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第十四章 彼と彼女の両想いになるまでの一週間の逃避行

第712話 フローランの本当の気持ち

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 フラワーラスト界・王宮の花園。

 フローランの朝は忙しかった。

 寝巻を脱ぎ捨てて、浴室で身を清める。浴室で清めた後着替えのドレス姿に使用人が仕上げる。

 朝食は両親とは取らず、大勢の使用人の前で、ナイフとフォーク、スプーンを使って上品に食していた。

 食事が終わるとまた全身鏡の前で使用人が髪をサラサラとクシでとかしていく。

「姫、おいででございますか?」

 扉の向こうから大魔王ジュウカイダンの声が聞こえてくる。

「今準備中ですからレディの目貸し付けは見るものではありませんよ」

 この時フローランはロードとの思い出を思い出していた。

 背中を拭ってもらったこと、怪我をしたとき、食事を食べさせてくれたこと、ドレス姿で二人で並んで歩いた日々を、

「これは失礼。ですが間もなく戴冠式、民と魔物たちがお待ちです」

「わかりましたから下がりなさい」

「では、まず皆が一目できる場所に向かい演説を行ってください」

 それだけ言うと魔王ジュウカイダンは去っていった。

 この時、
(私の命令には絶対服従ですか)
(私が死になさいと命じたらいつか死ぬのでしょうか)
(それとも私の態度を強制するのでしょうか)
 フローランはどうやって魔王を倒すか考えていた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 王宮の花園。

 そこでは今、民と魔物が集まっていた。姫であるフローランが窓ガラスから顔を出すのを誰も彼もが待っていた。

 窓ガラスの前で深呼吸するフローラン。

 その肩に父親の手が乗っかる。

「落ち着いてるね。今日はフローランの戴冠式、これだけの民を王宮の花園に呼んだのは凄いことだよ」

「パパ上様……」

 もう片方の肩にも手が乗る。

「あなたは私たちの女神、民と魔物と花々を大切にしなさい」

「ママ上様……」

 フローランは心に引っかかりがあったが、ここは女王になるものとして我慢した。

 フローランが民と魔物を一望できる窓ガラスの前に立つ。

 使用人たちが窓ガラスを開いた。

 すると、

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 フローランの姿を目に入れた民と魔物たちが大歓声を上げた。その数何と王宮の外まで溢れていて、数万人の民と魔物でいっぱいだった。

「フローラン頑張りなさい」

「私たち、いえ、全ての人と魔物の界宝よ」

 両親がフローランの背中を押す。

 胸を撫でおろすフローラン。

「パパ上様、ママ上様、行って参ります」

 フローランが開かれた窓ガラスから民の姿を一人一人、魔物の姿を一体一体確認した。

 そして、演説が始まる。

「私の名はフローラン・イレヴンズ。この世界の女王に選ばれた者」
「この美貌も美声も美香も両親から与えられた物」
「私はまずこの異世界に生み落としてくれたパパ上様とママ上様に感謝します」
「そして、いつも私を笑顔にしてくれた民の皆様にも感謝します」
「幼い私の面倒を見てくれてどうもありがとうとまずは感謝します」
「さてでは、演説に入ります」
「ゴホン、えーーここにお集まりの民の皆さん魔物の皆さん。これからは私の異世界の為に尽力してもらいます」
「具体的な仕事の内容は追って説明してまいます」
「その上で民様には私が数多に世界選出の為支持してもらいます」
「いずれは無限大世界全土を私の領地とし異世界統一を成し遂げるのが私の夢です」
「次にこの異世界の私が女王になる際のルールを幾つか発表します」
「まずは魔物と手を取り合うこと」
「それから花々をより一層輝かせること」
「私の命令には命を懸けて従うこと」
「私の姿を見たら頭を下げること」
「以上が私が女王になった時の新たなルールです」
「先に皆さまに伝え、新聞記者さん達は騎士の花園まで伝えてください」
「私は奇跡の女神と呼ばれ多くの者の価値観を上書きしてしまいますがなにとぞよろしくお願いします」
「私は幸せ者です。この異世界で優しくされて嬉しかった。だから今度はこの身をもって異世界進出します」
「皆さん、私を愛してくれてありがとう」

 フローランは作り笑いで締めくくった。

「嘘だ!」

 その時一人の男が異議を唱えた。

「――――――!!!?」

 フローランは信じられないものを見るようにその男を見た。

「そんな作り笑いで自分を騙すな!」

 その者は自分の力で助けた者だった。

「オレが本当の笑顔でそこに立たせる」

 その者は自らを勇者と名乗っていた。

「勇者ロード……お姫様を助けに来た」

 ロードは打倒魔王と同時にフローランの救出を宣言した。

 この時、
(あなたは、あなたは、なんてお優しい)
(流石私の愛した勇者様)
 フローランは涙をこぼしていた。

 今度は笑顔いっぱいのうれし涙だった。
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