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二章 超AIの大活躍
36話 約束を破るデレデーレ
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恋愛シミュレーションゲーム、ヤミヤミちゃんとの失恋はダメが始まって一時間が経過した。今主人公とヤミヤミちゃんの二人はデートの真っ最中だったのだ。
『かなり難しかったです。特にさっきの包丁を買うか? 包丁を買わないか? という選択肢は……』
「よく買えたな。オレだったら殺人事件予期して買わないところだったぞ」
「ああ、そこはオレも悩みに悩んだ。そして買わないを選択した、どうしてかって言うと、ヤミヤミちゃんが包丁を常に持ち歩いてることを知っていたからだ」
「知ってると何で殺されるんだよ」
「確か『どうして私しか知らない情報を知っているのですか? わたしのことをそこまで愛してくださるのですね。いいわ、あなたの言う通りこの包丁をしばらく使って、お気に入りの包丁で安らかな眠りへといざないましょうね』だった気がする。そしてその夜、主人公の好きなその古びた包丁に刺されて死ぬ」
前渡とうやが演技口調を交えながら語りだす。
「……相変わらず怖いな。普通、包丁を持っていることを知ってたらそっちの方がおかしいと思うのに……」
オレはさっきデレデーレが通過したヤミヤミちゃんの選択肢後の話の内容について思い返す。
――わたしが包丁を常日頃から持ち歩いていたことを知っていたなんて……わかりました。ここはあなたの言う通り、この包丁をお買いになります。しかし、わたしのことを随分見てくれているようで、心のときめきと心臓の鼓動が止まりません。これが愛するものの目線なのですね。
『あらかじめ事前情報がないと多くの人があそこで行き詰るでしょうね。このゲームセーブできないのは仕様ですか?』
「もちろん仕様だよ。だからクリアするのに難儀した……」
「ここのOBの人やたらと難しいゲーばかり作るな……」
オレはやれやれ口調であきれ果てていた。
「いやいや、難しいのは100本に10本くらいうなものだ」
来ヶ谷部長がそう断言する。そう棚に陳列されているゲームが全て難しいわけではない、部長たちが勧めてくるゲームが難しすぎるのだ。
「どうだ? どれくらいの選択肢をクリアして来たんだ?」
オレは恐る恐ると言った感じでデレデーレに質問する。
『えーっと37つですかね……』
「それじゃあ、あと3つだな。ここらはマジで難しい気を抜くなよ」
前渡とうやからのありがたい忠告だった。そして早速38個目に到達する。
――双子の子供が出てきました。泣いています。どうやら些細なことで喧嘩をしたみたいです。さて仲直りさせますか? それとも放っておきますか?
『…………放っておきますですね』
その後、主人公とヤミヤミちゃんはデートの続きをするのだった。
「えっ何! 見捨てちゃうのが正解なわけ?」
「オレは仲直りさせた、そしたら、『わたしとのデートよりもそのお二人の面倒を見る方がいいと……これはもう、破局ですね。このようなイヤな気持ちになるくらいならいっそここで』ってな感じで首を絞殺される」
「――怖いわ!?」
思わず突っ込んでしまうオレであった。
「さぁ、いよいよ39個目の選択肢だ」
来ヶ谷部長が固唾を飲んでモニター内を凝視していた。主人公とヤミヤミちゃんは二人して公園の噴水近くのベンチにて寄り添っていた。時刻はもう午後8時を回っているようで、背景はとても暗かったが、それを補うイルミネーションが展開されていた。そしてその場をあとにすると選択肢が出てくる。
――次はどうしますか? 湖の方へ行ってみますか? それとも並木道を進んで行きますか?
「どっちでもいいだろ……」
皆がモニター内を凝視する中、オレはもう半ば投げやりな態度をとった。
『正解は湖です。このまま並木道へと進むと帰宅の流れになってしまいます』
デレデーレは諦めず深読みしてみる。そしてその小さな身体の両腕で選択肢を押し込む。答えは――
「――正解」
前渡とうやがそう口からこぼしていた。
「なるほどね。帰宅の流れか……つぎの選択肢で40で最後なのか前渡……?」
「ああ、簡単だから……もうクリアしたも同然だ」
最後の選択肢は簡単らしい。オレはホッと息を吐いて冷静になることが出来た。
(このゲームをクリアするなんて、さすがはハイパーコンピューターシステムを組み込んだ、最新式の人工知能だ)
次のシーンで最後のようだ。二人で湖へとやって来た主人公とヤミヤミちゃん、ここで誓いの儀式を行うらしい。選択肢はこうだった。
――湖の前で結婚の約束をしますか? それとも湖の中に一緒に入って二人で溺れ死にますか?
「ああ、こりゃ簡単、デレデーレさっさと結婚の方、前者の方を押しとけよ」
オレが催促したにもかかわらずデレデーレは動かなかった。
『…………………………』
デレデーレは動かない。
「……前渡……本当に簡単なんだよな?」
「押せばわかるさ」
適当にはぐらかす前渡とうや。
『決めました』
デレデーレが動く。そして――
湖の中に一緒に入って溺れ死ぬを選んでいた。
「――――はぁ!? 何でここでそんな選択肢を」
前渡とうやがオレより先に驚いていた。デレデーレは沈黙したままテキストを読み込んでいく。
――一緒に湖で死のう。
優しく微笑みながら言葉をかける主人公。
――はい。喜んで、
目に涙を溜めながらようやく悲願を達成したかに見えるヒロイン。
(まさか、これが正解なのか?)
オレは心の中で自己解釈するが結果は……
モニター内に映る二人はとても幸せそうに溺れ死んでいった。
『……………………』
「「「……………………」」」
誰もが沈黙し、ゲームのBGMだけが部室内に鳴り響く。そして沈黙を破ったのは、
モニター内に映し出されたバットエンドの文字だった。
「……申し訳ありませんケンマ様、私は約束を破ってしまいました」
あまりにもあっけなくゲームオーバーになったデレデーレ。オレは放心状態になっていた。
そしてこの失敗が三本勝負に負けた証となるのだった。
『かなり難しかったです。特にさっきの包丁を買うか? 包丁を買わないか? という選択肢は……』
「よく買えたな。オレだったら殺人事件予期して買わないところだったぞ」
「ああ、そこはオレも悩みに悩んだ。そして買わないを選択した、どうしてかって言うと、ヤミヤミちゃんが包丁を常に持ち歩いてることを知っていたからだ」
「知ってると何で殺されるんだよ」
「確か『どうして私しか知らない情報を知っているのですか? わたしのことをそこまで愛してくださるのですね。いいわ、あなたの言う通りこの包丁をしばらく使って、お気に入りの包丁で安らかな眠りへといざないましょうね』だった気がする。そしてその夜、主人公の好きなその古びた包丁に刺されて死ぬ」
前渡とうやが演技口調を交えながら語りだす。
「……相変わらず怖いな。普通、包丁を持っていることを知ってたらそっちの方がおかしいと思うのに……」
オレはさっきデレデーレが通過したヤミヤミちゃんの選択肢後の話の内容について思い返す。
――わたしが包丁を常日頃から持ち歩いていたことを知っていたなんて……わかりました。ここはあなたの言う通り、この包丁をお買いになります。しかし、わたしのことを随分見てくれているようで、心のときめきと心臓の鼓動が止まりません。これが愛するものの目線なのですね。
『あらかじめ事前情報がないと多くの人があそこで行き詰るでしょうね。このゲームセーブできないのは仕様ですか?』
「もちろん仕様だよ。だからクリアするのに難儀した……」
「ここのOBの人やたらと難しいゲーばかり作るな……」
オレはやれやれ口調であきれ果てていた。
「いやいや、難しいのは100本に10本くらいうなものだ」
来ヶ谷部長がそう断言する。そう棚に陳列されているゲームが全て難しいわけではない、部長たちが勧めてくるゲームが難しすぎるのだ。
「どうだ? どれくらいの選択肢をクリアして来たんだ?」
オレは恐る恐ると言った感じでデレデーレに質問する。
『えーっと37つですかね……』
「それじゃあ、あと3つだな。ここらはマジで難しい気を抜くなよ」
前渡とうやからのありがたい忠告だった。そして早速38個目に到達する。
――双子の子供が出てきました。泣いています。どうやら些細なことで喧嘩をしたみたいです。さて仲直りさせますか? それとも放っておきますか?
『…………放っておきますですね』
その後、主人公とヤミヤミちゃんはデートの続きをするのだった。
「えっ何! 見捨てちゃうのが正解なわけ?」
「オレは仲直りさせた、そしたら、『わたしとのデートよりもそのお二人の面倒を見る方がいいと……これはもう、破局ですね。このようなイヤな気持ちになるくらいならいっそここで』ってな感じで首を絞殺される」
「――怖いわ!?」
思わず突っ込んでしまうオレであった。
「さぁ、いよいよ39個目の選択肢だ」
来ヶ谷部長が固唾を飲んでモニター内を凝視していた。主人公とヤミヤミちゃんは二人して公園の噴水近くのベンチにて寄り添っていた。時刻はもう午後8時を回っているようで、背景はとても暗かったが、それを補うイルミネーションが展開されていた。そしてその場をあとにすると選択肢が出てくる。
――次はどうしますか? 湖の方へ行ってみますか? それとも並木道を進んで行きますか?
「どっちでもいいだろ……」
皆がモニター内を凝視する中、オレはもう半ば投げやりな態度をとった。
『正解は湖です。このまま並木道へと進むと帰宅の流れになってしまいます』
デレデーレは諦めず深読みしてみる。そしてその小さな身体の両腕で選択肢を押し込む。答えは――
「――正解」
前渡とうやがそう口からこぼしていた。
「なるほどね。帰宅の流れか……つぎの選択肢で40で最後なのか前渡……?」
「ああ、簡単だから……もうクリアしたも同然だ」
最後の選択肢は簡単らしい。オレはホッと息を吐いて冷静になることが出来た。
(このゲームをクリアするなんて、さすがはハイパーコンピューターシステムを組み込んだ、最新式の人工知能だ)
次のシーンで最後のようだ。二人で湖へとやって来た主人公とヤミヤミちゃん、ここで誓いの儀式を行うらしい。選択肢はこうだった。
――湖の前で結婚の約束をしますか? それとも湖の中に一緒に入って二人で溺れ死にますか?
「ああ、こりゃ簡単、デレデーレさっさと結婚の方、前者の方を押しとけよ」
オレが催促したにもかかわらずデレデーレは動かなかった。
『…………………………』
デレデーレは動かない。
「……前渡……本当に簡単なんだよな?」
「押せばわかるさ」
適当にはぐらかす前渡とうや。
『決めました』
デレデーレが動く。そして――
湖の中に一緒に入って溺れ死ぬを選んでいた。
「――――はぁ!? 何でここでそんな選択肢を」
前渡とうやがオレより先に驚いていた。デレデーレは沈黙したままテキストを読み込んでいく。
――一緒に湖で死のう。
優しく微笑みながら言葉をかける主人公。
――はい。喜んで、
目に涙を溜めながらようやく悲願を達成したかに見えるヒロイン。
(まさか、これが正解なのか?)
オレは心の中で自己解釈するが結果は……
モニター内に映る二人はとても幸せそうに溺れ死んでいった。
『……………………』
「「「……………………」」」
誰もが沈黙し、ゲームのBGMだけが部室内に鳴り響く。そして沈黙を破ったのは、
モニター内に映し出されたバットエンドの文字だった。
「……申し訳ありませんケンマ様、私は約束を破ってしまいました」
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