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第十五章 大規模レース大会、本気を出して1位を目指す
第718話 衝撃の借金額
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飲料水の注文殺到から数時間後。
辺りは夜になり、ハズレ秘蔵のお手製ワインが飲める大人の時間が来ていた。
今、テーブルについているのはワイン好きの愛好家。
どうやらハズレのワインが気に入ったらしく二人組の男性がくつろいでいた。
この時間帯になるとロードたちも仕事はなくなり、ゆっくりとした時間が与えられる。
グラスは昼間から荷船の上で寝そべっていたが、今ではすっかり眠りに付いていた。
いびきもかかずにスースーと静かに眠っている。
そんな中、店番はハズレに任し、ロードたちは今日の売り上げの話をしていた。
「今日の注文はジュースが多いこと、それから女性客が多かったことから、この異世界ではジュースが売れやすいことがわかりました」
「「「おお~~~~」」」
パチパチパチとロードを皆で賞賛していた。
「売れてよかった~~」
ロードが緊張を解かれて座り込む。しかし――
「良くありません」
スワンが静かに告げる。
「何がよくないの?」
ミハニーツが訊いてみる。
そしてロードも真剣な面持ちで立ち上がる。
「フルーツジュース1カップ造るのに平均銀貨1枚、売り物として出すのに銅貨50枚、ハッキリ言って赤字です」
「赤字ってなんだ?」
ロードが訊く。
「黒字て言うのもありまして赤字はお店の売り上げの損失を意味します」
ドノミが答える。
「つまりこちらが売り上げの損をしているのか?」
「正解」
スワンは今日の売上表を皆の前でビリビリと破いて見せた。
「これからはジュースの値段を引き上げます。銀貨一枚と銅貨20枚に」
「ちょっと高すぎないか?」
ロードが意見する。
「だって、損してるの銅貨50枚分を、今日フルーツジュースいくつ売った? 100は超えてるでしょ? 合計で50銀貨損してる計算になるの、銅貨にして5000枚・そ・ん・し・て・る・の!?」
「う~~~~ん、わかった。値段を引き上げよう」
「それともう一つ。私の美味しい水の売れ行きが良くない……」
「今日、一回の注文だけでしたからね~~」
ドノミが考え込む。
「そうなの! 一番安くてお手頃に入荷できる水が一回だけの注文だったの! この際話すけど、私の水は空気中の水素と酸素を結合させて水を作ってる。そこに精霊の術で甘さを加えているの! だから実質0代価で作れるの! それがこの異世界に来てから一度しか注文されてないの!」
「作り方が分からん」
ブケンが言う。
「とにかく、今後はフルーツジュース及び、他の飲料も値上げして、美味しい水を全面的に押していくから!」
「仕方がありませんね」
ドノミが納得する。
「待ってくれ、お金を稼ぐことも大事だけど、俺達にはやることがある」
「今は秘宝玉の使い方よりお金の話をしているの!」
「いや、秘宝玉の力があれば魔王との戦いも楽になると言ってたじゃないか」
「じゃあロードは今週、食べていけなくてもいいっていうの?」
「どういうことだ?」
「この際だから正直に明かすよ? 荷船を買った借金がまだ残ってるの……それも全然返せてない額だし」
「実際どれくらいの借金があるのですか?」
「驚かないでよ……利子合わせて――――」
◆ ◆ ◆ ◆
ハズレはワインを嗜む男性たちの会話を聞いていた。
何の変哲もない社会の話だ。
その時――――
「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
その声にハズレや男性たちは驚いた。
この時、
(なんだろう。ドノミさんの声だよな?)
(何かハプニングでもあったのかな)
(まぁ、悪いことにせよいいことにせよ)
(後で聞こう。今はこの雰囲気を楽しまないと……)
(ああ、オレの自家製ワインが他人の喉に通っていく)
(結構、こういうの嬉しいな)
(スワンが一杯5銀貨にしてたけど……)
(まぁ、ワインは高級品だしな)
ハズレは楽しんでいた。
◆ ◆ ◆ ◆
荷船内。
「それ、嘘ですよね?」
ドノミが動揺していた。
「嘘じゃないの……あまりいい金融会社がわからなくて、適当に借りてたら利子が増えていったの」
スワンが反省する。
「荷船一つでそんなに高いのか?」
ブケンが訊いてみる。
「借金、利子込みで約……1億金貨」
想像もつかないような高額が付けられていた。
「完全に悪徳金融からお金を借りているようね」
「だって開店当時は右も左も分からない新米の店主だったし、後からどんどん、利子が増えて行って、それでも少しづつ返してたけど……今では借金地獄に……」
スワンが言いづらそうに言う。
「どうしてもっと早く相談してくれなかったんですか!?」
「ごめんなさい、皆に重荷を背負わせたくなくて……」
「……まぁ私も管理会社から追われる身ですから気持ちはわかります」
「どうしようロード」
「オレに言われても……」
「一億金貨ならエンビーズ杯に出るしかない」
ミハニーツが呟く。
「えんびーずはい?」
「何でもありの超有名な大規模レース大会」
ミハニーツが言う。
「一着の賞金が一億金貨だったはず……もうすぐ開催日だからそれに――――」
「「「それ!!」」」
ロードたちはミハニーツの話に乗っかることにした。
辺りは夜になり、ハズレ秘蔵のお手製ワインが飲める大人の時間が来ていた。
今、テーブルについているのはワイン好きの愛好家。
どうやらハズレのワインが気に入ったらしく二人組の男性がくつろいでいた。
この時間帯になるとロードたちも仕事はなくなり、ゆっくりとした時間が与えられる。
グラスは昼間から荷船の上で寝そべっていたが、今ではすっかり眠りに付いていた。
いびきもかかずにスースーと静かに眠っている。
そんな中、店番はハズレに任し、ロードたちは今日の売り上げの話をしていた。
「今日の注文はジュースが多いこと、それから女性客が多かったことから、この異世界ではジュースが売れやすいことがわかりました」
「「「おお~~~~」」」
パチパチパチとロードを皆で賞賛していた。
「売れてよかった~~」
ロードが緊張を解かれて座り込む。しかし――
「良くありません」
スワンが静かに告げる。
「何がよくないの?」
ミハニーツが訊いてみる。
そしてロードも真剣な面持ちで立ち上がる。
「フルーツジュース1カップ造るのに平均銀貨1枚、売り物として出すのに銅貨50枚、ハッキリ言って赤字です」
「赤字ってなんだ?」
ロードが訊く。
「黒字て言うのもありまして赤字はお店の売り上げの損失を意味します」
ドノミが答える。
「つまりこちらが売り上げの損をしているのか?」
「正解」
スワンは今日の売上表を皆の前でビリビリと破いて見せた。
「これからはジュースの値段を引き上げます。銀貨一枚と銅貨20枚に」
「ちょっと高すぎないか?」
ロードが意見する。
「だって、損してるの銅貨50枚分を、今日フルーツジュースいくつ売った? 100は超えてるでしょ? 合計で50銀貨損してる計算になるの、銅貨にして5000枚・そ・ん・し・て・る・の!?」
「う~~~~ん、わかった。値段を引き上げよう」
「それともう一つ。私の美味しい水の売れ行きが良くない……」
「今日、一回の注文だけでしたからね~~」
ドノミが考え込む。
「そうなの! 一番安くてお手頃に入荷できる水が一回だけの注文だったの! この際話すけど、私の水は空気中の水素と酸素を結合させて水を作ってる。そこに精霊の術で甘さを加えているの! だから実質0代価で作れるの! それがこの異世界に来てから一度しか注文されてないの!」
「作り方が分からん」
ブケンが言う。
「とにかく、今後はフルーツジュース及び、他の飲料も値上げして、美味しい水を全面的に押していくから!」
「仕方がありませんね」
ドノミが納得する。
「待ってくれ、お金を稼ぐことも大事だけど、俺達にはやることがある」
「今は秘宝玉の使い方よりお金の話をしているの!」
「いや、秘宝玉の力があれば魔王との戦いも楽になると言ってたじゃないか」
「じゃあロードは今週、食べていけなくてもいいっていうの?」
「どういうことだ?」
「この際だから正直に明かすよ? 荷船を買った借金がまだ残ってるの……それも全然返せてない額だし」
「実際どれくらいの借金があるのですか?」
「驚かないでよ……利子合わせて――――」
◆ ◆ ◆ ◆
ハズレはワインを嗜む男性たちの会話を聞いていた。
何の変哲もない社会の話だ。
その時――――
「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
その声にハズレや男性たちは驚いた。
この時、
(なんだろう。ドノミさんの声だよな?)
(何かハプニングでもあったのかな)
(まぁ、悪いことにせよいいことにせよ)
(後で聞こう。今はこの雰囲気を楽しまないと……)
(ああ、オレの自家製ワインが他人の喉に通っていく)
(結構、こういうの嬉しいな)
(スワンが一杯5銀貨にしてたけど……)
(まぁ、ワインは高級品だしな)
ハズレは楽しんでいた。
◆ ◆ ◆ ◆
荷船内。
「それ、嘘ですよね?」
ドノミが動揺していた。
「嘘じゃないの……あまりいい金融会社がわからなくて、適当に借りてたら利子が増えていったの」
スワンが反省する。
「荷船一つでそんなに高いのか?」
ブケンが訊いてみる。
「借金、利子込みで約……1億金貨」
想像もつかないような高額が付けられていた。
「完全に悪徳金融からお金を借りているようね」
「だって開店当時は右も左も分からない新米の店主だったし、後からどんどん、利子が増えて行って、それでも少しづつ返してたけど……今では借金地獄に……」
スワンが言いづらそうに言う。
「どうしてもっと早く相談してくれなかったんですか!?」
「ごめんなさい、皆に重荷を背負わせたくなくて……」
「……まぁ私も管理会社から追われる身ですから気持ちはわかります」
「どうしようロード」
「オレに言われても……」
「一億金貨ならエンビーズ杯に出るしかない」
ミハニーツが呟く。
「えんびーずはい?」
「何でもありの超有名な大規模レース大会」
ミハニーツが言う。
「一着の賞金が一億金貨だったはず……もうすぐ開催日だからそれに――――」
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