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第十四章 彼と彼女の両想いになるまでの一週間の逃避行
第694話 三日目の終わり
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フラワーラスト界・大王宮。
夜闇が支配する頃、もう使用人や衛兵たちが眠りに付いた頃。
大王宮の地下に大魔王ジュウカイダンの玉座があった。
今玉座に座っているのが褐色の肌に尖った耳の魔物らしい目を持つ黒のタキシードを着た大魔王ジュウカイダンだった。
回廊にも似たその空間は右側に忍者姿のミンミンという魔王と、左側に本を大事に抱えたストリマーという魔王が控えていた。さらに眷属使魔やその配下となる雑兵の魔物たちも数百体と控えていた。
そして大魔王の玉座の前には片膝をついて礼儀を現す魔王レイダーがいた。
昼間の戦いで受けた傷や焦げた身体は戦いの勲章となっていた。
「申し開きを許可しよう」
大魔王ジュウカイダンは静かな怒りを表していた。
「大魔王様、オデを何故――――」
魔王レイダーの足元が液状になっていく。沈没の秘宝玉の効果だ。
「まずは身分を名乗りなさい。礼儀知らずが……」
「は、はい、オデ、斧の秘宝玉の使い手、魔王レイダーと申します」
液状に沈んでいく身体が停止した。
「わたくしは大魔王ジュウカイダン、沈没の秘宝玉の所有者です」
ため息交じりに名乗る大魔王。
「う、うわっ!」
液状になった床が再びレイダーを沈ませていく。
「あなたはわたくしの何なのですか?」
大魔王が殺気を放ち言う。
「お、オデはジュウカイダン様の眷属使魔だ。た、助けてください」
片足と膝が液状に埋もれたが、それ以上沈まないようにジュウカイダンが停止させた。
「よろしい。自分の身元はきちんと名乗りましょうね」
ジュウカイダンが肘掛けに肘を置き、手に顔を乗せて話始める。
「は、はい」
魔王レイダーがこうべを垂れた。
「それでわたくしが今朝、あなたに与えた任は何ですか?」
「姫の従者の抹殺」
魔王レイダーは何故そんな問いをして来たのか分からなかった。
「この問いの意図が読めませんか。これだから戦闘にしか興味が無い殺戮型は愚者と呼ばれるのです。わかりました。説明しましょう。まず我々の目的は何です?」
「姫を後の女王様にすること」
「それから、わたくしたちを配下に置くことでしょう? いずれ女王となる姫の手足となり、邪魔者を排除し、逆らうものを皆殺す。そしてゆくゆくは女王の存在を異世界にも意向させ、あらゆる異世界の女王になってもらうのです。そうすれば女王の魅力にかかった魔王達が次々と配下になり魔界化を有利に進めて行くことです」
「お、オデにもわかります。あの姫はゆくゆくは――――」
魔王レイダーの発言で液状化した床が再びレイダーを沈めていく。
「わたくしの話を理解していると思えないですね。今すぐ訂正なさい」
「お、オデにはわかりません! 何故大魔王様が怒っているのか!」
下半身が沈んだところで魔王レイダーは理解した。自分の意向と大魔王の意向が合致していないのだと、
「そう、わたくしは怒っています。何故従者の抹殺の任を与えたのに、姫に――――」
「邪魔者扱いした?」
ない脳みそをフル活動して答える魔王レイダー。
「おしいです」
レイダーが沈むのをいったん止める大魔王。
「従者を殺し損ねたから?」
「違います」
「戦闘中姫が戻って来たから?」
「違います」
「だったらなんだって言うんですか?」
魔王レイダーは必死に考えていたが、答えは単純だった。
「のちのわたくしたちの女王を傷ものにしたからです」
「あっ、あっ……そんな」
魔王レイダーは答えが出なかったことにより沈み始める。
「見ていましたよ。この秘宝冠から全て、わたくしたちの姫に何かあったらどうするおつもりだったのですか?」
大魔王ジュウカイダンは玉座から立ち上がる。
「皆さんも見ておいてください。今の姫やこれからの女王に傷一つ付けてはなりませんよ?」
コクコクと頷く魔物たち。
「大魔王様……オデにもう一度チャンスを、あの従者は必ず仕留めますから」
「仕留めきる前に姫の安全が大事です。お分かりですか? 秘宝冠は今も発動中です。大方あの従者と決着を付けたいだけのわがままでしょう」
大魔王ジュウカイダンが沈んで行く魔王レイダーの顔を踏みつけていく。
「それではさようならデクノ坊さんもう会うことはないでしょう」
踵を返して、ジュウカイダンは玉座に戻る。
「こんな仕打ちあんまりだーーーー!」
魔王レイダーが斧を手に取り頭が完全に沈む前に斧をジュウカイダンに投げ放った。
しかし斧は投げた瞬間、床に吸い寄せられるように沈没していった。
「オデ、頑張ったのに……」
魔王レイダーの顔が沈んで行く。そして上げていた腕さえも沈み、床の下へと消えて行った。
大魔王ジュウカイダンの方は玉座に座り直す。
「さて、次の作戦を立てましょう。言っときますけど、まずはあの従者を何とかしましょう」
にっこりと笑う大魔王ジュウカイダンだった。その表情は大魔王に相応しく口角が思いっきりつり上がった。
◆ ◆ ◆ ◆
フラワーラスト界・茎の林。
ハンモックでスーースーーと寝息を立てているフローラン。
その寝顔に慣れてきたロードは、
(魔王の前でもひるまない精神)
(オレを助けに来るほどの勇気と度胸)
(この子はきっといつか大物になるな)
ロードはその微笑ましい寝顔を見ながら考えていた。
夜闇が支配する頃、もう使用人や衛兵たちが眠りに付いた頃。
大王宮の地下に大魔王ジュウカイダンの玉座があった。
今玉座に座っているのが褐色の肌に尖った耳の魔物らしい目を持つ黒のタキシードを着た大魔王ジュウカイダンだった。
回廊にも似たその空間は右側に忍者姿のミンミンという魔王と、左側に本を大事に抱えたストリマーという魔王が控えていた。さらに眷属使魔やその配下となる雑兵の魔物たちも数百体と控えていた。
そして大魔王の玉座の前には片膝をついて礼儀を現す魔王レイダーがいた。
昼間の戦いで受けた傷や焦げた身体は戦いの勲章となっていた。
「申し開きを許可しよう」
大魔王ジュウカイダンは静かな怒りを表していた。
「大魔王様、オデを何故――――」
魔王レイダーの足元が液状になっていく。沈没の秘宝玉の効果だ。
「まずは身分を名乗りなさい。礼儀知らずが……」
「は、はい、オデ、斧の秘宝玉の使い手、魔王レイダーと申します」
液状に沈んでいく身体が停止した。
「わたくしは大魔王ジュウカイダン、沈没の秘宝玉の所有者です」
ため息交じりに名乗る大魔王。
「う、うわっ!」
液状になった床が再びレイダーを沈ませていく。
「あなたはわたくしの何なのですか?」
大魔王が殺気を放ち言う。
「お、オデはジュウカイダン様の眷属使魔だ。た、助けてください」
片足と膝が液状に埋もれたが、それ以上沈まないようにジュウカイダンが停止させた。
「よろしい。自分の身元はきちんと名乗りましょうね」
ジュウカイダンが肘掛けに肘を置き、手に顔を乗せて話始める。
「は、はい」
魔王レイダーがこうべを垂れた。
「それでわたくしが今朝、あなたに与えた任は何ですか?」
「姫の従者の抹殺」
魔王レイダーは何故そんな問いをして来たのか分からなかった。
「この問いの意図が読めませんか。これだから戦闘にしか興味が無い殺戮型は愚者と呼ばれるのです。わかりました。説明しましょう。まず我々の目的は何です?」
「姫を後の女王様にすること」
「それから、わたくしたちを配下に置くことでしょう? いずれ女王となる姫の手足となり、邪魔者を排除し、逆らうものを皆殺す。そしてゆくゆくは女王の存在を異世界にも意向させ、あらゆる異世界の女王になってもらうのです。そうすれば女王の魅力にかかった魔王達が次々と配下になり魔界化を有利に進めて行くことです」
「お、オデにもわかります。あの姫はゆくゆくは――――」
魔王レイダーの発言で液状化した床が再びレイダーを沈めていく。
「わたくしの話を理解していると思えないですね。今すぐ訂正なさい」
「お、オデにはわかりません! 何故大魔王様が怒っているのか!」
下半身が沈んだところで魔王レイダーは理解した。自分の意向と大魔王の意向が合致していないのだと、
「そう、わたくしは怒っています。何故従者の抹殺の任を与えたのに、姫に――――」
「邪魔者扱いした?」
ない脳みそをフル活動して答える魔王レイダー。
「おしいです」
レイダーが沈むのをいったん止める大魔王。
「従者を殺し損ねたから?」
「違います」
「戦闘中姫が戻って来たから?」
「違います」
「だったらなんだって言うんですか?」
魔王レイダーは必死に考えていたが、答えは単純だった。
「のちのわたくしたちの女王を傷ものにしたからです」
「あっ、あっ……そんな」
魔王レイダーは答えが出なかったことにより沈み始める。
「見ていましたよ。この秘宝冠から全て、わたくしたちの姫に何かあったらどうするおつもりだったのですか?」
大魔王ジュウカイダンは玉座から立ち上がる。
「皆さんも見ておいてください。今の姫やこれからの女王に傷一つ付けてはなりませんよ?」
コクコクと頷く魔物たち。
「大魔王様……オデにもう一度チャンスを、あの従者は必ず仕留めますから」
「仕留めきる前に姫の安全が大事です。お分かりですか? 秘宝冠は今も発動中です。大方あの従者と決着を付けたいだけのわがままでしょう」
大魔王ジュウカイダンが沈んで行く魔王レイダーの顔を踏みつけていく。
「それではさようならデクノ坊さんもう会うことはないでしょう」
踵を返して、ジュウカイダンは玉座に戻る。
「こんな仕打ちあんまりだーーーー!」
魔王レイダーが斧を手に取り頭が完全に沈む前に斧をジュウカイダンに投げ放った。
しかし斧は投げた瞬間、床に吸い寄せられるように沈没していった。
「オデ、頑張ったのに……」
魔王レイダーの顔が沈んで行く。そして上げていた腕さえも沈み、床の下へと消えて行った。
大魔王ジュウカイダンの方は玉座に座り直す。
「さて、次の作戦を立てましょう。言っときますけど、まずはあの従者を何とかしましょう」
にっこりと笑う大魔王ジュウカイダンだった。その表情は大魔王に相応しく口角が思いっきりつり上がった。
◆ ◆ ◆ ◆
フラワーラスト界・茎の林。
ハンモックでスーースーーと寝息を立てているフローラン。
その寝顔に慣れてきたロードは、
(魔王の前でもひるまない精神)
(オレを助けに来るほどの勇気と度胸)
(この子はきっといつか大物になるな)
ロードはその微笑ましい寝顔を見ながら考えていた。
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