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第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第486話 ハオストラ武闘大会の最後の食事

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 ハオストラ武闘大会・医務室。
 
「ん……んん……」

 ロードが目を覚ますとそこにあったのは天井だった、

「あっ! 気が付いた?」

 そばに座っていたのはスワン。

「スワン……そうだ大会は? 武闘大会は!? 結果は!? 優勝者は!?」

 スワンの肩にガッチリと手を掛けるロード。

「聞いてロードあなたは……あなたは気絶した……だから……」

「そ、そうか……オレは反則技で……」

 眉唾を飲むロード。

「…………フフフ、アハハハ、ハハハハハハハ」

 スワンが笑い出す。

「ど、どうしたんだ? スワン? 嬉しそうだな……まさかお前ミハニーツを応援してたのか?」

「アハハハ、違う違う、ごめん。嘘ついた。優勝したのはあなただよロード」

「オレが優勝……?」

 ロードは試合のことを頑張って思い出す。

「おめでとうロード」

「そうだ。禁止技を使って、ミハニーツが棄権したことでオレの勝ちになって、その後ぶっ倒れて……」

「おい、スワン……何笑って――ってロード! 起きたのか!?」

「ああ、ハズレ」

「んだ? やっぱテメーの回復力は並みじゃねな」

 グラスが言う。

「気が付いたんですねロードさん! 早く受付に行った方がいいですよ!」

 ドノミが言う。

「そんな慌てなくても時間までまだ30分とある。ゆっくり行かせてってくれ」

 ブケンが言う。

「時間? ゆっくり? 何の話だ?」

「ロード、あなたはハオストラ武闘大会で優勝した……だから、前大会のチャンピオンである魔王シドウオガに挑める権利を獲得した。その勝負を受けるか受けないかを決める申請書があるの……そこにサインしないと魔王とは戦えない。ただし戦いのルールは何でもあり、どんな秘宝玉を使ってもいいし、どんな技も使っていい。ただ相手が死ぬまで戦うデスマッチ……ロードこの試合受けずに賞金だけもらって――」

 スワンが提案しようとして、

「ダメだ」

 ロードは噛み付くように言った。

「そうだな! もし勝負を受けなかったら魔王がどんな手を取るか……?」

 ハズレが同意する。

「あのヤローが人間たちを襲うようになるってか?」

 グラスが訊く。

「ロードさん、出るなら早めに申請書にサインを」

 ドノミが言い、

「その前に身体は大丈夫か? しっかりと動けるか?」

 ブケンが訊く。

「…………うん。動く」

 ロードが片手の手をグッパッグッパッと開いては閉じ開いては閉じを繰り返す。

「分かったロード行こう」

 スワンが手を差し伸べる。それを取るロードは医務室から出て行った。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ハオストラスタジアム・西門・受付。

 ロードは申請書にサインし魔王シドウオガとのデスマッチを受け入れた。

「ロード様の申請書確かにお受け取りしました。それからしばらくお待ちください」

 受付嬢が奥の扉に入っていた。

「おいロード、あの受付さん。目ー輝いてたぞ」

 ヒソヒソとハズレが言う。

「ああ、あの人オレのファンらしい……」

 ロードが言う。

「へーロードも隅に置けないね」

 スワンがいたずらっ子のような目で見る。

「けっ、何が面白いんだ? たかがファンがいることの……?」

 グラスが吐き捨てる。

「グラスさん。羨ましいからって妬みはダメですよ」

 ドノミが言う。

「デスマッチ開始が午後13時、今の時刻が午前11時39分、うん、十分間に合うな」

 ブケンがロードの懐中時計を見て言う。

「あっ、それオレの時計。いつの間に拝借した?」

 ロードが訊く。

「お前が担架で運ばれてるときに拾った。ほら返そう」

 ブケンがロードに時計を手渡す。

「――――お待たせしました。お預かりしていた竜封じの剣です」

 受付嬢が剣を抱えてやって来た。

「ああ、戻って来た。これ試合で使っても?」

「構いません。例え秘宝具だろうが、中に竜が入っていて暴れさせようが何でもありです」

「けど聖法のバリアを突き抜けるんじゃないか?」

「大会運営側としてもそこが問題で、まぁ何重にもバリアを重ねるらしいのでさして問題ないかと……ロード様の決勝で使ったあの技も使えます」

 受付嬢は説明する。

「そうか……」

 ロードはとりあえず一安心する。

「それでは昼食に向かいましょう」

 何者か女性の声がした。

「だな。ってミハニーツ!」

 ロードが振り返って驚く。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ハオストラスタジアム・食堂。

 皆カウンターで昼食の注文を取り、厨房からトレイに乗ったかつ丼を受け取って、席に着く。

 ロードはハズレの左隣に座り、スワンはロードの右隣に座ろうとすると、ミハニーツに横入りされた。

「失礼、お嬢さん」

 冷徹に告げるミハニーツ。

「むぅ~~~~」

 スワンはむくれてミハニーツの左隣に座る。

「何だこの食いもんは……」

 グラスが言う。

「本当におごってくれたし」

 ハズレが言う。

「やはり勝負ごとの前にはかつ丼ですね……」

「何でだ?」

 ブケンが言う。

「名前にかつが入ってるから……」

 ミハニーツが刺すように言う。

「ミハニーツ、どうしてこんなことをしてくれる?」

 ロードが訊く。

「今は家族が心配だからといっておく」

 ミハニーツの頬は少し赤くなっていた。

「他にも家族がいると言っていたが……」

 ロードが訊いてみる。

「今はその話はやめましょう。魔王戦に備えて昼食を取らなくちゃ……体力が完全に回復しないよ」

 ミハニーツが甘くささやく。

「ああ~~~~!! いいこと思い付いた!」

 スワンの声が食堂全体に響き渡る。静かに食事をしたい者にとって迷惑千万だった。

「どうした、スワン、落ち着け皆見てるぞ……」

「ロード! 私天才的な発想をしたかも!」

 スワンが席に座り直す。

「何?」

 三ハニーツが冷たいまなざしを向ける。

「ロードに私たち皆の生命力を分け与えるの!」

「ダメだ!」

「どうして?」

「そう、ダメ。私はロードが魔王に勝つと信じて棄権した。ここでその方法を使うならロードを気絶させて不戦敗にする」

「そ、そんな……」

 スワンが言う。

「スワン気持ちだけもらっておく。ありがとう」

 ロードが感謝する。

「とにかくまずは食事を頂かないか?」

 ブケンが今か今かと待ちわびていた。

「そうだな」

 ハズレが言う。

「食い物なのかこれは……?」

 グラスはかつ丼に興味津々だった。

「さぁ、皆さん手を合わせて」

 ドノミが言う。

「「「いただきます」」」

 ハオストラ武闘大会の最後の食事が始まった。
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