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第十四章 彼と彼女の両想いになるまでの一週間の逃避行
第701話 四日目の終わり
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ロードとフローランは真剣な会話をしていた。
歴史上五名しかいないといわれる五大女神についてだ。
ロードはフローランの瞳を見ていた。
フローランもまたロードの瞳を見ていた。
「フフフ、話はこれからと分かってますね」
フローランはロードの作ったリンゴジュースに手を伸ばしていた。コップを持ちのどを潤す。
「キミの言う、大魔王達の言う奇跡の女神について知りたい」
ロードが訊く。
「奇跡の女神、あくまで私も予言でしか知りませんし、確証はないのですが、それでも聞きたいですか?」
「キミの助けになるなら聞かせてくれ」
「わかりました」
フローランが空になったコップを置く。
「奇跡の女神とはこの無限大世界に一人しか存在しない、あらゆる異世界に愛された女神のことです」
「もっと簡単に言ってくれないか?」
「簡単に言っています。あなたも分かるでしょう? この無限大世界に自分と全く同じ人は居ないと……」
「どういう意味だ?」
「では、ロードさんに似た人が複数人いたとしましょう。あなたはこれを同一人物と呼びますか?」
「呼ばない、だって顔立ちが似てたって個性や性格まで同じとは限らないからだ」
「私の言いたいことはそれです。あらゆる無限大世界においても私と同じ顔立ちや体格は居ないのです」
「あっ――――」
「気づきましたか? そう私は無限大世界において一人しかいない人間界宝。この世に二人も居ない奇跡の女神。それのみが真実です」
「それじゃあ、キミがそんなに美しいのも、可愛いのも、麗しいのも」
「のちの従者からは聞きたくもない発言ですがそう言うことになります。私以上の美貌の持ち主は今後歴史上生まれもしません。それが無限大世界が定めた法、奇跡の女神」
「キミ以上の美貌の持ち主が生まれないか……それが特異体質か」
「あなたには話しておきましょう。この美貌はまだ発展途上ですし、成長するにつれて体つきも変わります。優雅な素顔、豊満の胸、理想のくびれ、私の未来の美貌は約束されているのです。無限大世界の法的に……」
「そうか、のちの女王たるキミを大魔王達が狙っているのはその美貌に惹かれているためか」
「それもありますが、言ったでしょう。私には特異体質があると」
「ああ、言ってたな。一体なんだ?」
「これはあくまでも予言、私が全盛期の美貌を持った時、私を視界に捉えたものはショック死し、私の美声を聞いた者はショック死し、私の美香を嗅いだ者はショック死する。どのような価値観の持ち主でも私の美しさの前では価値観が強制的に変わり、ショック死する。そう言う特異体質です」
「そういうことか……………………不味くないかそれ」
「誰も彼も言うことを訊かせるには打ってつけの体質です」
「いや、ショック死する方もまずいけど、キミもまずいだろ」
「…………分かります私の気持ち」
「ああ、わかる」
「わかりませんよ。あなたは奇跡の女神ではないのですから」
「わかる!」
ロードが主張する。
「あなたではわかりません!」
「キミが一人ぼっちになるって話だろ!」
「――――――!!!?」
フローランは涙いっぱいの顔を俯かせる。
「強がらなくていい。相談に乗るから」
「もう、どうにもならないんです」
「…………何かあったのか?」
「………………」
フローランは膝を抱えたまま微動だにしない。悲しみを身体で表さない強い子だった。
「助けてやるから言ってくれ」
「本当に?」
声は震えてない。だが涙は伝う。
「本当だ」
「私を助ける?」
「そうだ」
数十秒無言の空間でロードはフローランの相談を待っていた。
「……私はフラワーラスト界の姫、誰も彼もが優しくしてくれます。子供も大人も老人も赤子でさえ笑顔になります。そんな私にも悩みがあります。とある日、庭師の男性に仕事で使う鋏を隠しました。困っている男性を見てからかったのです。そして庭師は仕事が出来なくなり、頃合いを見計らった私は庭師にハサミを返しました。その時言われた言葉は、こうです。ありがとうお姫様、返してくれて……」
「………………」
ロードは黙って聞いていた。
「おかしいでしょう。普通ハサミがなくなったのなら、もう二度としないようにとか、ダメじゃないかとか注意や激怒してもいいはずです。それがいたずらに対しありがとうと感謝されたんです。正直に話したにもかかわらず」
「そうか」
「まだあります。子供に対しても砂を顔に掛けました。その子供はありがとうといいました。女性に対しても社交界のダンス中、誤ってパートナーの女性の足を踏んずけてしまい、転ばせてしまいました。私は怪我はないかと言われたのですが、女性の方は嘲笑され、挙句の果てに私に怪我が無くて良かったと安堵しました。ご老人に対してもそう、網の罠を仕掛けて捕まえたことがあります。その時、ご利益があるからとお礼を言われ、お駄賃も貰いました。私は謝ったのに対し、今度は向こうが謝って来たのです。男性に対してもそうです。果物屋さんの売り物を勝手に食べ散らかしました。これなら怒られるかと思ったのに、あろうことか感謝され、民もご利益があるとその果物屋さんに殺到しました。私はお礼としてたくさんの果物を受け取りました。赤子に対してもいたずらをしました。その親に赤子が私に唾を掛けたといいました。もちろん嘘でしたが私のいたずらは止まらず、赤子は親に怒られました。泣いていた赤子は私を見ると笑顔になりました。私はそれでもいたずらを続けて怒られようとしましたが、失敗しました。私はこの時思いました。この世界は私を愛しすぎてる。と……これが奇跡の女神の特異体質です」
「……………………」
「あなたならわかってくれるのでしょう?」
「ああ、わかった」
「言ってくださいな」
「わかった…………」
ロードは空気を吸い込んだ。そして溜める。
「この馬鹿姫! いたずらもたいがいにしろ!」
ロードは怒鳴った。
「……はい、ごめんなさい」
フローランは抱えていた膝を解き、涙の笑顔で謝罪した。
「助けになったか?」
「はい、お救いくださってありがとうございます」
「もうするんじゃないぞ……」
「いいえします。あなたに怒られたいので……」
ロードとフローランは分かり合った。
勇者とお姫様の四日目の冒険が終わる。
歴史上五名しかいないといわれる五大女神についてだ。
ロードはフローランの瞳を見ていた。
フローランもまたロードの瞳を見ていた。
「フフフ、話はこれからと分かってますね」
フローランはロードの作ったリンゴジュースに手を伸ばしていた。コップを持ちのどを潤す。
「キミの言う、大魔王達の言う奇跡の女神について知りたい」
ロードが訊く。
「奇跡の女神、あくまで私も予言でしか知りませんし、確証はないのですが、それでも聞きたいですか?」
「キミの助けになるなら聞かせてくれ」
「わかりました」
フローランが空になったコップを置く。
「奇跡の女神とはこの無限大世界に一人しか存在しない、あらゆる異世界に愛された女神のことです」
「もっと簡単に言ってくれないか?」
「簡単に言っています。あなたも分かるでしょう? この無限大世界に自分と全く同じ人は居ないと……」
「どういう意味だ?」
「では、ロードさんに似た人が複数人いたとしましょう。あなたはこれを同一人物と呼びますか?」
「呼ばない、だって顔立ちが似てたって個性や性格まで同じとは限らないからだ」
「私の言いたいことはそれです。あらゆる無限大世界においても私と同じ顔立ちや体格は居ないのです」
「あっ――――」
「気づきましたか? そう私は無限大世界において一人しかいない人間界宝。この世に二人も居ない奇跡の女神。それのみが真実です」
「それじゃあ、キミがそんなに美しいのも、可愛いのも、麗しいのも」
「のちの従者からは聞きたくもない発言ですがそう言うことになります。私以上の美貌の持ち主は今後歴史上生まれもしません。それが無限大世界が定めた法、奇跡の女神」
「キミ以上の美貌の持ち主が生まれないか……それが特異体質か」
「あなたには話しておきましょう。この美貌はまだ発展途上ですし、成長するにつれて体つきも変わります。優雅な素顔、豊満の胸、理想のくびれ、私の未来の美貌は約束されているのです。無限大世界の法的に……」
「そうか、のちの女王たるキミを大魔王達が狙っているのはその美貌に惹かれているためか」
「それもありますが、言ったでしょう。私には特異体質があると」
「ああ、言ってたな。一体なんだ?」
「これはあくまでも予言、私が全盛期の美貌を持った時、私を視界に捉えたものはショック死し、私の美声を聞いた者はショック死し、私の美香を嗅いだ者はショック死する。どのような価値観の持ち主でも私の美しさの前では価値観が強制的に変わり、ショック死する。そう言う特異体質です」
「そういうことか……………………不味くないかそれ」
「誰も彼も言うことを訊かせるには打ってつけの体質です」
「いや、ショック死する方もまずいけど、キミもまずいだろ」
「…………分かります私の気持ち」
「ああ、わかる」
「わかりませんよ。あなたは奇跡の女神ではないのですから」
「わかる!」
ロードが主張する。
「あなたではわかりません!」
「キミが一人ぼっちになるって話だろ!」
「――――――!!!?」
フローランは涙いっぱいの顔を俯かせる。
「強がらなくていい。相談に乗るから」
「もう、どうにもならないんです」
「…………何かあったのか?」
「………………」
フローランは膝を抱えたまま微動だにしない。悲しみを身体で表さない強い子だった。
「助けてやるから言ってくれ」
「本当に?」
声は震えてない。だが涙は伝う。
「本当だ」
「私を助ける?」
「そうだ」
数十秒無言の空間でロードはフローランの相談を待っていた。
「……私はフラワーラスト界の姫、誰も彼もが優しくしてくれます。子供も大人も老人も赤子でさえ笑顔になります。そんな私にも悩みがあります。とある日、庭師の男性に仕事で使う鋏を隠しました。困っている男性を見てからかったのです。そして庭師は仕事が出来なくなり、頃合いを見計らった私は庭師にハサミを返しました。その時言われた言葉は、こうです。ありがとうお姫様、返してくれて……」
「………………」
ロードは黙って聞いていた。
「おかしいでしょう。普通ハサミがなくなったのなら、もう二度としないようにとか、ダメじゃないかとか注意や激怒してもいいはずです。それがいたずらに対しありがとうと感謝されたんです。正直に話したにもかかわらず」
「そうか」
「まだあります。子供に対しても砂を顔に掛けました。その子供はありがとうといいました。女性に対しても社交界のダンス中、誤ってパートナーの女性の足を踏んずけてしまい、転ばせてしまいました。私は怪我はないかと言われたのですが、女性の方は嘲笑され、挙句の果てに私に怪我が無くて良かったと安堵しました。ご老人に対してもそう、網の罠を仕掛けて捕まえたことがあります。その時、ご利益があるからとお礼を言われ、お駄賃も貰いました。私は謝ったのに対し、今度は向こうが謝って来たのです。男性に対してもそうです。果物屋さんの売り物を勝手に食べ散らかしました。これなら怒られるかと思ったのに、あろうことか感謝され、民もご利益があるとその果物屋さんに殺到しました。私はお礼としてたくさんの果物を受け取りました。赤子に対してもいたずらをしました。その親に赤子が私に唾を掛けたといいました。もちろん嘘でしたが私のいたずらは止まらず、赤子は親に怒られました。泣いていた赤子は私を見ると笑顔になりました。私はそれでもいたずらを続けて怒られようとしましたが、失敗しました。私はこの時思いました。この世界は私を愛しすぎてる。と……これが奇跡の女神の特異体質です」
「……………………」
「あなたならわかってくれるのでしょう?」
「ああ、わかった」
「言ってくださいな」
「わかった…………」
ロードは空気を吸い込んだ。そして溜める。
「この馬鹿姫! いたずらもたいがいにしろ!」
ロードは怒鳴った。
「……はい、ごめんなさい」
フローランは抱えていた膝を解き、涙の笑顔で謝罪した。
「助けになったか?」
「はい、お救いくださってありがとうございます」
「もうするんじゃないぞ……」
「いいえします。あなたに怒られたいので……」
ロードとフローランは分かり合った。
勇者とお姫様の四日目の冒険が終わる。
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