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第十四章 彼と彼女の両想いになるまでの一週間の逃避行

第702話 未来の従者さん

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 朝方、ロードとフローランは腰掛けていたベンチの上でから目を覚ました。

 まずはロード、白のタキシードを少々着崩し、汚していたが、寝起きは速かった。

 ロードは起き上がって軽く体操をしていた。

 タキシード姿だから身体の小回りが利かなかった。

 一方、まだ眠りこけていたお姫様がいた。名前をフローラン。

 ベンチに横たわって髪を乱している。子供とは思えない色香も出ていた。

(この子が五大女神の一角、奇跡の女神。そうかもうこれ以上美しいく可愛い子は生まれないのか)

 ロードは思っていた。そう、もうフローラン以上の可憐で美貌を持つ可愛い子は生まれないのだ。

「ん……んん……」

 小さな手につぶらなまぶたを動かす少女いた。それはフローラン、異名を奇跡の女神という。

 フローランの方も目を覚ました。白いドレスとガラスの靴。すぐに上品に座り直し、

 ロードの姿を探していた。しかし探す間もなく二人は目が合った。

 この時、フローランは笑い出した。

「フフフ、いつのも増してニワトリみたいなヘアースタイルですね」

「これはくせっ毛だ。寝癖じゃないぞ……」

「フフフ、わかっていますとも、さぁこちらへ来て私が髪をといてあげますから」

 フローランの言う通りにしようと行動しかけたが、昨日の独白を思い出す。

「こ、ここはイヤだといっておこう」

「女性のエスコートのお断りは恥にしかなりません。ここはひとつ大人しく髪をとかせてください。日頃の感謝も込めて」

 粛々と話すフローランはロードを説得する。

 他意はないと見て取ったロードはフローランの元に髪を預けた。

 クシで優しくといでいくフローラン。何度も何度も起き上がる癖毛と対峙していた。

「もう、何度も何度も立ち上がるなんて大人しくなさい」

「癖毛なんだ。仕方ないだろう」

 ロードは反論する。

「いいえ、これは解消できる問題です。あなたも一度は使用人みたいだった身、この身だしなみで王子様に奉仕していたのですか?」

「そ、そうだけど」

 ロードはしょんぼりする。

「飽きれた……フフフ、クスクス」

「何が可笑しい?」

「いいえ、嬉しいのです。普通にしょんぼりしたり反論してきたりするのが、楽しくて楽しくて、しょうがありません。あなたやっぱり私の従者になりなさい」

「ダメだ! オレは魔王を討つ者、勇者だ。簡単に道は変えられない」

「そうは言いますけど、あなた自身は望んでますか? その勇者になる道を……」

「ああ、望んでる。だって皆が幸せに暮らせる世界を作るんだから」

「それならば、私も本気であなたを従者の落としに行きませんとね。髪をとくだけでは効果が無いのでしたら、頭を撫でてあげましょう」

「ああ! もう! 子ども扱いするな! 食事を終えて騎士の花園まで行くんだろ!」

「あらあら、いけません。私としたことがこの異世界に関わる重大な任務を忘れるところでした」

「だったら――――うぐっ!!!?」

「私の従者になりなさい」

 フローランは楽しそうにロードの背中を抱きしめていた。

「や、やめろ! 男をからかうものじゃないぞ!」

 ロードの顔は頬から耳まで真っ赤だった。

「まさか、野獣のように私に襲い掛かるおつもり? あなたにそんな度胸があって?」

 ロードはギャーギャーわめいていて、フローランはキャッキャッと楽しそうだった。


 ▼ ▼ ▼


 数十分後。

 朝食を済ませていた。

 ロードとフローランは地図を見ていた。

 目的地である騎士の花園とスタート地点たる王宮の花園を見て、改めて自分たちの現在地を知るロードたちだった。

「中間地点は突破しているので、もう間もなくつく頃でしょう」

「どれだけ歩くんだよ、あと三日はかかるぞ。って言うか背中にしがみ付くんじゃない」

「ええ~~、本当は女の子に抱き着かれて嬉しいくせに」

 顔をスリスリして来る。

「キミ、オレをペットか何かと勘違いしてないか?」

「してません。大事な従者候補です」

 フローランはあくまで従者と言い張るが、愛くるしい犬や猫にスキンシップする飼い主にしか見えなかった。

「よし、食事も済ませたしそろそろ行こう。今日も魔王が来るかもしれないから用心するぞ」

「はーい、未来の従者さーーん」

 ロードたちは自分たちの現在位置を地図で見て歩き出す。

 フローランは嬉しそうにロードの手を取り繋ぎ合わせた。

 ロードはその手のつなぎ方の呼び名を知らなかったが恋人つなぎをしていた。
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