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第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第492話 これからの友好

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 武闘大会の参加者、約5000名がパーティーを楽しんでいた。

「話ってなんだ?」

 ロードが訊く。

「オレをお前たちの旅に連れて行ってくれ」

 ブケンが言う。

「いきなりなんだ?」

「ほら、あれだ、約束しただろ、賞金で必ず返すって……」

「何を?」

「借金だ! ツケておいた借金!」

「ああ~~、確か優勝したら飯代も宿泊代もエントリー費も払うって言ってたな……」

「そうそれだ! それでオレは一文無しだろ。だからお前たちの店で働かせてほしいんだ」

「借金を返すためにか?」

「そうだ……」

「もういいさ、賞金の100万枚金貨も手に入ったし、気にする必要はない」

「それじゃダメだ! 恩を借りたまま何も返さないなんて、武道を極めたものにとって恥ずかしい。しっかり働いて自分の力で返したい」

「そうか、それはそれでいい心がけだ。分かったそれじゃあスワンに掛け合ってみる」

「本当かありがとう」

「それでツケはいくらだ?」

「えっと、宿泊があのくらいで、飯代があのくらいで、エントリー代があって、およそいくら4枚金貨分くらいだ」

「とすると、飲料水800個分の売り上げか……」

「そうかそんなに売らないといけないのか……?」

「ちなみにどんな飲み物を売りたいとかあるか?」

「ああ……お茶を売りたいな……」

「分かったスワンを探して説得してみる」

「頼む……」

「――――待て! 親に会いに行く話はどうなった?」

「ああ、それか……いや~~優勝できなかったから帰れもしないし、山籠もりでの修行も限界だと思ってお前たちについて行こうとも考えた」

「本命はそっちだな……」

「ああ、お前は優勝者だいつの日か倒せればオレは故郷に帰れる」

「そうか……オレを倒したいか……」

「だからこれからよろしく頼む」

 ブケンが手を差し伸べる。

「こっちこそこれからよろしく」

 ロードがブケンの差し伸べられた手を握り、熱い握手を交わした。この時のブケンの目には炎がこもっていた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ハオストラスタジアム・闘技場。

 ロードはスワンを探していた。途中ロードのファンになった選手たちにサインをせがまれた。

 書いていると数十分が経過した。描き終えるとロードはまた走った。

 今度は人気のない壁際を走ることで、人の注目にならないよう走っていた。

 そんな時、目の前にマントを羽織ったミハニーツが現れた。

「ロード、やっと見つけた。探してた」

 仮面のない彼女は甘い声でロードに言う。

「ミハニーツ! オレを探してたって何か用か?」

 ロードが驚き聞いてみる。

「うん、あなたの記憶喪失について……」

「オレの記憶、お前はオレの家族っていうのは本当なのか?」

「嘘は言ってない。本当に一緒に暮らしていた時期はあった」

「…………確かにオレは10才以前の記憶がない。だからって記憶を取り戻そうという気はない」

「……その腰に提げてる剣の正体を知りたくない?」

 ミハニーツが赤い剣を指差して行った。

「この剣が何か知っているのか?」

「秘宝具、竜殺しの剣。あらゆる異世界にある対竜用の剣」

「秘宝具?」

「まぁ、私が話したいのはそこじゃない。問題はその剣の本当の持ち主についての事」

「本当の持ち主! この剣はオレの育ち故郷の隣国のレオリカン王国の国宝だった」

「違う。それは紛れもなくガリョウ先生の剣」

「ガリョウ先生の剣?」

「そう、わたしたち勇者のタマゴを育ててくれた恩人。そしてある大魔王によって殺された英雄」

「殺された!?」

「ロードの側にガリョウ先生が傍に居ないということは、そう言うことになる」

「その話を聞かせてオレにどうしてほしいんだ?」

「一緒にある場所に行って欲しい、まずロードの記憶を元に戻したい。そうすればあの日何があったかもわかってくれるかもしれない。私たちのことを思い出してくれるかもしれない」

「だが、オレには仲間がいるし、魔王を倒す使命がある。そんな暇は……」

「大丈夫、ガリョウ先生を倒した大魔王は未だに生きてる可能性がある。そいつの情報もそこで見つければいい」

「大魔王……普通の魔王とは違うのか?」

「違う、ロードが戦った今日の魔王よりずっと強い」

「ロード、行くしかない」

 突然、赤い剣から声が漏れ出した。アカの声だ。

「うん? 今その剣喋らなかった?」

「ああ、もうこいつは竜殺しの剣じゃない、竜封じの剣だ」

「そう、今度詳しく聞かせて……それで一緒に来てくれる?」

「…………ミハニーツは勇者だったんだよな~~?」

「そう」

 ミハニーツが頷く。

「じゃあ、オレは勇者になるよう育てられていたのか?」

「そう」

「魔王を討伐する勇者…………」

「違う。最魔の元凶を滅ぼすための勇者……」

「――――!?」

 その時ロードは目を見開いた。

「その顔、最魔の元凶のことを聞いたことあるみたいね」

「ああ、スワンから聞いた」

「そう、それでどうするついて来てくれる?」

「アカ……」

 ロードが相談する。

「自分の記憶だ。知って真実を見定めよ」

「だがオレはストンヒュー王国のロードで……」

「最魔の元凶までの道は険しい。少しでも情報がいるだろう」

「そうか…………なぁミハニーツ、少しみんなと話をさせてくれ」

「分かった」


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ロードはハズレ、グラス、ドノミ、スワン、ブケンを集めて会議していた。

 ブケンの雇用、ミハニーツとの記憶探し。

「どっちも賛成」

 ハズレが言う。

「いいのか?」

 ロードが言う。

「ブケンはどのみちついて来るだろうぜ」

 グラスが言う。

「それにロードさんの記憶を取り戻すのも大事なことです」

 ドノミが言う。

「スワンは?」

 ロードが訊いてみる。

「決まってるでしょ。ブケンには働いてもらう。そしてミハニーツさんの言う通りロードの記憶を取り戻す」

 スワンは堂々と宣言した。

「皆ありがとう」

 ロードは頭を下げた。

「んなかしこまんな! 調子が狂う」

 グラスが言う。

「竜封じの剣の持ち主のことも知りたいしな」

 ハズレが言う。

「ブケンさんも借金は返していただかないと……」

 ドノミが言う。

「ミハニーツさん! 話しは決まった! あなたについて行く!」

 スワンが大声で壁に背を預けていたミハニーツに告げる。

「出発はどうする?」

 ロードが訊く。

「まずは体力の回復、それから行こう!」

 話を聞いていたブケンが言う。

 そして数日後ロードたちはこの異世界から去った。
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