584 / 743
第十二章 明かされし衝撃の事実と兄妹愛
第584話 魔王の少女への交渉
しおりを挟む
魔王の少女は信じられない言葉を発していた。
「やっと、見つけた。兄さん」
少女らしい声がロードの耳に滑り込む。
(えっ? 兄さん)
(オレに言ってるのか?)
(オレを誰かと勘違いしているのか?)
「――人違いだ!」
ロードは青い剣を引き抜いた。
その前に立ち上がるミハニーツ、髪は痛み、全身に汚れがついていた。
「ロードは下がってて……今のあなたじゃこいつには勝てない」
ミハニーツが背中越しに声を掛ける。息も乱していない。
「けれど、一人だと――――っ!!!?」
その時、ロードの剣に朱色の光線が当たった。威力はそれほどでもなかったが、驚いたロードは尻餅をついた。
「兄さん。危ないよ……? 待っててすぐに邪魔者を消してあげるから」
魔王の少女の袖口が再び光り輝く。朱色の光線を発射しようとしているのだ。
「やめろ!!」
思わず本音が出るロード。しかし効果はあった。魔王の少女はその声の通り、静かに光線を出すのをやめた。
その隙にミハニーツはつぼを出現させた。中に手を突っ込み辛蜜の剣を取り出した。熱でもこもっているのか刀身が燃えていた。
「赤蜜の剣」
ミハニーツは再び戦いへ、そして魔王の少女を上半身と下半身に分けた。
「――いっ!?」
ロードに追いついて来たハズレが仰天する。
ついに魔王の少女は倒されたかのように地面に落ちた。上半身も下半身も別れたままだ。
「や、やったの?」
スワンが呟く。
「まだだろ。霧散化が始まってねーー」
グラスが言う。
「シルベさん、今の内にこの魔王を別世界に飛ばすことは出来ませんか? この魔王かなり手強いです!」
ドノミが提案する。
「わかった……召喚陣一式」
召喚の秘宝玉が発動して魔王の少女の分離した下半身と上半身がどこかに贈られる時だった。
上半身と下半身が燃え出した。次の瞬間灰となって舞いあがり召喚陣の入り口から遠ざかり、宙で灰が集まって元の魔王の少女の姿に戻った。
「お前が、お前が、お前が、お前が……………………」
わなわなと震える魔王の少女。どこか憎らしげにつぶやき続ける。
それはまさに刹那の時間。シルベの首に魔王の少女の手が伸びて絞めた。
「――――あがっ!?」
「「「――――――!!!?」」」
その場に居た誰もが魔王の少女に反応できなかった。あのミハニーツでさえ、
ロードは見た白目をむくシルベの姿を、そして、
「殺すなーーーーーー!!」
ロードは叫んだ。
すると魔王の少女は手で持ち上げていたシルベを離す。地面に落ちたシルベをドノミがすぐさま診る。
「皆伏せろ!」
ミハニーツの指示だった。炎を纏った硬い蜜の剣から炎の斬撃が飛ぶ。そして魔王の少女を焼いていく。
「炎で焼くことが出来るなら、当然私の炎でも焼け――――!?」
炎の中で悠然と君臨する魔王の少女。その肌は段々と焼け焦げていくが、顔色変えない魔王に驚くミハニーツ。そして、
「無駄……」
それだけ言うと赤蜜の炎が魔王の少女の炎に弾かれた。そして灰となり、灰が再び集まって元通りの姿に戻る。
それだけではない。攻撃態勢に移ろうとしたハズレ、スワン、グラス、ドノミ、ブケン、ミハニーツの喉元に尾羽の剣の切っ先が突きつけられていた。
「動くと殺すよ……」
魔王の少女はかつてロードがミハニーツから受けた殺気よりも何万倍もの殺気を敵に浴びせた。
ロード以外はその場で恐怖しすくみ上がる。辛うじてミハニーツの目は死んでいなかった。
(両手から三本づつの尾羽の剣)
(それぞれが首元に当てられている)
(この魔王の狙いは秘宝玉)
(皆の命には代えられない)
「魔王聞け……秘宝玉が欲しいんだろ! だったらくれてやる!」
ロードが手のひらを突き出して魂のような秘宝玉を出現させた。
「いらない」
対して魔王の少女は興味なさげに言う。
「何!? なら何を探している!?」
ロードは問いを出した。
「あなた、兄さんを見つけたからもういい」
「どういうこと?」
ミハニーツが訊く。
「黙れ、誰が口を出していいと言った」
ミハニーツの喉元の剣が喉に食い込んでいく。
「やめろ!」
ロードはすぐに叫んだ。そして魔王の少女は剣を引かせる。
「やめて欲しいなら一緒に来て……」
「秘宝玉が狙いじゃないなら、オレに何の用がある……?」
「話は誰もいないところでしたい」
魔王の少女はロードに優しく語りかけた。
「ダメ! ロード付いていってはいけない」
ミハニーツが発言すると、喉元に尾羽の剣が締め付けられる。
「絞め殺してはダメとは言われてない」
「――――分かった。話が出来るところまで連れて行ってくれ! その代わり皆には手出しをするな!」
ロードは魔王の少女と交渉した。
「ラジルバフア……」
魔王の少女が呼ぶと暗雲の魔物が現れた。
「急いであの城に戻ろうね。もう我慢の限界」
「はっ! かしこまりました!」
ラジルバフアの身体がまるでシルベの召喚陣のように広がっていく。暗雲で文字も書いてるみたいだった。
「これは魔法陣」
「命拾いしたね……さぁ、兄さんこの手を取って、そうすればここの人に手出しはしないって約束する」
か細い腕を差し向けてくる。
(この手を取ってオレはどこへ連れて行かれる)
(いや、考えてもしょうがない。ここは皆の安全が第一だ)
(例えこの先に行ったってオレ自身が戦って勝てばいい)
ロードはか細い手を取った。
その時、魔王の少女は少し口角を吊り上げていた。
「行こう」
手を引く魔王の少女がラジルバフアの中へ入って行き、ロードもまた暗雲の中へ入っていく。
「それでは人間共さらばだ」
ロードと魔王の少女を取り込んだラジルバフアが溶けるように消えて行った。
「――――くっ!」
消えた後、ミハニーツだけが地面に拳を振り下ろしていた。
魔王の少女の殺気でスワンとハズレとグラスとドノミとブケンは震えあがっていた。
この時、
(間違いない。あの魔王、大魔王の中でも最強クラスだ)
ミハニーツはそう思っていた。
「やっと、見つけた。兄さん」
少女らしい声がロードの耳に滑り込む。
(えっ? 兄さん)
(オレに言ってるのか?)
(オレを誰かと勘違いしているのか?)
「――人違いだ!」
ロードは青い剣を引き抜いた。
その前に立ち上がるミハニーツ、髪は痛み、全身に汚れがついていた。
「ロードは下がってて……今のあなたじゃこいつには勝てない」
ミハニーツが背中越しに声を掛ける。息も乱していない。
「けれど、一人だと――――っ!!!?」
その時、ロードの剣に朱色の光線が当たった。威力はそれほどでもなかったが、驚いたロードは尻餅をついた。
「兄さん。危ないよ……? 待っててすぐに邪魔者を消してあげるから」
魔王の少女の袖口が再び光り輝く。朱色の光線を発射しようとしているのだ。
「やめろ!!」
思わず本音が出るロード。しかし効果はあった。魔王の少女はその声の通り、静かに光線を出すのをやめた。
その隙にミハニーツはつぼを出現させた。中に手を突っ込み辛蜜の剣を取り出した。熱でもこもっているのか刀身が燃えていた。
「赤蜜の剣」
ミハニーツは再び戦いへ、そして魔王の少女を上半身と下半身に分けた。
「――いっ!?」
ロードに追いついて来たハズレが仰天する。
ついに魔王の少女は倒されたかのように地面に落ちた。上半身も下半身も別れたままだ。
「や、やったの?」
スワンが呟く。
「まだだろ。霧散化が始まってねーー」
グラスが言う。
「シルベさん、今の内にこの魔王を別世界に飛ばすことは出来ませんか? この魔王かなり手強いです!」
ドノミが提案する。
「わかった……召喚陣一式」
召喚の秘宝玉が発動して魔王の少女の分離した下半身と上半身がどこかに贈られる時だった。
上半身と下半身が燃え出した。次の瞬間灰となって舞いあがり召喚陣の入り口から遠ざかり、宙で灰が集まって元の魔王の少女の姿に戻った。
「お前が、お前が、お前が、お前が……………………」
わなわなと震える魔王の少女。どこか憎らしげにつぶやき続ける。
それはまさに刹那の時間。シルベの首に魔王の少女の手が伸びて絞めた。
「――――あがっ!?」
「「「――――――!!!?」」」
その場に居た誰もが魔王の少女に反応できなかった。あのミハニーツでさえ、
ロードは見た白目をむくシルベの姿を、そして、
「殺すなーーーーーー!!」
ロードは叫んだ。
すると魔王の少女は手で持ち上げていたシルベを離す。地面に落ちたシルベをドノミがすぐさま診る。
「皆伏せろ!」
ミハニーツの指示だった。炎を纏った硬い蜜の剣から炎の斬撃が飛ぶ。そして魔王の少女を焼いていく。
「炎で焼くことが出来るなら、当然私の炎でも焼け――――!?」
炎の中で悠然と君臨する魔王の少女。その肌は段々と焼け焦げていくが、顔色変えない魔王に驚くミハニーツ。そして、
「無駄……」
それだけ言うと赤蜜の炎が魔王の少女の炎に弾かれた。そして灰となり、灰が再び集まって元通りの姿に戻る。
それだけではない。攻撃態勢に移ろうとしたハズレ、スワン、グラス、ドノミ、ブケン、ミハニーツの喉元に尾羽の剣の切っ先が突きつけられていた。
「動くと殺すよ……」
魔王の少女はかつてロードがミハニーツから受けた殺気よりも何万倍もの殺気を敵に浴びせた。
ロード以外はその場で恐怖しすくみ上がる。辛うじてミハニーツの目は死んでいなかった。
(両手から三本づつの尾羽の剣)
(それぞれが首元に当てられている)
(この魔王の狙いは秘宝玉)
(皆の命には代えられない)
「魔王聞け……秘宝玉が欲しいんだろ! だったらくれてやる!」
ロードが手のひらを突き出して魂のような秘宝玉を出現させた。
「いらない」
対して魔王の少女は興味なさげに言う。
「何!? なら何を探している!?」
ロードは問いを出した。
「あなた、兄さんを見つけたからもういい」
「どういうこと?」
ミハニーツが訊く。
「黙れ、誰が口を出していいと言った」
ミハニーツの喉元の剣が喉に食い込んでいく。
「やめろ!」
ロードはすぐに叫んだ。そして魔王の少女は剣を引かせる。
「やめて欲しいなら一緒に来て……」
「秘宝玉が狙いじゃないなら、オレに何の用がある……?」
「話は誰もいないところでしたい」
魔王の少女はロードに優しく語りかけた。
「ダメ! ロード付いていってはいけない」
ミハニーツが発言すると、喉元に尾羽の剣が締め付けられる。
「絞め殺してはダメとは言われてない」
「――――分かった。話が出来るところまで連れて行ってくれ! その代わり皆には手出しをするな!」
ロードは魔王の少女と交渉した。
「ラジルバフア……」
魔王の少女が呼ぶと暗雲の魔物が現れた。
「急いであの城に戻ろうね。もう我慢の限界」
「はっ! かしこまりました!」
ラジルバフアの身体がまるでシルベの召喚陣のように広がっていく。暗雲で文字も書いてるみたいだった。
「これは魔法陣」
「命拾いしたね……さぁ、兄さんこの手を取って、そうすればここの人に手出しはしないって約束する」
か細い腕を差し向けてくる。
(この手を取ってオレはどこへ連れて行かれる)
(いや、考えてもしょうがない。ここは皆の安全が第一だ)
(例えこの先に行ったってオレ自身が戦って勝てばいい)
ロードはか細い手を取った。
その時、魔王の少女は少し口角を吊り上げていた。
「行こう」
手を引く魔王の少女がラジルバフアの中へ入って行き、ロードもまた暗雲の中へ入っていく。
「それでは人間共さらばだ」
ロードと魔王の少女を取り込んだラジルバフアが溶けるように消えて行った。
「――――くっ!」
消えた後、ミハニーツだけが地面に拳を振り下ろしていた。
魔王の少女の殺気でスワンとハズレとグラスとドノミとブケンは震えあがっていた。
この時、
(間違いない。あの魔王、大魔王の中でも最強クラスだ)
ミハニーツはそう思っていた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる