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第十四章 彼と彼女の両想いになるまでの一週間の逃避行

第689話 互いの気になるところ

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 ロードとフローランは散歩のように花畑の道を進んでいた。

 ロードはフローランに仲間の話をしていた。

「ハズレさんは頭がいいのですね。スワンさんはきっと思い人がいるのでしょう。グラスさんには会いたくないかなぁ~~ちょっと怖そうです。ドノミさんはたくさん努力してきたのでしょう尊敬に値します。ブケンさんは頑固なと所があると言ったところでしょうか。ミハニーツさんは完全に……いえ、言うのはやめましょう」

「それからトンガリって言うスライムの仲間もいたんだ。今はスライム界で魔王として仕事をしている」

「魔王!?」

「そう驚くことじゃない。無害型の魔王だからきっといい世界を作るよ」

「そうですか……そのスライムとはどうやって別れたんですか?」

「う~~~~ん、忘れた」

「あなた、少し物忘れが激しいのではなくて?」

「記憶喪失の後遺症かなぁ~~」

 ロードは顎に手を当て考える。

「少し興味はありましたが、忘れてしまったのなら仕方がないですね」

 フローランが少し残念がる。

「まぁ一緒に魔王バグバニッシャーを倒した仲でもある」

「無害型ですからデフォルメスライムですよね? どうやって戦うんです?」

「一度体当たりを食らったけど痛くはなかった」

「デフォルメスライムは他の生物に向かって体当たりはしません」

「あれ? これも忘れたのかな?」

「まぁいいです。それよりも私はあなたのことが知りたいです」

「オレの事?」

「はい、特技とか、ご趣味とか、長所とか……」

「ああ、何でも聞いてくれ」

「ではストンヒュー王国出身でしたよね。そこでどれくらいお友達が居たんですか?」

「さぁ、分からない。会う人全員が友達だったよ」

「随分の顔が広いことです。ではどうして使用人などやっていたのですか?」

「元々、住む家とかなくて宮殿に住まわせてもらっていたんだ。王様の好意で、将来自立できるよう使用人見習いをしていたんだ。お目付け役として三匹のネズミが付きまとっていたかな~~」

「ああ、ご記憶を無くされたとは聞いてますが、そのような理由で、ですけどたくさんの友達に囲まれて幸せだった?」

「ああ」

「では、話を変えましょうご趣味は何ですか?」

「絵本を読むことかな」

「クスクス、絵本ですか。幼い精神らしいあなたにピッタリのご趣味ですね」

「むっ、バカにしているな? フローランの趣味は何なんだよ」

「私は学問です。経営学、帝王学、哲学、魔学などなど暇さえあれば勉強していました」

「オレだって医学の勉強をしたことがあって……」

「はいはい負け惜しみはいいですから、お次は特技でも披露してもらいましょうか?」

 先頭を歩くフローランがくるりと180度回り、笑顔で訊いてくる。

「じゃあ聞いて驚くなよ……」

「はい、何でもどうぞ……」

「あ、アオーーーーーーン!!」

 ロードはオオカミの遠吠えをした。

「オオカミ!?」

 フローランは腰を抜かして花畑の道に尻餅をついた。

「驚いたか? 今の遠吠えはオレが出したものだぞ……? 旅のオオカミ、ルロウに習ったものだ」

「驚きましたわ。そんな特技をお持ちとは……ですが特技なら私も負けません。あっ!」

「どうした?」

「ヴァイオリンを弾こうと思ったのですがあいにく用意が出来ません」

「そうかい」

 ロードがフローランい手を差し伸べて起こそうとする。

 フローランは手を取るか躊躇したが、手を取って起き上がった。

「好きな食べ物は?」

 フローランがドレスに付いた土を払いながら訊く。

「食べられれば何でもいい」

「それでは私は?」

「リンゴだろ?」

「即答――しかも正解とはやりますね」

(それはずっとリンゴリンゴ言ってたらわかるって……)

「嫌いな食べ物は?」

「特にない」

「それじゃあ私は?」

「生き物ってこの前聞いたが?」

「尊敬している人は?」

「育ての親、ガリョウ先生とヴィンセント先生かな」

「私はいません。言うなれば私自身を尊敬対象にしたいです」

「フローラン誕生日は?」

「11月12日」

「それじゃあプレゼントは上げられないな……」

「子ども扱いはおやめあそばせ、あなたの誕生日は?」

「3月30日らしい」

「それじゃああなたにもプレゼントはなしですね。今は8月の終わりらへん」

「将来の夢は?」

「ありません。そちらは?」

「あらゆる異世界の平和」

「それでは最後に訊きます。ゴホン、好きなタイプは?」

「それ仲間にも聞かれた……一人で頑張っている子かな」

「私は目が輝いている人です」

 両者は見つめ合った。

(一人で頑張っている子が目の前に)

 この時、
(瞳が輝いている方が目の前に……)
 フローランは思っていた。

 そして両者は互いを意識し目を逸らす。

「何で目を逸らすのですか?」

「そっちこそ」

 ロードとフローランの辺りから花の甘い香りが漂って来た。

「あの~~正式に私の従者になってはくれませんか?」

「オレは勇者だ旅する者、それは出来ない」

「そうですか。それは良かった」

 一目惚れしてもおかしくない笑顔だった。

「どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」

「乙女の秘密」

 フローランはそう言って歩き続けた。

 ロードも歩幅に合わせて仕方なくついていく。

 従者にならないと言われたフローランの心は安心していた。
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