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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える

第655話 マスコット族のチャンピオン

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 ネガティブランド・迷路の外側。

 ブケンとティベンスはダウジングの反応を追いかけた。

 反応する光が段々と点滅スピードが速くなる。

「気を付けろ、魔王は直前だ」

 ティベンスが声を掛ける。

「魔王か……腕がなる」

 ブケンは気合十分だった。

 ティベンスとブケンが迷路の外側の壁際を曲がったところで驚くものを見た。

 それはマスコット族の倒れていた現場だった。積み重なって山になっているのがわかる。

「何だこれは……生きているのか?」

 ティベンスが下の方でぜぇぜぇ言っているマスコット達を見て言う。

「とにかく山を崩そう。このままでは下の者が窒息死と圧死してしまうぞ」

 ブケンがマスコット達を引き抜いていく。いわゆる救助活動をしていた。

 その時、

「ん~~~~オレチンの積み上げた山を崩そうとするのは誰なのかな~~?」

 マスコット族の山の頂上で拳を掲げて決めポーズしていたマスコットがいた。正確にはマスコットに見えた。

「誰だ!? お前は!?」

 ティベンスが調子に乗った声に問いかける。

「お前がこのマスコット達を気絶させたのか!?」

 負けずと声を張り上げるブケン。

「ん~~~~その通り~~だってゴールしたマスコット達に悪夢と絶望を見せるのがオレチンの仕事だもん」

 マスコットの山から下りてくるのは、キザで鋭い目つきをした2本の角仮面に四本の腕を伸ばし大きな拳にはボクシングようのグローブが付いていた魔物だった。

「反応が強い! お前魔物か!?」

 ティベンスが訊く。

「ん~~~~ここはただの魔物というより眷属使魔って言った方が絶望は強いかな?」

 ぐぇ、ぐぇっとマスコット達は踏まれて呻いていく。

 ティベンスがダウジングを仕舞い込む。

「もったえ付けずにジャンプして降りてきたらどうだ?」

 ブケンは既に戦闘態勢に入っていた。

「ん~~オレチン魔王様以外に指図されるのはイヤだけど~~ここは提案に乗っておくべきか」

 その瞬間、眷属使魔はブケンに対して突撃してきた。しかも殴りかかるそぶりを見せ右ストレートが飛んで来る。

「衝撃流――地ならし!」

 ブケンは足で地面を踏みつけて下から上へと衝撃波を生み、近づいてくる眷属使魔を吹っ飛ばした。

 差し詰め噴水が水しぶきを上げるように空気の壁が出来た。

「うおっと!」

 眷属使魔はマスコットの山をクッションに衝撃波にぶつかったダメージを最小限に抑えた。

「ん~~~~一応名前を聞いておこうか」

「ブケン!」

 拳法の構えを取るブケン。

「ティベンス!」

 こちらもいつでも能力を発揮する素振りのティベンス。

「ブケンとティベンス、二人共悪夢見てる。だってこのオレチン、眷属使魔のワンパンを相手にしようとしているんだから」

 仕切り直しにマスコットの山の上から地面に着地するワンパン。

「ワンパンチ!」

 ワンパンはブケンに対して拳を振り被って来た。

「衝撃流――一石拳!!」

 ブケンはその拳に合わせて衝撃波を纏った拳を振り被っていく。

 そしてワンパンの拳とブケンの拳がぶつかり合う寸前異変が起きた。

 ワンパンの拳がブケンの拳に当たらなかった。それは衝撃波でワンパンの拳を抑えたからだ。

 この時、
(続けざまに二撃目を――)
 ブケンは考えていたが、

「ワンパンチ!」

 もう一つの右拳がブケンを襲う。当たったか箇所は肋骨あたりだった。

 そしてものすごい勢いで吹っ飛ばされ、迷路の木片の壁を何枚も割り、数十メートル先で勢いが殺され、壁に背中から激突する。

「がはっ!」

 この時、ブケンは吐血した。

「ブケン! このヤローー!」

 ティベンスが手で四角形の形を作り、見えない壁を出してワンパンの四方を囲んでいた。

 この時、ワンパンは見えない壁にぶつかっていた。そして身動きが取れないでいた。

「このまま圧殺してやる」

 四方の壁がどんどん狭まっていくのがわかったワンパンは、

「ワンパンチ!」

 この拳の一撃でティベンスの壁は粉砕された。

 この時、
(バカな、1メートルの壁で10の硬度だぞ!?)
 ティベンスは驚いていた。

「ワンパンチ!」

「壁張り!」

 刹那の時間、間一髪でワンパンの必殺の拳を壁でガードしたティベンスだったが、破壊され迷路の壁をぶち破って吹っ飛ばされて行った。

「ん~~~~オレチン今日もいい感じ」

 ブケンのところまで飛んできたティベンス。

「お前の壁が壊されたところを見たぞ」

「いや~~こんな力は初めてだ。絶対の自信があったオレの防壁を拳一つで破壊する力」

「ただの力ならオレの肋骨が折れた程度じゃ済まない。何かしらの特別な力だ」

「だとしたらなんでも砕く拳とか?」

「拳の秘宝玉ってところか……」

 ブケンとティベンスは目の前の敵に脅威を感じていた。
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