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第十一章 少年の頃の忘れ去られし記憶

第578話 再会と帰還

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 ロードは深い深い事実の記憶の中から目を覚ます。

「……ん……うん」

 ロードは送り込まれた情報が頭痛を起こしていることを知り、頭を手で押さえていた。

「いかがでしたか? 少しでも記憶を取り戻すお手伝いが出来ましたか?」

 シスター・クレアが顔を覗き込んできた。

「ああ、だいぶ思い出せた。ありがとうシスター」

 ロードは長椅子から起き上がり、両足を床につけて立ち上がる。この時少しだけフラついたがシスターが身体を支えてくれた。

「大丈夫ですか? 情報の波が頭を痛めることはよくあります。休憩所で休みましょう」

「いや、記憶は取り戻した。それにオレには使命があった。最魔の元凶を追うという使命が」

「さいまのげんきょう?」

 シスター・クレアはロードを支えていたが、その身体は助けを必要とせずに離れて行った。

 ロードは教会の外を目指す。追って来たシスタークレアがすぐに教会の門を開いてくれた。

 身体を引きずりながら教会の外へ出るロード。


 ▼ ▼ ▼


 教会・前。

 外にはホワイトポッポの従業員の面々とシルベとミハニーツが待ってくれていた。

「ロード!」

 始めに声を出したのはスワンだった。それからハズレ、グラス、ドノミ、ブケンが近寄って来るが、ロードの目はミハニーツに向いていた。

「今は退いてくれ……」

 頭を押さえたままのロードがミハニーツの元に足を運ぶ。

「ロード……」

 ミハニーツとロードは目と目が合う。

「事実の記憶の中にキミがいた。久しぶりだなミハニーツ」

 ロードが話しかける。

「ロード……」

 その一言がミハニーツの突き刺すような声を震わせた。

「随分、綺麗になった。いや、昔から綺麗だったけどさ」

「ロード!」

 その時ミハニーツはロードを抱きしめた。優しく包み込むように、抱いても苦しまないように手加減して抱きしめた。

「ごめんな仮面割ってしまって」

「いいの、そんなことはいいの、こうしてロードとまたおしゃべりが出来たのだから」

「黄色いリボンはどうした? 子供らしくて外したのか?」

「ううん、リボンは魔王たちと戦っている内にこうなってしまったの」

 ミハニーツは懐からボロボロになった黄色いリボンを取り出しながら言う。

「そうか、けど、ミハニーツがボロボロになるよりマシだ。生きててよかった」

「それはこっちのセリフ! ロード記憶を見たのならガリョウ先生はやっぱり――――」

「分からない。あの魔王の少女と戦っている最中にこの竜殺しの剣を、今は竜封じの剣だけど、これを持って異世界の狭間に飛び込めって言われて別れたんだ。あの魔王、どうやらオレの生命力を使う力を狙っていたらしくて……」

「じゃあ、今まで一人で生活していたの?」

「違う……運よく人と動物の助けがあって何とか生きてこられた。そっちはどうだ? 皆無事に異世界転移できたのか?」

「うん、けど私は…………16才になった頃ヴィンセント先生の元から家出した」

「家出? 何で?」

「許せなかった……ロードとガリョウ先生と会えなかったから、きっとあの魔王の少女に殺されたんだと思って、ずっと魔王たちを憎んでいた。そして魔王を倒したいという私の思いが家出するように心を突き動かした。それで……秘宝玉を手にしてからは今まで一人で戦って来た」

「秘宝玉を手にして? そうか……ムドウたちはどうしてる?」

「分からない。家出してからは皆の顔も見てないし、卒業試験にクリアして勇者としての道を歩いてるとは思うけど……」

「そいえば、骨の大魔王が言ってたけど、勇者の存在が噂になっているらしいな。ムドウたちのことか?」

「それは初めて聞いた。私には分からない」

「そうか、けれど、皆無事にあのガークスボッテンから脱出できてよかった」

「ロード、約束憶えてる?」

「うん、覚えてる。いつか一緒に精霊界へ行こうだったか?」

「うん、いつか行こうね」

 ロードとミハニーツは再会を喜んだ。

 この時、
(まるで恋人同士みたい)
 だきあいながら話す二人を見てスワンはそう思った。

「ミハニーツもういいか?」

「うん」

 ミハニーツはロードの身体から離れる。

「スワン、ハズレ、グラス、ドノミ、ブケン、ただいま」

 ロードは振り向きざまに皆に今のロードの顔を見せた。

 その顔はどこか凛々しく今までと違う覚悟を持った。とても優しそうな顔だった。

「おかえり」

 スワンが言う。

「戻ったか」

 ハズレが言う。

「フン」

 グラスが鼻を鳴らす。

「前と雰囲気が違いますね」

 ドノミが言う。

「ますます強者の顔になったな」

 ブケンが言う。

 こうして記憶を一部取り戻したロードはミハニーツと再会し、皆の元に帰って来た。



 しかし、その頃、ロードにとっての不吉がまた近づいてくるのを誰も知らなかった。
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