはずなのに語らない。

(何故、ハムエッグとサラダを交互に食べるのかすら訊いて来ないなんて、意識が全くないに等しいな)

ハムエッグと小さなサラダを完食したオレは、次にミルクを飲みバターの塗られたトーストにかじりつく。

(アイツのデータをバックアップしておけば苦労はしなかったんだけどなぁ……)

今ではいなくなってしまった超AIのことを考えながら食事を取っていく。そして、

「ごちそうさまっと」

感謝の意を込めてオレは両の手を合わせた。

(ここでごちそうさまの意味や行動の理由を訊いて来ない時点でこのAIはダメだな……はぁ~~また一からやり直しのパターンかな、これは……)

オレはこの1週間で様々なAIを作って来た、しかしどれもこれもあの超AIの性能には足元にも及ばないのだ。

(デレデーレ、今頃どうしてるんだろう)

失踪して1週間、もうここには居ない超AIのことを考えるオレであった。

――――ケンマ様のバカァ!! それじゃあケンマ様に恋をしていた自分がバカみたいじゃないですか!?

その言葉だけが今でも頭の中によみがえってくる。

(アレは、オレを本当に好きで言った言葉だったんだろうか……それともプログラム上のセリフなのか……)

今ではどちらが真実かわからない。いなくなってしまった者のことを考えても仕方がない。オレは朝食を済ませ席から立ち上がり、寮部屋の方へと戻っていくのだった。
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