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第十章 青空を見るための死力を尽くした共闘

第547話 束ねる魂の剣道

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 大魔王ボランデスカールは骨の根城と合体して巨人の姿に変貌した。

「グハハハハハハハハハハハハハハ!! これで万が一にも我が倒れることはなくなった!」

 禍々しい姿の髑髏の怪物。見る者を震え上がらせるだろう。

 だが、ロードにとってこういう状況は何度かあった。そのたびに逆境を奇跡の事象で乗り越えて来た。

 しかし、今回もそれに縋るつもりはない。何故なら彼は勇者なのだから。

「誰だーー!? 助けを求めるのは誰だーー!?」

 ロードにはある声が聞こえていた。タスケテタスケテとさっきから声がいくつも聞こえてくるのだ。

「グハハハハハハハ、この姿を見て現実逃避か? 無理もないが逃走しろ! 貴様は死ぬぞ」

 ボランデスカールの巨大な身体の一部分である腕が、バラけるように花が咲くように一本一本分離していった。

 数百の腕がロードに向かって伸びていく。ロードはそれを知って青い剣で空中に避難した。

(極体も最初の一撃も効かなかった)
(道の秘宝玉で出来ることは全てやった)
(あとはシルベに連れてくるように頼んだミハニーツを待てばオレは死なずに済む)
(また戦える。また生きられる。また強くなれる)

 その時、ロードは身体から力が抜けるのを感じた。そして空飛ぶ青い剣を手元から離してしまった。

(くっ――――急に頭痛が――)

 自由落下していくロード。今の頭痛に何らかの前兆、あるいは前触れを探る。

(何で急に頭が痛みだした?)
(さっきのハンマーの攻撃で当たり所が悪かったとか?)
(いや違う、それならその時に痛みが走るはず、今になって自覚症状が出るとは考えにくい)
(ならば何だ? どうしてこんなにも頭が痛い!?)

 ロードに迫る来る数百の腕。その一本がロードの足を掴む。

「極体蹴り!」

 掴まれた足を掴まれたない足の方で、骨の腕を折っていく。

 この時、
(フン、まだ力が残っていたか……あれだけ暴れたのにタフな奴だ)
 ボランデスカールはそう思った。

 青い剣ミチルがロードを迎えにやって来る。ロードは再び青い剣で空中を移動する。

「この手ならどうだ!」

 巨大な手がロードの進む軌道を遮った。そして、勝手とは言えミチルは刺突の撃を前に向けて飛ばす。

 ボランデスカールの手のひらに傷はつけられなかったが、爆風でロードの身体を後方へ吹き飛ばし、巨大な骨の手のひらを躱していく。

(どうしてこんなに頭が痛い)
(オレの身体はどうなっている)
(もう戦えないのか? ただ死を受け入れるしかないのか?)
(イヤだせっかく生き残ったんだ死んでたまるか!)

 その時ロードの頭痛は治った。

(――――!? 何だ頭が軽くなったぞ……さっきまで死ぬほど痛かった頭痛が消えた)

「閉じ込めよ!」

 ボランデスカールの数百の腕がロードを囲んで行く。ミチルは力を解除して落ちることで囲いの外へ出た。

 その時、ロードは耳にしたタスケテという声を、

(今の声はまさか――――そんなまさか――!?)
(だって相手は敵だぞ、そんなことがあり得るのか!?)

 その時、進撃してきた巨人ボランデスカールがスカルソルジャー軍を踏みつけた。

 タスケ――――多くの声が途切れた。そしてロードは違和感を覚えた。

(何故助けを求める。お前たちは話せもしないし、魔王の命令でしか動けないのに……さんざん人を殺めて来たのにどうして助けを求める)

 とにかくロードはスカルソルジャーの軍の元に降り立った。

 助ける為ではない確かめるために、

「オレはお前たちを助けない! ――――――つっ!!」

 その時ロードの死ぬほど痛い頭痛が起きた。

(そうか――オレが道を踏み外していることで道の秘宝玉が警告しているのか!)
(だったら今の逆のことを思えばいいじゃないか……)

「スカルソルジャー達、お前たちは何故助けを求める。さんざん人を殺めておいて、今更自分たちが助かろうと思ってるは何故だ!」

 その時、一体のスカルソルジャーから声が聞こえて来た。

 永遠の命に興味はないかと言われた。死にたくなかった。本当は不本意だった。

 確かに声を聞いたロード。

(どういうことだ? 永遠の命に興味? 死にたくなかった? 本当は不本意だった? まるで元は人間みたいな口ぶり――――)
(――――!? 元は人間なのか? まさか皆、大魔王に脅されてこの道を選んだのか?)

 ロードの予想は当たっていた。彼らスカルソルジャーの正体は元は人間で死の恐怖から逃げる為、永遠の命を授かったボランデスカールの配下だった。 

「だったらオレはお前たちを助ける! だから力を貸してくれ!」

 ロードの魂からの叫びだった。

 その魂の叫びにスカルソルジャー達は答えようとしていた。

 スカルソルジャー達は自壊していき。ロードに魂の生命力を渡していく。

(――――!? どういうことだ!? 我のスカルソルジャーの身体から核である魂が抜けて行き、あの勇者に向かって行く。それも一体や二体ではない。ここにいる50万以上のスカルソルジャー達の魂が集まっていく。これは不味い止めねば――――)

 ボランデスカールはスカルソルジャー達をその場の墓標に形を組み替えていった。しかし漏れる魂はどんどんロードに吸収されていく。

「極体も最初の一撃も通用しないかった。けれどこれだけの魂の力があれば大魔王、お前を倒せる」

 ロードは勝利宣言をした。

 青い剣に自分と受け取った魂の生命力の力を宿していく。そしてロードは青い剣によって飛んだ。

 それは魂に直接攻撃する刃。

「束ねる魂の剣道!」

 ロードの新しい技だった。

 数十万ものスカルソルジャーの魂が力となり、ボランデスカールの心臓部を突き抜けた。

「ぐおっ!!」

 ボランデスカールは巨大な骨の根城との合体を解いてしまうほど力を失った。

「行け! ミチル!」

 剣は飛んだ! その方向にはボランデスカールの本体がいた。

 そして剣がボランデスカールを貫いた。

「こんな攻撃また再生して――――!?」

 スカルソルジャー達はバラバラに崩れた。そしてボランデスカール自身も霧散化の煙を傷口から放出させていく。

「オレたちの勝ちだ!」

 ロードは堂々と宣言した。

「我が魔界化の悲願は虚構であったか……」

 その言葉を最後にボランデスカールは消えていった。

 そして、ありがとうとあらゆる魂に感謝されたロード。魂たちは本来あるべき場所に向かって行くのだった。

「終わった。やっと勝った」

 ふらつくロード。その身体を支えたのはシルベだった。

「よくやったよキミは……」

 シルベが賞賛の言葉をかけてくる。そして悟った。ロードの心臓はもう動いてはいなかった。

 それなりの極致の戦いだったのだ。

 そこでロードは深い眠りについた。
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