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第十三章 悪夢と絶望を夢と希望で乗り越える
第622話 最後の砦ホーウッドでのお別れ
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最後の砦ホーウッド・宿屋。
ロードたちはアップが消えてからのここ一週間、ホーウッドで過ごしていた。
それは陽光が窓から差す宿屋での朝だった。
寝巻から軽装ない服に着替えるロード。靴下を履き、最後に新品の靴を履き、ひもで縛る。
旅立ちの朝だと誰もがそう思える行動だった。
「いよいよだね」
声を掛けて来たのは期待に胸膨らませるハズレだった。
「ああ、旅立ちの日だ。グラス、ブケン、用意はいいか?」
ロードがそっちに目をやる。
「見たらわかんだろう……」
適当に緑色の軽装で固めたグラスが言う。
「朝の体操も終わった、いつでも出られるぞ!」
寝起きなのにはきはきした声のブケン、彼の健康状態が良好であると頷ける。
木づくりの部屋に四人分のベット、ロードたちは今までここで寝泊まりをしていた。
(アップ……行こうな)
胸に手を当てて亡き妹に挨拶する。
「よし、部屋から出よう」
ロードの言葉で一同が廊下へ出る。
「世話になったな」
ロードは最後、今までお世話になった部屋との別れを告げた。
バタンと扉を閉める音がする。ガチャリと鍵を閉める音がする。
ロードたちは女子部屋の方に行くことなく宿屋ロビーで女子たちが出てくるのを待とうとして、階段から下る。
◆ ◆ ◆ ◆
ホーウッド・宿屋・ロビー。
ロビーは植物を模した構想で飾り付けられていた。作り物の木々や葉っぱ、花に香水までまるで小さな植物園にいるかのようだった。
ロードは部屋の鍵をオーナーさんに返した。
ロードたちはロビーの開いているテーブルに着き、水を嗜んでいた。
ロビーは他にも土木や大工の作業着を着た人で満席だった。
そして水をすすること30分後。
▼ ▼ ▼
「おはよう」
スワンが階段から降りてきて挨拶をして来た。
「「おはよう」」
挨拶に応じたのはロードとハズレだった。
「おはようございます」
ドノミが規律正しい口調で言う。
「やぁやぁ! おはようおはよう!」
お気楽な調子で降りてきたのは赤い髪をポニーテールにしたシルベだった。
「……………………」
一人無口と足音を消して階段から降りてくるミハニーツもいた。しかし、
「ロードおはよう」
ロードの元へ来るとミハニーツはロードにだけ挨拶をしていた。
「ああ、おはよう」
ロードは挨拶に答えた。
スワンがオーナーに宿屋の鍵を返したところだった。
「グラスとブケンは挨拶なしなの~~?」
「うるせーメルヘン女」
相変わらず悪態をつくグラス。
「これがオレなりの挨拶だ」
拳と手のひらを合わせるしぐさをするブケン。
「おはようって言うだけだよね?」
「私に圧を飛ばされても困るんですが……」
スワンとドノミがそんな会話をした。
ロードが全員集まったか数えていると、
「よし、全員いるな。荷物の忘れものとかはないか?」
ロードが最終確認をした。
それぞれ自分の荷物をチェックする。
「うん! 忘れ物はない」
スワンが確認し終わり言う。
「こっちもさ、さぁロード掛け声を……」
ハズレがロードの言葉を待つ。
「それじゃ、挨拶に行こう」
ロードたちが宿屋から出ようとしたその時、
「水ぐらい飲ませてよ」
シルベがだらしなく言う。
「それもそう」
スワンも賛成し、少しだけロビーで世間話に花咲かせた。
◆ ◆ ◆ ◆
最後の砦・ホーウッド・教会。
宿屋のロビーでの朝食めいたものを済ませたロードたちは、お世話になったシスター・クレアとランラ大英雄に挨拶しに来ていた。
「そうですか……旅立たれるのですね。色々とありがとうございました」
「シスター、もうそれ100回くらい聞いてますよ」
ロードがほほ笑む。
「それは失礼いたしました。では皆さんに神の御加護があらんことを祈ります」
シスター・クレアはその場でお祈りを始めた。
「お爺さんはこれからどうするのさ」
興味本位にハズレが訊いていた。
「この地は我が故郷、自分の墓も用意しておる。最後の余生はここで過ごすつもりじゃよ」
ランラがきつめの冗談を言った。
「それではオレたちはこれで……」
ロードが踵を返そうとした時、
「待ちなさいお若いの……」
「? 何ですか、ランラさん……?」
「妹さんの件では済まないことをした。本当に本当に……」
「仕方ないです。兄のオレですら敵扱いしてましたから……」
「そうか……しかし、よくぞ無事に帰って来た。主ならきっと良い勇者とやらなれるじゃろう」
「ありがとうございます」
ロードが礼儀正しいお辞儀をした。
「では幸運を……」
シスター・クレアは皆に神の御加護をかけて教会の入り口でお別れした。
▼ ▼ ▼
最後の砦・ホーウッド・教会前。
「じゃあ、あたしもこの辺で……」
「シルベさんもここでお別れか?」
「うん何だか無性に故郷に帰りたくなったんだよね……親の顔が見たいと言うか、ひとえにホームシック? 戦場に長くいすぎたせいかもしれない」
「わかった。シルベさん。助けてくれてありがとう」
「キミ、シスターの事言えないよ。もう100回くらい聞いてる」
そうして杖を持ったシルベは、召喚陣を足元に描き、
「さようなら」
その一言で消えて行った。
「さて、次はオレたちの番だ……」
ロードが懐にしまっていた境界破りの鍵を使う。
鍵を宙でひねるとガチャリと音を出して目の前に大きな扉が現れた。
「これがロードたちの異世界への渡り方……」
呆然と立ち尽くすミハニーツ。
荷船を引くドルフィーナを先頭にロードたちはそれぞれこの異世界に別れを告げる。
「さぁ、行こう。ミハニーツ」
手を差し伸べるロード。
「う、うん」
恥ずかしそうにその手を取るミハニーツ。
やがて全員が扉の向こう側に入り、扉はガコンと音を立てて閉じて行った。
ロードたち御一行は最後の砦・ホーウッドから別の異世界に転移する。
ロードたちはアップが消えてからのここ一週間、ホーウッドで過ごしていた。
それは陽光が窓から差す宿屋での朝だった。
寝巻から軽装ない服に着替えるロード。靴下を履き、最後に新品の靴を履き、ひもで縛る。
旅立ちの朝だと誰もがそう思える行動だった。
「いよいよだね」
声を掛けて来たのは期待に胸膨らませるハズレだった。
「ああ、旅立ちの日だ。グラス、ブケン、用意はいいか?」
ロードがそっちに目をやる。
「見たらわかんだろう……」
適当に緑色の軽装で固めたグラスが言う。
「朝の体操も終わった、いつでも出られるぞ!」
寝起きなのにはきはきした声のブケン、彼の健康状態が良好であると頷ける。
木づくりの部屋に四人分のベット、ロードたちは今までここで寝泊まりをしていた。
(アップ……行こうな)
胸に手を当てて亡き妹に挨拶する。
「よし、部屋から出よう」
ロードの言葉で一同が廊下へ出る。
「世話になったな」
ロードは最後、今までお世話になった部屋との別れを告げた。
バタンと扉を閉める音がする。ガチャリと鍵を閉める音がする。
ロードたちは女子部屋の方に行くことなく宿屋ロビーで女子たちが出てくるのを待とうとして、階段から下る。
◆ ◆ ◆ ◆
ホーウッド・宿屋・ロビー。
ロビーは植物を模した構想で飾り付けられていた。作り物の木々や葉っぱ、花に香水までまるで小さな植物園にいるかのようだった。
ロードは部屋の鍵をオーナーさんに返した。
ロードたちはロビーの開いているテーブルに着き、水を嗜んでいた。
ロビーは他にも土木や大工の作業着を着た人で満席だった。
そして水をすすること30分後。
▼ ▼ ▼
「おはよう」
スワンが階段から降りてきて挨拶をして来た。
「「おはよう」」
挨拶に応じたのはロードとハズレだった。
「おはようございます」
ドノミが規律正しい口調で言う。
「やぁやぁ! おはようおはよう!」
お気楽な調子で降りてきたのは赤い髪をポニーテールにしたシルベだった。
「……………………」
一人無口と足音を消して階段から降りてくるミハニーツもいた。しかし、
「ロードおはよう」
ロードの元へ来るとミハニーツはロードにだけ挨拶をしていた。
「ああ、おはよう」
ロードは挨拶に答えた。
スワンがオーナーに宿屋の鍵を返したところだった。
「グラスとブケンは挨拶なしなの~~?」
「うるせーメルヘン女」
相変わらず悪態をつくグラス。
「これがオレなりの挨拶だ」
拳と手のひらを合わせるしぐさをするブケン。
「おはようって言うだけだよね?」
「私に圧を飛ばされても困るんですが……」
スワンとドノミがそんな会話をした。
ロードが全員集まったか数えていると、
「よし、全員いるな。荷物の忘れものとかはないか?」
ロードが最終確認をした。
それぞれ自分の荷物をチェックする。
「うん! 忘れ物はない」
スワンが確認し終わり言う。
「こっちもさ、さぁロード掛け声を……」
ハズレがロードの言葉を待つ。
「それじゃ、挨拶に行こう」
ロードたちが宿屋から出ようとしたその時、
「水ぐらい飲ませてよ」
シルベがだらしなく言う。
「それもそう」
スワンも賛成し、少しだけロビーで世間話に花咲かせた。
◆ ◆ ◆ ◆
最後の砦・ホーウッド・教会。
宿屋のロビーでの朝食めいたものを済ませたロードたちは、お世話になったシスター・クレアとランラ大英雄に挨拶しに来ていた。
「そうですか……旅立たれるのですね。色々とありがとうございました」
「シスター、もうそれ100回くらい聞いてますよ」
ロードがほほ笑む。
「それは失礼いたしました。では皆さんに神の御加護があらんことを祈ります」
シスター・クレアはその場でお祈りを始めた。
「お爺さんはこれからどうするのさ」
興味本位にハズレが訊いていた。
「この地は我が故郷、自分の墓も用意しておる。最後の余生はここで過ごすつもりじゃよ」
ランラがきつめの冗談を言った。
「それではオレたちはこれで……」
ロードが踵を返そうとした時、
「待ちなさいお若いの……」
「? 何ですか、ランラさん……?」
「妹さんの件では済まないことをした。本当に本当に……」
「仕方ないです。兄のオレですら敵扱いしてましたから……」
「そうか……しかし、よくぞ無事に帰って来た。主ならきっと良い勇者とやらなれるじゃろう」
「ありがとうございます」
ロードが礼儀正しいお辞儀をした。
「では幸運を……」
シスター・クレアは皆に神の御加護をかけて教会の入り口でお別れした。
▼ ▼ ▼
最後の砦・ホーウッド・教会前。
「じゃあ、あたしもこの辺で……」
「シルベさんもここでお別れか?」
「うん何だか無性に故郷に帰りたくなったんだよね……親の顔が見たいと言うか、ひとえにホームシック? 戦場に長くいすぎたせいかもしれない」
「わかった。シルベさん。助けてくれてありがとう」
「キミ、シスターの事言えないよ。もう100回くらい聞いてる」
そうして杖を持ったシルベは、召喚陣を足元に描き、
「さようなら」
その一言で消えて行った。
「さて、次はオレたちの番だ……」
ロードが懐にしまっていた境界破りの鍵を使う。
鍵を宙でひねるとガチャリと音を出して目の前に大きな扉が現れた。
「これがロードたちの異世界への渡り方……」
呆然と立ち尽くすミハニーツ。
荷船を引くドルフィーナを先頭にロードたちはそれぞれこの異世界に別れを告げる。
「さぁ、行こう。ミハニーツ」
手を差し伸べるロード。
「う、うん」
恥ずかしそうにその手を取るミハニーツ。
やがて全員が扉の向こう側に入り、扉はガコンと音を立てて閉じて行った。
ロードたち御一行は最後の砦・ホーウッドから別の異世界に転移する。
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