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第十二章 明かされし衝撃の事実と兄妹愛

第611話 アップの大好物

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 次にやって来た屋台はチョコバナナ屋さんだった。

 店のカウンターには見本のチョコバナナが10本ほど置いてあった。

 チョコ色にピンク色、デコレートされたもの、シンプルに色だけ変わったもの。たくさんあった。

「すみませーん、チョコバナナ9本ください」

 ドノミの声が屋台の中へ響く。

「は~~い、少し待っててね」

 女性の屋台主がそう言う。

 ロードはチョコバナナが出来る工程を見ていた。

 まず新鮮なバナナの皮を剥き、とろけたチョコレートの中に入れていく。そして数秒、チョコレートの中から取り出されたバナナは、パラパラとカラフルなチョコのふりかけをかけていく。そして冷凍され数秒後、冷やされたバナナのチョコレートが固まりチョコバナナが完成した。

「は~~い、一本で来ましたよ~~」

 女性からチョコバナナを受け取るアップ。

「わ~~~~おいしそう」

 アップは目の色を輝かせていた。

 その際ドノミが9人分のチョコバナナを自分の紙幣で支払う。

「悪いなドノミさん」

 ロードが謝る。

「いえ、いいんです。これくらいお金を使っても私は何十万も稼いできましたし、いつもお世話になってますし、おごらせてください」

 ドノミが紙幣を出していく。

「はい、もう一本出来ましたよ~~」

 今度はロードが受け取る。

「行くよ兄さん勝負!」

「それもいいが味わって食べような?」

「うん」

 ロードとアップは食感、味、広がる食べ物の冷気、全てを楽しんだ。

 そして、次々とチョコバナナが出来て行き、

「うん! これ美味しい」

 スワンが口に手を当てて言う。

「これは女の子みんな好きだろ」

 シルベが言う。

「蜂蜜味も欲しいけどたまにはチョコ味もいい」

 ミハニーツが言う。

「チョコレートがホントいい、疲れが取れるな~~」

 ドノミが癒されていた。

 一方。

「甘い」

 ハズレの簡素な感想。

「バナナだな」

 グラスの当たり前の感想。

「何でカラフルなんだ?」

 ブケンの一言。

 男たちは興味なさげな感想を漏らした。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 りんご飴の屋台。

 ロード一行はついに祭りと言えばもう一つの食べ物がある場所に辿り着いた。

「なんて書いてあるんだ?」

 ロードが屋台の看板を見る。

「りんご飴だって……私兄さんとりんご飴食べるのが夢だったの」

 アップが呟く。

「そうか……夢が叶うんだな」

「うん、嬉しい」

「おじさーんりんご飴9個ください」

「おう! お金を置いたら持って行きな!」

 おじさんはりんご飴を作ってる途中だったので、ドノミはお金を置いて9個のりんご飴を持ち去った。

 そしてみんなに配る。

「何だいこれ?」

 ハズレが訊く。

「飴です」

「飴って口の中で舐め転がすものだろう? 大きすぎないか?」

 ロードが言う。

「それは異世界の広さを知らないな?」

 シルベが待ちきれずりんご飴を舐めだす。

「そうやって食べるのか……」

 ブケンがシルベに習う。

「少し硬いな」

 ガリガリガリと飴ごとリンゴを食い破るグラス。

「凄い歯が丈夫何だね……」

 スワンは驚きの食べ方に慣れてきていた。

「ロード、飴を知ってるの?」

 ミハニーツが訊いてきた。

「オレの故郷の異世界で蜂蜜の飴を食べたことがあるんだ」

「ペロペロ」

 アップは嬉しそうにりんご飴の表面を舐めている。

 ロードもハズレも舐めだす。

「ああ、飴の味がする」

 ロードが言う。

「うわぁ~~オレはこれ苦手だ。甘すぎる」

 ハズレがイヤイヤ舐めていく。

「中のリンゴに到達するまで我慢してください」

 ドノミがせっかく買ったんだからと言いたげだった。

「いや、リンゴに行くまでかなり階層ありそうだけど……?」

 ハズレは仕方なく舐めていく。

「ハズレ無理ならオレが食べてやろうか?」

「いや、ロードは動物を食べるのを克服したんだ。オレも挑戦してみるさ」

「アップちゃんは美味しい?」

 スワンが訊く。

「美味しいよ! 外の飴も中のリンゴも美味しいよ! 私の大好物見つかったかもしれない!」

 アップの顔は今までにないくらい笑顔だった。
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