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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える

第670話 別れても笑顔

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 ネガティブランド。

 元気を取り戻したマスコット族がパーク内の復興作業をしていた。

 壊れたジェットコースターやメルヘンチックなお城を直していく。

「えっほい、えっほい!」「よっさ、よっさ!」「かしこ、かしこ!」

 マスコット族が夢と希望を持って働いていた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ネガティブランド・飲食エリア内。

「ハハハハハハハハハ、ミハニーツが逃げたのは傑作だった、ハハハハハハ」

 笑い話をしていたのはファンタだった。

「黙れ弱虫」

 トゲの含んだ言い方をするミハニーツ。

「ドノミさん俺たちの出番あんだけかよ」

 ティベンスが嘆く。

「もう少しフォローしてくれても良かったのでは?」

 バザーデが抗議する。

「壁男と賢くない馬のフォローより、勇者の物語を優先しただけですから」

 ドノミがコーヒーを飲みながら言う。

「オレはあれでよかったのかよ」

 ただ木と草の格好をして立っていただけのグラスが言った。

「もちろんでござる。背景は重要な仕事でござる」

 木の葉の助がフォローする。

「幻のヤローに任せた方が絶対いいだろ」

「オレか? オレだって人間、疲れるんだぜ。それにブケンと違って立ってるだけ楽じゃないか」

 ファンタが言う。

「ときどき、衝撃波を忘れそうになった」

 ブケンがお茶と対面しながら言う。茶柱は立っていない。

「まぁ今回の立役者は――――」

 ファンタのセリフを――――

「ドノミさんのナレーションだな」

 ロードが遮った。

「おいおい、なんでそうなる」

 ファンタが肩をガックシと落とした。

「ドノミさんがマスコット族を焚きつけて応援のエールを届けてくれたんだ。MVPはドノミさんの物だ」

「そんなロードさんの諦めない根性のおかげですよ」

「いいや皆のおかげだね」

 言い合う二人。

 この時
((照れてる。ひょっとしてドノミさんも?))
 と疑うスワンとミハニーツだった。

「スワンさんの演技も魂が入っていてよかったです」

 フリムがスワンを褒める。

「あはは、ありがとう(なんかロード見てるともやもやする)」

 スワンはストローで水をぶくぶくさせていた。

「ところでオレが変身させられた魔物は何だったんだ?」

 ハズレが話題を変える。

「アレは以前オレが妖怪世界で見て来た妖怪ぬえだ」

「妖怪世界?」

「ああ、以前の依頼でな、暴走した妖怪を倒して欲しいという依頼だった」

「ギルドか……」

「そうだ! ロードお前もギルドに登録しろよ。そしたら魔王も倒せるし報酬も貰える。困っている人も助かるウィンウィンな関係が作れるぜ」

「そうやって誘われたこともあったが、断るよ。オレはただ目の前にいる人から順番に助けていくことにするから」

「そうかい」

「ファンタの言う妖怪世界いつか行ってみたいなぁ」

「おう、色んなやつがいて面白かったぞ」

 ファンタが笑顔で話す。

「アレが面白い?」「不気味でした」「襲い掛かって来るのもいたし」「もう行きたくないでござる」

 チームドリーマーが愚痴をこぼしていた。

 そしてロードたちは笑いながら話を続ける。

「そうだロード、お前にこの番号を渡しておくぜ」

 ファンタはロードに紙切れを渡した。

「これは? 聖法通信の番号だ。どこかで聖法を学ぶことがあったら真っ先に通信を学べ、オレと離れていても会話できるから」

「ああ、わかった。そうするよ」

「うん」

 その時、

「みなさーん撮影の準備が出来ましたーー!」

 ポジティブランドのオーナー、マスコット族のミラクルさんが走って来ていた。

「もうそんな時間か」

 ロードが呟く。

「よし皆行くぞ」

 ファンタが仕切る。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ネガティブランド・園内前。

 ロードの隣はミハニーツとファンタが独占していた。

「やっと隣が取れたぞ」

 ファンタが言う。

「そのセリフまだ根に持ってたの?」

「お前が逆の立場だったらどうする? ミハニーツ」

「言うようになったのね。ファンタ」

「二人共ケンカするな。笑顔で撮影しよう」

 ロードが仲裁する。

 この時、
(ロードのことが気になる)
(いいえ、ここはミハニーツさんが隣でよかったと喜ぶべき)
(ロードの気持ちは置いておこう)
 スワンがカメラ目線になる。

「さぁ、3、2、1で行きますぞ」

 ロード、ハズレ、スワン、グラス、ドノミ、ブケン、ミハニーツ、ファンタ、ティベンス、フリム、バザーデ、木の葉の助、ミラクルさん、ラッキーなどと大勢のマスコット族に囲まれて記念撮影をする。

「一兆目の団体様に夢と希望を!」

「「「3」」」

「「「2」」」

「「「1」」」

 カシャッとカメラのシャッター音が鳴った。

 皆、いい笑顔をしていた。

 そしてロード一行とチームドリマーはテーマパークを後にした。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 夕焼けが照らす丘の上・分かれ道。

「よし、俺は一度故郷に帰って皆の墓を建てるよ」

「オレたちは旅の続きをする。ありがとうファンタ」

 ロードは手を差し出す。

「こっちこそ、生きてるとわかった時は嬉しかったぞ」

 その手を握り返すファンタ。

 各ペアだった戦友たちも握手していた。

「それじゃあこれで……最魔の元凶かもしれないパスラパサイダに気を付けろ」

「わかった。それじゃあこれで……」

 ロードとファンタは手を放し、分かれ道へそれぞれ歩み寄って行った。

 その間ロードとファンタはお互いが見えなくなるまで手を振り合った。

 互いに夢と希望を胸に抱いて来た二人、そのおかげでこの異世界と住人も救われたのだった。
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