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第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第485話 ハオストラ武闘大会優勝者は?

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 ロードは剣を構えて、ミハニーツに走っていく。

 その際、ミハニーツは再び仮面をつけ直す。

 ミハニーツはただ剣を勢いよく振る。それだけでロードの身体は吹き飛ばされ、聖法の壁に向かう。

 しかし、ロードは足を壁につけて衝撃を最小限に抑えた。

 そこから、ミチルの飛ぶ力を使いミハニーツまで突き進む。

 ミハニーツはまた剣を振るう。そしてロードに衝撃波が走るが飛ぶ力のおかげで突き進んだまま。

「それはさっき見た技」

 ミハニーツは剣を振り続け、少しでもロードたちが減速するよう衝撃波を走らせる。

 それでも、ロードはミハニーツの元まで近づいた。そして突きを放つと見せかけて剣を振るう。

 ミハニーツの構えは刀身で青い剣を止めるのが目的だった。それを逆手に取り、ロードは横に薙ぐ。

「遅い」

 ミハニーツはちょっと剣をずらすだけで、振るわれてきた青い剣を止めた。

「――――!!!?」

 ロードのフェイントは決して遅くはなくスピードもあった。だが止められた。

「ごめんね」

 ロードの腹部を正確に蹴るミハニーツ。ロードは今度こそ聖法の壁にぶつかった。

「がはぁっ!!」

 壁に激突したロードは息を吐きだした。

「ミハニーツ二点!」

 審判が叫ぶ。

「おっと、ミハニーツ選手! またもロード選手を吹き飛ばした! これは強い!」

「ここまで圧倒的だとは思いませんでしたね」

 ミハニーツは再び剣を連続で振るって衝撃波を生み出して、ロードを張り付け状態にしながら進んで行く。

「ロード、あなたの試合は見ていた。この九年で随分弱くなった。ムドウはおろかファンタにすら勝てない」

 着々と張り付けにされたロードに近づいて行くミハニーツ。

「ぐう……」

 ロードは耐えていた。さすがの審判も張り付けの判定は難しく、ミハニーツに点を与えなかった。

「あと、三点」

 ミハニーツが剣を振るのをやめるとロードが壁から落ちる。

「ぐう」

 ロードはまだ気絶してない。動ける。

「アレを見せて、準決勝で使ったあの身体能力を向上させる技」

 ミハニーツはロードの倒れた頭に剣の切っ先を突きつける。

「分かった」

 ロードは少しづつゆっくりと立って行く。

「極体!」

 ロードは剣を大振りに力いっぱい振り被った。そしてミハニーツの剣と接触する。

 ガキンと甲高い音が鳴るが、両手を使って剣を振るったロード、片手で剣を握って受け止めたミハニーツ。

「――――!!!? (――何だ、この力の差は極体を使っているんだぞ)」

 ロードは驚いていた。全身全霊の一撃を片手で止められたことに、

「これならその辺の魔王は倒せるかもね。けどまだ足りない。これじゃあ先日あった魔王と互角レベル。大魔王には勝てない」

「さっきから大魔王とか――キミは何が言いたいんんだ!」

「弱いってこと」

 ミハニーツが剣から力を抜く。すると剣に力を入れていたロードは前のめりになり、バランスを崩す。

「ここで気絶して……」

 ミハニーツは速攻で手刀を作りロードの首筋に与える。

 ここでロードは全身の力を首筋に集めて防御した。

「極体守護!」

 だが、ロードの身体はあまりの一撃に地面にめり込んだ。地面がその衝撃で割れる。いくら極体でも大きなダメージだった。

「ミハニーツ三点!」

 審判が叫ぶ。

「いい考えだった。けど、その技あまり使わない方がいい。私に勝つなら、その後の魔王戦に取っておかなくてはいけない」

 ミハニーツは少しアドバイスをする。

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

 ロードは地面に伏した状態で青い剣を振り被り、ミハニーツに不意打ちをかける。

 しかしミハニーツの視界にはその剣の軌道も動きも映っていた。その剣を手で掴み取る。

「――――!!!? (これでもこの距離でも見切るのか、極体状態のスピードだぞ!)」

「こんなことで驚いているのならまだ、魔王を倒すには早い」

 ミハニーツはロードを壁際まで蹴りつけた。吹っ飛んでいくロードは、薄れゆく意識の中でこう思った。

(強い、相手も勇者を名乗っていた。異世界にはこんなに強い勇者がいるのか……オレの故郷での鍛錬は何だったんだ)

 ロードは壁にぶつかり、転がり落ちる。

「審判、気絶した勝利宣言を……」

 審判がミハニーツに言われ、ロードの状態を確認しに行く。

「う、まだ、やれます」

 ロードが起き上がりながら言う。

「うん、ミハニーツ四点!」

 審判が叫ぶ。

 この時、
(えっ……今の蹴りは気絶させるつもりだった)
 スワンは思った。

「悪いな、今の一撃で決める予定だったみたいだが、あいにく回復力が高いんだ……ダメージを受けても気絶しなければこの通りさ……」

 ロードは立ち上がって見せた。

「生命力を使う力はもうヴィンセント先生に聞いている。いまさら驚かない。もう大人しく眠って魔王は私が倒すから」

 ミハニーツは剣を構える。

「そいつは出来ない相談だ。なにせオレは最強になって、最魔の元凶とやらをなんとかして、あらゆる異世界を魔王の手から平和に治すんだ」

「そんなことしなくていい……あなたは何もしなくていい。私が代わりに戦うから」

「そうか……どうせ負けるなら、見せてやろう。オレの最強の技を――」

「――――!?」

 ミハニーツは驚いた。ロードは極体状態を解いたのだ。

「行くぞ――」

 ロードが剣を上に掲げる。そして見る見るうちに青い剣に光が収束して巨大な剣となる。

 この時、
(ロードの本気だったら、受け止める)
 ミハニーツは思っていた。

「――――最初の一撃!!」

 ロードは巨大な25メートルの剣を振り下ろした。そしてミハニーツは片手で剣を受け止めた。しかし、その巨大な剣がミハニーツの腰を落とさせた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 ロードは両手に力を入れミハニーツを押していく。

 程なくして、巨大な剣は消え去った。ロードの全身全霊の一撃、もはや体力も残っておらず倒れないのがやっとだった。

 しかし、

「この一撃……本気を出してくれて私は嬉しい」

 ミハニーツの仮面が真っ二つに割れた。

「おっと! ミハニーツ選手の仮面が割れました。あの技は一体何なのか!?」

「アレは資料によりますと秘宝玉の力による殺傷能力を秘めた技です」

「では、この勝負ミハニーツ選手の勝利です!」

「ロード選手――禁止技の使用により失格と――――」

 審判が判定する刹那。

「――ギブアップ!!」

 ミハニーツが手を上げてギブアップを宣言した。

「――――!?」

 ロードは驚いた。

「ロード選手が使用禁止の技で失格。ミハニーツ選手がギブアップ。解説のキートさんこの試合はどうなるんですか?」

「この場合、審判がロード選手の失格宣言の前に、ミハニーツ選手がギブアップしたので、棄権試合となりロード選手の勝利となります」

「ということは……」

 ハズレが言う。

「かかしヤローの」

 グラスが言う。

「勝ちですか?」

 ドノミが言う。

「ルール上そうなるな」

 ブケンが言う。

「ロード……」

 スワンが言う。

「ミハニーツ選手棄権により、決勝戦の勝者はロード選手!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 観客たちが一斉に騒ぐ。優勝者が決まったことで、拍手と喝采が起きた。

「一時は反則負けとなりかけたロード選手! ハオストラ武闘大会の制覇を成し遂げました!」

「いや~~それにしても何でミハニーツ選手は棄権してしまったのでしょう?」

 ミハニーツが割れた仮面を取る。そこにロードが話しかけてくる。

「なんで、何で棄権した!?」

「…………ロード、私はあなたを信じたい。だからあの魔王を倒して……」

 ミハニーツはVIP席に座っている魔王を見上げた。

「けど、キミの勝ちだったはずだ」

「ロード、私に見せてあなたが最強になるところを……」

「ミハニーツ」

「うん、さっきのロードはかっこよかったよ」

 ミハニーツは仮面を持って去って行った。

 ロードはその場で崩れ落ちる。

(そうか……仮面を割っただけか、オレはまだまだ弱いな)

 ロードは眠りについた。
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