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第十二章 明かされし衝撃の事実と兄妹愛

第619話 皆で楽しむ盆踊り

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 ロードたちは山のような景品を抱えて屋台の並び立つ大通りを歩く。

 荷物は主にグラスとブケンが持っていた。景品の中には大きなぬいぐるみもある。

 そしてアップは首にカメラを提げていた。

「使わないのか?」

 ロードが訊く。

「人が多いから使いたくない」

 アップの人見知りも問題だった。

 その時、和楽器による音楽が聞こえて来た。

 三味線の音、太鼓の音、横笛の音。

「あっ! この音もしかしたら盆踊りの音楽かもしれません! 行ってみましょう」

 ドノミがついて来るように急ぎ足で進んで行く。

 人ごみの中必死に見失わないように歩く自分たちの立場にもなってくれとブケンとグラスは思う。

 そしてアップもロードの手を絶対に離さず付いていく。

「なぁ、ドノミさん、盆踊りってなんだ?」

 ロードが訊く。

「夏祭りの三大行事の一つですよ! 第一におみこし! 第二に盆踊りなんです!」

 ドノミが答える。

「えっ、踊りを見に行くのか?」

 ハズレが訊いていた。

「違う違う、盆踊りっていうのは皆で踊るお祭りの伝統なの」

 否定したのはスワンだった。

「盆踊りか……ひょっとしてみんなで踊りに行くのか?」

 シルベが訊いていた。

「せっかくですからお祭りを堪能してもらおうと思いまして……」

 ドノミが急ぎ足ながらも声を拾い答える。

 そして人込みを掻き分けて、広い空間に出る。

 そこは盆踊りの会場だった。周囲の皆が円状に囲み踊っている人たちを見つめていた。

 踊りは独特なものだった。両手をヒラヒラ動かしたり、中央のやぐらを中心に回るように歩きながら踊っていた。

 そして和楽器の音楽が祭り全体の雰囲気を盛り上げる。

「これがお祭り」

 ロードはその光景に感動していた。

「そうです! これがお祭りです」

 ドノミが言う。

「はぁ、はぁ、やっと追いついた。ってここは何だ?」

 ハズレが言う。

「盆踊りの会場ってさっき聞いたでしょ」

 スワンがツッコむ。

「これが盆踊りか……」

「ロード、覚えてない? 昔皆で授業中見た景色の中にヴィンセント先生が教えてくれた人々の文化の授業を」

「これを授業で見ていたのか?」

「そう……」

「覚えてないな」

「そう……」

 ミハニーツは肩を落とす。

「まぁせっかくここに来たんだし、皆で踊らな~~い?」

 シルベが提案してきた。

「踊る?」

「それもこの盆踊りの醍醐味の一つです。プロじゃなくても一般人皆で踊れるんです」

「そうか……」

 ロードは手が震えていた。

 その振動がアップにも伝わった。

「兄さん。踊りたいの?」

「ああ、せっかくお祭り気分を堪能してるんだ。踊ってみたいな」

「あっここでおどりゃにゃ後々損損!」

 シルバがリズムを刻みながら言う。

「一足先に行ってくる」

 スワンが浴衣の袖と髪を揺らしながら盆踊りに参加していく。

「たまには踊るのも悪くないか」

 ハズレが会場に向かう。

「それじゃあお先に――――」

 シルベも参加しに行く。

「どうです? ミハニーツさんもご一緒しては?」

「私はいい。ここで見ていた方がお祭りだな~~って感じられるから」

「オレもパスするぜ。こんなこっぱずかしいこと誰が出来るか……」

 グラスが言う。

「オレは行ってくる。これでも祖先は尊敬してるんだ。どこで見守ってくれているかもわからない。敬意を払って踊ろう」

 ブケンが荷物をグラスに押し付けて会場へと向かう。

「アップ、オレたちも行こう」

「やだ。踊りたくない」

 アップは駄々をこねた。

「アップ、お祭りを楽しむんだろ? 今日くらい兄さんと一緒に踊ろう?」

「………………うん」

 アップは固くしていた足の力を緩めて前に進んだ。

「行こう兄さん」

 この時、アップの目から魔物特有の黒目が取り払われた。

 
 ▼ ▼ ▼


 数分後。

 屋台の盆踊り会場では、ロード、アップ、ハズレ、スワン、ブケン、シルベ、ドノミの踊る姿が見えた。

 前の人に動きを合わせて踊っていたので結構簡単だった。

 ロードは慣れない踊りをし、ハズレは余裕の笑みを浮かべ、スワンは踊りにアレンジを加え、ブケンは愛想のない顔をして、シルベは完全に盆踊りをマスターし、アップは最初から最後まで兄と踊れたことに笑顔を浮かべた。

 ミハニーツとグラスも遠くからロードたちの踊る姿を見ていた。
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