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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える

第632話 ロードの好きなタイプは……

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 ロードとスワンは二人きりでゴンドラに乗っていた。

 丁度観覧車のてっぺんあたりだ。

「ロード、あなたの好きな人を教えて……」

 スワンは景色を楽しむロードに直球で訊いた。

「スワン?」

 ロードが景色から目を離す。

「この際だからはっきりさせたい。ロード好きなタイプでもいいから教えて……」

「好きな人って友達の方か? それとも恋愛の方か?」

 ロードがゴンドラのソファーに座り込み、スワンの目を見て訊く。

「恋愛の方……」

「……どうしてそんなことを訊く?」

「興味があるから……」

 スワンは真剣だった。とても茶化したり、からかったりしようとは感じない。

「オレの好きな人か……恋愛対象ならいないな」

「本当に? 私やドノミさんには何も感じない? 目を合わせると緊張するとか、どうしても目線がそっちに行くとか、身体が熱くなるとか」

「いいや、そういう恋愛感情を感じたことはない。皆オレの友達だ」

「じゃあ、ミハニーツさんはどう? 彼女は義理の姉弟みたいだけど、ずっと一緒に暮らして来たんでしょ? 何も感じない?」

「ミハニーツか……確かに気にはなるが恋愛感情じゃない。どうやってあそこまで強くなれたのかの方が気になるな」

「そう」

 スワンは本心が聞けてホッとした。ならばと話題を切り替える。

「じゃあ、好きなタイプは? こういう女の子が好きとかある?」

「ん? ん~~~~~~」

「優しい子とか、元気な子とか、楽しい子とか」

「そうだなぁ~~しいて言うなら、一人でも頑張る強い子かなぁ~~」

 ロードは答えを出した。

「だったらミハニーツさんがいいと思う」

「どういうことだ?」

「彼女はずっとロードの仇である魔王達と一人で戦って来た。一人で頑張って来た。ロードの好きなタイプにも当てはまるし付き合っちゃえば?」

 スワンは押して来る。

「ミハニーツが一人で頑張って来たか」

 ロードは想像してみる。ミハニーツの魔王達と戦っている姿を、そして――

「何も感じない」

「どうして? 好きなタイプには一致するけれど?」

「分からない。けれど恋愛感情を抱くほどじゃない。オレがずっとその姿を見ていないからかもしれない」

「そっか~~」

 スワンは脱力した。

「そんなことを訊いてどうするつもりだったんだ?」

「ロードとミハニーツさんを恋人同士にしたかっただけ」

「ふ~~~~ん、って!? えっ!?」

「ロードの気持ちはよく分かった。だったら私はミハニーツさんのことをもっとよく知ってもらうために、あの人をホワイトポッポのオーナーとして雇いたい。ロードはこの意見に賛成?」

「別にいいぞ。賑やかになるのは好きだし、ただ恋愛感情を持つかと言われればまだ分からない」

「これから知って行けばいいよ」

 スワンが言い終わると外の景色を眺めていた。

「じゃあこの話はお仕舞い。これからのホワイトポッポの経営方針についてはなそう?」

(あとはこれからの二人に任せよう)
(ミハニーツさんが押すだけじゃ足りない)
(頑張ってる姿を見せなくちゃ)
(ミハニーツさんはこの話に乗ってくれるかなぁ)
(不安だなぁ)
 スワンの訊きたいことは聞けた。

 話しが終わったことでロードは再び景色を見る。スワンもつられて景色を見た。

(このテーマパーク内のどこかに魔王が……)

 ロードの目は凛々しくなっていく。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 数十分後。

 観覧車から全員が降りる。

「ハズレ~~どういうつもり~~」

 スワンが怒っていた。

「楽しかっただろ?」

「普通!」

「わかったわかった、オレが悪かったって」

 ハズレが弁明する。一方。

「ドノミ、楽しい時間をありがとう」

「いえいえこちらこそ、色々な貴重な話をありがとうございました」

 ドノミとミハニーツが楽しそうに話していた。

「――!? ねぇちょっとあの二人、いつからあんなに仲良くなったわけ?」

 ヒソヒソとハズレと話すスワン。

「オレが知るわけないだろ」

「とにかくこれからは協力して」

「考えておくよ」

 ハズレは目線をロードたちに向ける。

「いい景色だったよな」

 ロードが言う。

「「興味ない」」

 ブケンとハズレの意見は一致していた。

「じゃあ、そろそろお昼時だし何か食べようよ」

 ブサイクコアラが提案し、

「「「賛成」」」

 皆で食事を取ることにした。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ネガティブランド・飲食店広場。

「ここで悪夢と絶望の料理を楽しんでもらうよ」

 ブサイクコアラが不吉なことを言う。

「楽しみだ」

 ロードが言う。

 この時、
(いやな予感しかしない)
 スワンは思った。

 その時だった。

「何か来る!」

 ミハニーツが剣に手をそえた。それは戦闘態勢の構え。

「魔王でもお出ましか?」

 グラスが言う。

「ここでの乱闘は少し避けたいところだが」

 ブケンが言う。

「何も気配は感じないけど……」

 ハズレが言う。

「ミハニーツさん程の勇者が言うんです。それなりの強者がいるのでしょう」

 ドノミも警戒する。

 そして――――ロードたちとは別方向から来た。ご一行がこちらを見た。

「何だ観光客がまだいたのか……」

 茶髪の男がそう言うと、

「――――!?」

 ミハニーツは驚いた。

「誰だろう……」

 ロードは気が付かなかった。何せ約10年ぶりの再会だ。

「ファ、ファンタ?」

 ミハニーツはその男の名前を呼んでいた。
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