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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える

第633話 偶然の再会ファンタ・ハイロー

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 ネガティブランド・飲食店の並ぶ広場。

「ファ、ファンタ?」

 ミハニーツが暗がりの道から出て来たロードたちと同い年の風貌の男に言った。

「ん? オレを知ってるのか? 観光客にまで名前が知れるようになったか……オレも有名になったもんだ」

「ファンタ?」

 ロードが言う。

 その者はサラサラヘアーな茶髪に、短く切りそろえられた乱れた髪はオシャレで、その衣装は幾多の冒険を経験したように痛んでいた。

「そうさ、俺こそ、いつの日か全異世界に名前が轟くファンタ・ハイローだ。最魔の元凶を倒す勇者だ。覚えておいてくれ。そして噂を流してくれ、勇者ファンタのことを……」

 ファンタは格好つけるようにポーズを決めた。

「ファンタって、ロードの義理の家族の一人だよな?」

 ハズレが訊いてきた。

「いや、オレの知るファンタとは違うかも……」

 その時、ミハニーツが剣を抜いて、ファンタに斬りかかった。

 ガキン!! ファンタはミハニーツの剣に反応し、自分の剣を抜いて抑え込んだ。

 両者の剣戟が周りのパラソルや円卓テーブル、椅子を吹き散らす。

 ロードはその余波に耐えたが、ハズレたちは二、三歩さがらされる。

「なんだ? この剣戟の重みは人間の力に驚いたのは始め――――――!!!?」

 その時ファンタは驚いた。

「久しぶり、ファンタ」

 ミハニーツが剣を押し込む。

「ミ、ミハニーツ!!!?」

 ファンタは信じられない者を見るような声で言った。

「お前、今までどこで何してたんだよ! 皆心配してたんだからな!」

「魔王達に復讐しに行っただけだから、それより私の後ろを見て!」

 ミハニーツの力が上なのかファンタは剣の押し込みに後ろへ二歩、三歩と後ろへ下がていく。

 そしてファンタは見た。ミハニーツの後ろにいたハズレたちの顔を、そして知り合いとわからずに見るロードの顔を、

「アレがお前のパーティメンバーか?」

「違う。よく金髪の人の顔を見て……」

「暗がりなのによく見えるか!」

「ロード、ロードの顔、生きてた。ロードは生きてた!」

 ミハニーツが叫ぶ。

「――――!!!? ロードって、あのロードか!?」

 ファンタがロードを見る。

「確かに雰囲気は似てるが本物か? ドッペルゲンガーとかじゃないよな?」

「私がロードの顔を忘れると思う?」

「いやだって、十年だぞ! 約十年も行方不明だったんだぞ! 死んでるかもって皆で散々話したじゃないか!?」

「生きてたの! ホラ、近づいてよく見て! 本物のロードを! 私たちの家族を!」

 ミハニーツの必死の報告に、ファンタは疑いを捨てロードと言われる者に近づいて行く。

「ロードか?」

「ああ、ファンタなのか?」

「そうだ、ファンタだ…………」

 ファンタは見た。両腰に提げられた赤い剣と青い剣を、

「その二つの剣、どう使うんだ?」

「双剣のように使う」

「ロードだ!」

 ファンタが確信した。

「ファンタなのか?」

「そうだよファンタだよ! よかった生きてたんだなぁ! もう死んでるとばかりに思ってたぞ!」

 ファンタがロードを抱きしめる。そして泣いている。

「ホントにファンタか? 随分泣き虫になったじゃないか……」

「バッカ! うれし涙だって! 始めて嬉しさで泣いたぞ!」

 ロードとファンタは再会した。

「ロード、その人が……」

 スワンが近づいてくる。

「ああ、オレの義理の家族ファンタだよ」

「彼女さんか? キレイな人だ……」

「違うから……」

 ロードはスワンを紹介して、ハズレ、グラス、ドノミ、ブケンを紹介した。

「皆、よろしくオレは勇者ファンタだ。気軽にファンタと呼んでくれ」

「よろしくファンタ、オレはロードの相談役ハズレだ」

「私は飲料店ホワイトポッポの社長スワン、ロードの上司」

「私はお尋ね者の元管理局の人間ドノミです」

「オレは最強を目指す者ブケン」

「ちっ」

 グラスだけは舌打ちした。

「お前の名前は何だ? 仲よくしようぜ」

 ファンタが握手を求めてくる。

「グラスだ、あんまり近づくなよ」

 グラスは握力をめいっぱい込めたが、ファンタは平気な顔で、

「よろしく皆……俺たちのロードが世話になった」

 ファンタたちの自己紹介が終わった。
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