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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える
第658話 おもちゃの剣に宿る睡魔
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ファンタはマスコット族の傷だらけのクマにおもちゃの剣で刺された。
正確には隙を突かれて背後から胸に貫通する。
「――――!?」
あまりに唐突な攻撃だったためかわしようがなかった。
「ファンタ、大丈夫か!」
おもちゃの剣はファンタから抜き去られ傷の心配をするロード。
「大丈夫だ! 盛大に血しぶきをあげるかと思ったが、出血もなけりゃ傷口もない!」
ファンタはおもちゃの剣に確かに刺さった痕をまさぐっていた。
この時、
(剣は確かに刺さった)
(なのに傷口が無いのはどういうことだ)
(いやそれ以前にマスコット族がなぜオレを襲う?)
(敵意も悪意も感じられなかった)
(闘気も殺気も感じられなかった)
(今日、ロードたちと再会できて浮かれてたか?)
(いや違う、オレが死角とはいえ攻撃を察知できないはずがない)
(マスコット族はロードが取り押さえた訊いてみるか)
ファンタが歩み出す。
ロードはじたばたするマスコット族の傷だらけのクマを取り押さえていた。
「どうしてオレに攻撃してきた?」
ファンタは率直に訊いてみる。
「ギャーーーーワーーーー!」
まともに会話も出来ない。
「んーーこのマスコットうちの従業員ではないのかもしれません」
ネガティブランドのオーナー、ハムスターのマスコットのミラクルさんが言う。
「「――――!!!?」」
二人は直後に驚いた。何と抑えつけていたマスコットが小さなぬいぐるみに姿を変え、歪な口とホラー的な目をした魔物に変わっていく。先ほどファンタが切り裂いた魔物と同じ姿をしていた。
「やーーいやーーい! 刺さったな! メアの剣に、もうお前はオレのおもちゃだ! ハハハハハ!」
不愉快極まりない口調の魔物だった。
ファンタは瞬間的に抜剣し、自称大魔王のワタグルミを切り裂いた。今度は霧散化が始まるまで切り裂き続ける。
「うわーーーー! うぎゃーーーー! いてーーーー!」
そのうるさい口もファンタは切り裂いた。それでも霧散化は始まらない。
(何だ? 霧散化しないのか? ひょっとして本物のマスコット族じゃないよな?)
ロードは不安がるが、ファンタは容赦なく切り刻んで行く。
その時、ファンタは膝から崩れ落ちた。ドクンという心臓の音を響かせて、
「――――!?」
ファンタを襲ったのは強い眠気だった。
「悪夢を見ろ!」
今度は最初に切った魔王が言って来た。いつの間にか斬られた身体が元通りになっている。
(どういうことだ? こいつさっきファンタが斬った。魔物じゃないかどうして元の姿に戻っている?)
ロードはその秘密を知る為、切り刻まれたもう一体の魔王を見る。すると、飛び散った綿が集まり、絹を張り合わせ、糸が縫い込んで行き、ツギハギだらけの魔王が元通りになった。
「ファンタさん! ファンタさん!」
倒れてしまったファンタをミラクルさんが呼び続ける。
「ロードさん! ファンタさんの様子がおかしいです!」
「――ファンタ! オイしっかりしろーー! まさか死ぬつもりじゃないよな!」
「馬鹿野郎……オレには夢がある。そいつを叶えるまでは死なないさ」
「――――だったらそんな死にそうな顔をするな!」
「死にそうな顔じゃなくて眠そうな顔だろう? ロードホラ、来るぞ」
ファンタを地面に降ろし、向かってくるマスコット族を、
「軌道読み!」
進行方向と攻撃方法を見て躱しに行くロード。
その時、軌道読みを解かなくて正解だった。また別方向からマスコットがおもちゃの剣を持って襲い掛かって来た。
ロードはそれを軽く躱す。
「ミラクルさん、ここは危ない避難してくれ」
ロードが言う。
「わかりました。くれぐれもお気を付けを……私は皆さまを呼んできます」
タタタタタッと走っていくミラクルさん。
その時ロードは見た。マスコットの山から這い出るように出てきて、次々と立ち上がる様々なマスコット族を、片耳がもがれたウサギ、ドングリを頬袋にため込んだリス、帽子を被ったアヒル、ピョンピョン跳ねる犬のマスコット達だ。
「ロード、オレすぐ起きるから、持ちこたえてくれ……相手は大魔王クラス」
「ああ、わかった」
ロードがファンタを寝かしつける。
「そいつはもう起きない」
大魔王らしきマスコットが言う。
「何せこれから永遠に悪夢を見るのだから」
クシシと笑うマスコットが言う。
「ファンタに何をした?」
ロードが両越しに提げていた剣を鞘から引き抜く。一方は赤い剣、もう一方は青い剣。
「おもちゃの剣に大人しく刺されろ! そうすれば何が起きてるか分かるぞ」
またもマスコットの山の上から三眼の宇宙人的なマスコットが現れた。
「ネガティブランドを作ったのはお前たちか?」
「あんなのここの従業員が作ったに決まってるじゃないか」
「お前たちは一体何なんだ」
「大魔王ワタグルミ……悪夢を見せるいたずらっ子だ」
ロードたちと複数の大魔王ワタグルミの戦いが始まる。
正確には隙を突かれて背後から胸に貫通する。
「――――!?」
あまりに唐突な攻撃だったためかわしようがなかった。
「ファンタ、大丈夫か!」
おもちゃの剣はファンタから抜き去られ傷の心配をするロード。
「大丈夫だ! 盛大に血しぶきをあげるかと思ったが、出血もなけりゃ傷口もない!」
ファンタはおもちゃの剣に確かに刺さった痕をまさぐっていた。
この時、
(剣は確かに刺さった)
(なのに傷口が無いのはどういうことだ)
(いやそれ以前にマスコット族がなぜオレを襲う?)
(敵意も悪意も感じられなかった)
(闘気も殺気も感じられなかった)
(今日、ロードたちと再会できて浮かれてたか?)
(いや違う、オレが死角とはいえ攻撃を察知できないはずがない)
(マスコット族はロードが取り押さえた訊いてみるか)
ファンタが歩み出す。
ロードはじたばたするマスコット族の傷だらけのクマを取り押さえていた。
「どうしてオレに攻撃してきた?」
ファンタは率直に訊いてみる。
「ギャーーーーワーーーー!」
まともに会話も出来ない。
「んーーこのマスコットうちの従業員ではないのかもしれません」
ネガティブランドのオーナー、ハムスターのマスコットのミラクルさんが言う。
「「――――!!!?」」
二人は直後に驚いた。何と抑えつけていたマスコットが小さなぬいぐるみに姿を変え、歪な口とホラー的な目をした魔物に変わっていく。先ほどファンタが切り裂いた魔物と同じ姿をしていた。
「やーーいやーーい! 刺さったな! メアの剣に、もうお前はオレのおもちゃだ! ハハハハハ!」
不愉快極まりない口調の魔物だった。
ファンタは瞬間的に抜剣し、自称大魔王のワタグルミを切り裂いた。今度は霧散化が始まるまで切り裂き続ける。
「うわーーーー! うぎゃーーーー! いてーーーー!」
そのうるさい口もファンタは切り裂いた。それでも霧散化は始まらない。
(何だ? 霧散化しないのか? ひょっとして本物のマスコット族じゃないよな?)
ロードは不安がるが、ファンタは容赦なく切り刻んで行く。
その時、ファンタは膝から崩れ落ちた。ドクンという心臓の音を響かせて、
「――――!?」
ファンタを襲ったのは強い眠気だった。
「悪夢を見ろ!」
今度は最初に切った魔王が言って来た。いつの間にか斬られた身体が元通りになっている。
(どういうことだ? こいつさっきファンタが斬った。魔物じゃないかどうして元の姿に戻っている?)
ロードはその秘密を知る為、切り刻まれたもう一体の魔王を見る。すると、飛び散った綿が集まり、絹を張り合わせ、糸が縫い込んで行き、ツギハギだらけの魔王が元通りになった。
「ファンタさん! ファンタさん!」
倒れてしまったファンタをミラクルさんが呼び続ける。
「ロードさん! ファンタさんの様子がおかしいです!」
「――ファンタ! オイしっかりしろーー! まさか死ぬつもりじゃないよな!」
「馬鹿野郎……オレには夢がある。そいつを叶えるまでは死なないさ」
「――――だったらそんな死にそうな顔をするな!」
「死にそうな顔じゃなくて眠そうな顔だろう? ロードホラ、来るぞ」
ファンタを地面に降ろし、向かってくるマスコット族を、
「軌道読み!」
進行方向と攻撃方法を見て躱しに行くロード。
その時、軌道読みを解かなくて正解だった。また別方向からマスコットがおもちゃの剣を持って襲い掛かって来た。
ロードはそれを軽く躱す。
「ミラクルさん、ここは危ない避難してくれ」
ロードが言う。
「わかりました。くれぐれもお気を付けを……私は皆さまを呼んできます」
タタタタタッと走っていくミラクルさん。
その時ロードは見た。マスコットの山から這い出るように出てきて、次々と立ち上がる様々なマスコット族を、片耳がもがれたウサギ、ドングリを頬袋にため込んだリス、帽子を被ったアヒル、ピョンピョン跳ねる犬のマスコット達だ。
「ロード、オレすぐ起きるから、持ちこたえてくれ……相手は大魔王クラス」
「ああ、わかった」
ロードがファンタを寝かしつける。
「そいつはもう起きない」
大魔王らしきマスコットが言う。
「何せこれから永遠に悪夢を見るのだから」
クシシと笑うマスコットが言う。
「ファンタに何をした?」
ロードが両越しに提げていた剣を鞘から引き抜く。一方は赤い剣、もう一方は青い剣。
「おもちゃの剣に大人しく刺されろ! そうすれば何が起きてるか分かるぞ」
またもマスコットの山の上から三眼の宇宙人的なマスコットが現れた。
「ネガティブランドを作ったのはお前たちか?」
「あんなのここの従業員が作ったに決まってるじゃないか」
「お前たちは一体何なんだ」
「大魔王ワタグルミ……悪夢を見せるいたずらっ子だ」
ロードたちと複数の大魔王ワタグルミの戦いが始まる。
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