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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える

第659話 ワタグルミかマスコットかの判別

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 ファンタは深い眠りについた。ロードに忠告すら残せず、

 そんなロードは眠りにつくファンタを背後に両手に剣を構えていた。

 マスコット族が10体以上いる。

(何だ? ミラクルさんいわくここで働いてるマスコット族じゃないといっていた)
(ここに居る全員ではないが、観光に来た一部のことだろうか……)
(魔物かマスコットか、裏切りの瞳が光りっぱなしで判断付かない)
(それに魔物だとしても、さっきの再生力を持っている)
(破れた絹を縫い合わせること綿を中身に戻すこと)
(これらの仮設でマスコット族を傷つけてしまったらまずい)
(ただただ操られているだけかもしれない)
(アカは昼間に起こしてしまったもう出て来れない)
(こうなったら直接聞くか……)

 ロードは思考を巡らせて発言しようとする。

「おい、大魔王……名前は何だった?」

「ワタグルミだ! 覚えやがれ!」

 ロードの挑発に乗る小さな球状のワタグルミ。その時、数十体のマスコット族が皆おもちゃの剣を持って向かって来た。

「軌道読み!」

 マスコットの攻撃を全てかわしていく。

 その内、小さなぬいぐるみの歪な口にホラー的な目を持った大魔王が噛み付いて来るがロードは手で掴み取って抑え込んだ。

「おい、聞きたいことがあるここに居るマスコット族は――――」

 その時、掴んでいた大魔王ワタグルミが光り出した。

「またな――――」

 それだけ言って自爆した。ロードの手にやけどが残る。

(くっ、掴んで捕えても爆発するのか)
(もう一体の方には気を付けよう)
(さて、自己再生で焼けた腕は元に戻ったが)
(だがこれで一体は仕留められた)
(マスコット族には悪いが打撃を与えて気絶してもらおうか)
(……………………待て)
(この大魔王、二体だけとは限らない)
(さっきもミラクルさんが言っていたじゃないか)
(ここで働いてる従業員じゃないと……だったら何なんだ)
(こいつら全員が魔物とは考えられないか……)
(だが確かめるすべがない)
(聞くしかない)

 ロードはじっとこちらを見ていたマスコットの山にいたワタグルミに話しかけた。

「お前たちが複数体いることがわかった。まだまだいるんだろ? 全部で何体居る」

「焼け焦げた腕を再生したのには驚いたよ! それがお前の秘宝玉の力か!」

 子供のはしゃぎ声みたいに言うワタグルミ。

「言え、お前たちは何体いる?」

「無限って言ったら絶望するか? クヒヒヒ……」

 ワタグルミが笑うが、ロードは刹那の時間で移動し青い剣でワタグルミを突き刺した。

「早く離れた方がいいぞ……クヒヒヒ」

 最後まで笑うワタグルミ。その場に居たマスコットの山ごと爆発で吹き飛ばそうと光り出す。

「ミチル! 行け!」

 爆発する前にミチルが突き刺したワタグルミは宙に飛び去った。そして爆発した後、青い剣はロードの元へ戻ってくる。

(危ない……あんなものをマスコット族に食らわせるわけにはいかない)
(だがこれで二体のワタグルミは爆散した)
(操られていたら解除、操られたままなら魔物)

 ロードに襲い掛かって来るのはやはり、おもちゃの剣を持つマスコット達だった。

 ロードは攻撃を避ける為、青い剣で宙を飛ぶ。

 操られたのかも魔物なのかの判断がつかないマスコットも飛び始めロードを追う。

 そしてロードは見た。マスコットの内の一体が先ほどのワタグルミの姿と同じようになるところを、

(これで確信した。普通のマスコットが空を飛ぶことはない)
(全員が大魔王ワタグルミか……)

 その時、青い剣の切っ先にはさっき突き刺したワタグルミがいた。ぐんぐん手元まで近づいてくる。

(こいついつの間に――)

 ロードは手元から青い剣を放した。

 そしてワタグルミは爆発した。

「ふぅ……」

 ロードは目の前に迫るワタグルミ達を迎え撃とうとしていたが、受け取った青い剣がロードをその場から逃がす。その時、ドカーーーーンと爆発した。背後からワタグルミが迫っていたのだ。

「背後に気が付かなかった。ありがとうミチル」

 ロードはミチルに連れ去られる。そしてファンタたちが眠る場所に帰って来た。

「おい、ファンタ! 寝ている場合じゃないぞ!」

 ロードの大声に耳もかさずスゥーースゥーー寝息を立てていた。

 ロードは今度、飛んで来る。ワタグルミ達に取り囲まれた。そして――――

 ――――死角。マスコットの山から一本のおもちゃの剣が飛び出してロードに突き刺さる。

「あっ……(まだ居たのか……)」

 ロードの意識は深い眠りにつこうとしていた。

「悪夢へようこそ」

 眠りにつくロードが最後に聞いた大魔王ワタグルミの言葉だった。
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