上 下
498 / 743
第十章 青空を見るための死力を尽くした共闘

第498話 皆、教会に集まっての話し合い

しおりを挟む
 ロードは召喚士のシルベに連れられてホーウッドの教会に入った。

 そこで、飲料店ホワイトポッポの従業員、ハズレ、スワン、グラス、ドノミ、ブケンと合流する。従業員ではないミハニーツもそこにいた。

 そして、全員が集まったところでシスター・クレアという修道服を着た女性が現れた。

「さてと、皆そろったね。シスター話を進めちゃって……」

 シルベが長椅子に寝そべりながら適当に言う。

「主の御前でそのような態度を取っていると罰が当たりますよ」

 シスター・クレアが言う。

「ロード、気分はどう? 疲れてない?」

 ミハニーツが甘くささやくように言う。

「ああ、食事も取ったし、食欲がないわけでも、身体に疲れがあるわけでもない」

 ロードが答える。

「良かった」

 ホッと息を吐くミハニーツ。

「皆は無事なのか? 怪我とかしてないか?」

 今度はロードが訊く。

「大丈夫。皆魔王の襲撃の前にこの異世界に転移されてきたから……」

 スワンが答える。どこかそっけない。

「さぁ、シスター・クレアと召喚士のシルベ、俺たちがここに来たわけを教えてもらおうか?」

 ハズレが身を起こす。

「あ~~~~はいはい、皆を召喚したのは私シルベ・バウエッヘン」

「そいつは昨日聞かされた。オレたちはその先が訊きてーんだよ」

 グラスがしびれを切らして言う。

「まだ、詳しく話してないとこから話そうか。皆は秘宝玉って聞いたことがあるかな?」

 シルベが訊く。

「これのことか?」

 ブケンが懐から球状の宝石を見せる。

「そうそうそれそれ……秘宝玉を知っているのなら話が早い。他に持っている人は?」

 シルベが訊くと、ハズレとグラスとブケンとミハニーツとロードが手を上げた。

「おお、この中に秘宝玉持ちが5人もいるのか――豊作豊作」

「言っておくけど、オレは持ってるだけだ。力は使えない」

 ハズレが言う。

「オレもこの秘宝玉は使えてない」

 グラスも続けて言う。

「な~~んだ。期待しちゃったよ」

 ガックリとするシルベ。

「あのーー話を進めてください」

 ドノミが催促する。

「ああ~~そうだね。キミたちが秘宝玉を持っているように私も秘宝玉を持っているんだ。ホラ……」

 シルベが杖の先に固定した紫色の秘宝玉を見せてくる。

「何の秘宝玉なんだ?」

 ロードが訊いていた。

「召喚の秘宝玉。この秘宝玉の力は別の場所にある物を別の場所に送る力だ。例えば、異世界にいるキミたちをこの異世界に呼んだりするとかね」

「私たちがすんなり召喚出来たのはあなたの秘宝玉の力だったってこと?」

 ミハニーツが訊く。

「そういうこと」

 簡素に言うシルベ。

「それで、オレたちを召喚した目的は?」

 グラスが訊く。

「慌てない慌てない。まだ秘宝玉の力を説明してない。この力別世界から召喚するのはいいけど、その時刻印が出来るんだよね目で見えるようなものじゃないけど……そして最大召喚人数というものがある。私の最大召喚人数は約1600人。今最大人数をこの異世界に呼んでいるからこれ以上は呼べない。お分かりかな?」

「つまり、あなたが召喚したのは合計1600人ってことか?」

 ハズレが言う。

「そういうこと……その間、元いた異世界に帰還させるまで簡単な空間転移くらいしかできない。つまり私は本気の力を使えず逃げ回るしかないってこと……」

 シルベはベラベラと自分の力を説明する。

「召喚の秘宝玉、あなたが本気を出したとして他に何ができるんだ?」

 ロードが訊いてみる。

「砂漠に湖を召喚してオアシスを作ったり、何にもない地平に山を落として地形を変えたりとかかな」

 さらりと凄いことを言う。

「そこまで強いの力を持ちながら、あなたは私たちに何を望むの?」

 ミハニーツが訊く。

「協力して欲しいことがあるんだ……」

 シルベがチラリとシスター・クレアの方を見る。

「協力?」

 スワンが訝しむ。

「いや~~~~私は全ての異世界を周ることが夢なんだけど、この異世界の状況を知ってしまってから次の異世界に行くに行けなくて……」

 シルベが口を濁す。

「ハッキリ言ってくれ」

 ロードが言う。

「シスター、こっちの事情は話した後はそっちの事情を話してくれ!」

 シルベが拝み込む。

「わかりました。ここから先は私がお話しなくてはいけませんものね」

 シスター・クレアが目を閉じる。そして見開いてロードの目を見る。

「キミがシルベに頼んでオレたちの召喚を指示したのか?」

 ロードが言う。

「はい」

 シスター・クレアは肯定する。

「どうして……」

「皆さんにこの異世界を救ってほしいからです」

 シスター・クレアの話が始まる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...