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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える

第649話 グラスも木の葉の助もびっくりな能力

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 ネガティブランド・ジェットコースター前。

 階段では相変わらずマスコット族たちが休んでいた。

 そしてその倒れている中の一体に、木の葉の助が持つダウジングが反応していた。

「間違いない……こやつでござる。こやつが魔王でござる」

 フルフル震える木の葉の助の腕、そして広がって探知するダウジング。

 その魔物は眠っていた。大きな胴体に大きな単眼とまつ毛があり、平たい腕と平たい尻尾があった。

「なんだ? こいつが魔王なのか……他のマスコットと代わり映えしないような姿じゃねーか」

 グラスが寝ている魔物を覗き込む。

「油断は禁物でござるよ。グラス殿、いかような攻撃をしてくるか分からぬでござる」

「寝てんだろ……その隙に十六夜で突けばいいだけじゃねーか」

 グラスが手刀を構えて、魔物に近づく。そして必殺の手刀で魔物を貫こうとした時、

 その時だった――――魔物の目が見開いた。

 魔物はすぐさま尻尾を階段に打ち付けて上段へ上がる。

 グラスの手刀は空気を斬った。

「チッ、起きやがったか、めんどくせー」

 この時、
(突然目を覚ましたでござる。グラス殿の殺気を感じたのでござろうか)
 木の葉の助は思っていた。

「何者だ……せっかく目を休めていたのに見開いては空気に擦れて傷が付こう」

 魔物が口もなく話しかけてくる。

「お前は魔王か?」

「魔王ではない我が名はゴゴロメ、魔王様の眷属使魔だ」

「はっ、眷属使魔、雑魚に用はねーさっさと消えてもらうぜ!」

 グラスが糸付きの短剣を投げた。するとゴゴロメはそれを避けた。

 しかしジェットコースター内の器具に巻き付かれた短剣を利用し、グラスが猛スピードで移動した。

 まるでジャングルのツタでターザンするかのように、蹴りをお見舞いしようとする。

 だがゴゴロメはまたも尻尾を階段に打ち付け上段に上がる。

 これでグラスとゴゴロメは同じジェットコースター乗り場へと到達した。

 その時、グラスは下の階を見た。木の葉の助が何をしているか見たかったのだ。

 当然、彼の姿はない。透明の秘宝玉で身体を透明にして見えないようにしているのだ。

 この時、
(秘宝玉ってのはやっぱり便利だ。この野郎も俺みたいにやられる)
 グラスは囮としてゴゴロメを引き付けた。

 一方木の葉の助は、
(手裏剣ではダメでござる)
(せっかくグラス殿が囮として引き付けているのだから)
(一撃の元に倒さなくては――)
(息を殺し、足音を殺し、心臓の音を殺し、近づいて行く)
(そしてアビリティ―アクセサリー発動!)
 この思いと同時に木の葉の助の手に大型の手裏剣が姿を現す。とても重そうで木の葉の助の胴体を隠すほどに大きかった。
(手に触れたものは透明に)
(慎重に近づいてこいつで刺し倒す)
 これが木の葉の助の戦い方だった。

 相手に気づかれず、ゆっくり移動し的確に魔物を倒す。

 すなわち急所を狙うのだ。

 木の葉の助がゆっくり近づく中、グラスとゴゴロメは、短剣と爪のぶつかり合う甲高い音を放っていた。

「何だ? それだけしかできないのか? こっちは両手に短剣2本だぜ、本気を出すまでもねーな」

 グラスなりの陽動作戦だった。木の葉の助の殺気を自分の殺気で上書きし、相手の意識を集中させる。

「そう急かすでない。寝起きの準備運動だ。本番はここからだ」

 そう言うとゴゴロメは目を閉じた。そして開く。

「――――!?」

 目から閃光とも思わしきビームが放たれた。

 すかさず、木の葉の助がいる階段とは別のジェットコースターに身を乗り出した。

 この時、
(瞬足靴を履いていたから逃げ切れたか)
(あの目、閉じて開くとかかしヤローの妹と同じパターンの攻撃が出来るようだな)
(けれど威力は歴然とした差がある)
 グラスは鉄の焼け焦げた場所を見てそう思った。

 そしてゴゴロメは再び目を閉じていた。

 この時、
(また来るか――)
 グラスは座席に隠れてビームをやり過ごそうとしていた。

 しかし、実際はそうではなかった。

「――がはっ!」

 木の葉の助が階段から転げ落ちていくのだった。

 ゴゴロメの攻撃は極めて単純だった。尻尾を振って相手に打撃を与える。ただそれだけだった。そして足を滑らした木の葉の助が落ちて行っただけだった。

 この時、
(見えねーはずだ。音も聞こえなかった)
(なのにスケの助はやられた)
 グラスは一つの回答に辿り着いた。

「テメー、見えてやがるのか……」

「心眼の秘宝玉、いかなる見えない攻撃や姿でも心の目がそれを捉える。恐らく透明か何かの秘宝玉だろう相性が悪い。このゴゴロメ一度起きれば寝つきは悪いからな。覚悟せよ人間共」

 ゴゴロメはグラスと透明から解かれた木の葉の助を見て言う。

 この時、
(心眼の秘宝玉か……)
 グラスは敵への警戒を上げた。

「上等じゃねーの。憂さ晴らしには丁度いいぜ」

 グラスは口角を吊り上げた。
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