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第十二章 明かされし衝撃の事実と兄妹愛

第586話 大魔王アップへの質問

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 魔王の少女は廃墟となった勇卵の城の門の上でアップと名乗った。

 そして名乗りを終えると門をくぐる。

「行こう。兄さん」

 アップが城の中へと手を差し伸べる。しかしロードはその手を取らずに入って行く。

 少し口角の下がるアップだった。


 ▼ ▼ ▼


 ロードが城の外壁の階段を登っていく。

 それにアップとラジルバフアが付いていく。

「魔王なんだよな?」

「そうだけど……? 一応大魔王を名乗ってる」

「極大魔王じゃないのか?」

「極大魔王は一つの世界を魔界化させなきゃならないから私は大魔王止まり」

「大魔王ってのはそもそも他の魔王と何が違うんだ?」

「五つの秘宝を複数使えれば大魔王と呼ばれる」

「何の秘宝玉だ?」

「教えなーい」

 アップが喜びながら自分のことを隠す。

 ロードはその姿を見たが興味はなかった。

「…………人は殺したのか?」

「うん…………たくさん殺した」

 その一言でロードは剣を抜きかける。

「殺しても何も思わないのか? その人たちにも家族や兄弟がいたかもしれないんだぞ!」

「……………………」

 沈黙するアップ。

 ロードはその俯く顔を見て、戦意を削がれた。

「兄さん。他の話題はないの? さっきから怖いよ?」

「人殺しとは話したくない」

「人を殺してたのは昔の話、もう10年以上は殺してない」

「オレの仲間たちを殺そうとしてたじゃないか!?」

 ロードは声を張り上げた。

「……………………」

 再び俯くアップ。

「どうして人殺しをやめた」

「えっ?」

「10年以上人を殺してないんだろ? どうして魔王のお前が人殺しをやめる? ずっとここに居たからか?」

「違う。ある異世界で、兄妹にあったの……それで妹はオレが守るって言ってた兄さんが居たの……? それを見たら人が殺せなくなった」

「………………その兄妹は殺したのか?」

 今度はロードが俯いた。

「殺してない」

「そうか」

 再び歩き出すロード。


 ▼ ▼ ▼


 廃墟の城・回廊。

 歩くロードと浮遊するアップとラジルバフア。

「なぁ、最魔の元凶って知っているか?」

 ロードが話を振っていた。

「さいまのげんきょう? 知ってる? ラジルバフア?」

「噂程度なら」

「どんな噂だ?」

「答えて……」

「魔物や魔王を生み出す根源的な魔と聞いたことがあります」

「根源的な魔?」

「何根源って?」

「おおもとという意味です」

「何者か知らないか?」

「生命体とは限らない何かしらの物かもしれない」

 ラジルバフアが補足する。

「それ以外に知っていることは?」

「ラジルバフア」

「ありません」

 そこでいったん会話が途切れた。

 ロードが大きな門の前で止まる。

「さっき10年は人を殺してないって言っていたけど、ガリョウ先生はどうした……?」

「ガリョウ先生? 誰?」

「お前が殺した俺の恩人さ……」

 ロードがにらみつける。

「もしかして昔、兄さんとの出会いを邪魔してきた竜の目を持った人?」

「片腕が無かったはずだ」

「その人なら殺してない。逃げられた」

「――!? 逃げられた!? それじゃあガリョウ先生はまだ生きているのか?」

「分からない……私がとどめの一撃を放った時、気絶してたと思ったら突然起き上がって、異世界の狭間に逃げ込んで行った」

「そうか……(ガリョウ先生はどこかで生きているのか……)」

 ロードは少し安心した。

 そして大きな扉を開く。

 そこはかつて皆で食卓を囲んだ間だった。今は天井がむき出しで飾られていた絵も焼けこげていた。

「オレの秘宝玉を狙っていたんじゃなかったのか?」

「そんなことしないよ」

「どうしてだ?」

「秘宝玉所有者から秘宝玉を奪うには持ち主を殺さないといけないの……つまり兄さんの道の秘宝玉を使いたいなら兄さんを殺さないと絶対使えないの……」

「殺さないと使えないのか?」

 アップはコクンと頷いた。

 ロードは席に着いた。

「何か食べる?」

「いや、いらない」

 ロードはアップの好意を断った。

「どうしてまだ色合界・ガークスボッテンにいる?」

「ここが兄さんの大切な場所なら探しに行くより待っていた方がいいと考えたから」

「オレがいつかこの異世界に帰ってくると思ったのか?」

「うん……直ぐ帰って来るとは思ってなかったけど、数日前再会できた時は嬉しかった」

 アップはロードのすぐ近くの席に着いた。

「強かったか? ガリョウ先生は……」

「数日間戦っていたから……私の秘宝玉の力が無ければ真っ向勝負では負けていた」

「そうか……」

 ロードは正面に見える10人の子供と2人の大人が描かれた絵を見ていた。

 懐かしい思いをしたロードは少し落ち着いてきた。
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