上 下
471 / 743
第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第471話 渾身の拳

しおりを挟む
 ターカウスは機械の目でロードの動きを見切っていた。
 更に煙の中から見つけ出す体温カメラや暗視眼を身につけていた。
 ロードは、ハズレの真似をした爆煙戦法は使えない。
 そして何より今食らったレーザービームの方をロードは気にしていた。
 片膝をついていた状態からロードは立ち上がる。

「何だ今の攻撃、見切れなかっ――――!!」

 その時、ロードは見たターカウスの手のひらから光子が漏れ出すのを、そしてとっさの判断で動いた。

 チュドーン!! ターカウスのレーザービームが聖法の壁に直撃し、ジュ~~~~と焼ける様な音を立てる。

「今の、どうやって躱した?」

 続けてターカウスはロードにレーザービームを放つが、それが撃たれる前より早く動くことで躱していた。

「ロード選手光の速さに等しいレーザービームを躱していく!」

「どうやって見切っているんでしょうか、ただ単に逃げ回っているだけでしょうか」

 ロードのレーザービームの攻撃が放たれ続ける。一発、二発、三発と連続で次々放たれる。

(あの手のひらの光子さえ見えていれば発射のタイミングはまるわかりだ。問題は横移動しかできず縦移動が出来なくて近づけないことだ)
(近づいて攻撃するのは……)

 ロードは自分の青い剣を見る。そしてロードは青い剣をターカウスに向かって投げ飛ばす。

「無駄だ……」

 ターカウスは向かって来た青い剣を、鉄の右腕で弾きあらぬ方向へ弾き飛ばした。

「ロード選手自らの剣を飛ばしたーー! だがターカウス選手は余裕で対応した!」

「これは悪手です。自らの武器を捨てるに等しい行い――――!?」

 その時解説が青い剣を見て驚いた。

「ミチル!」

 なんと青い剣は勝手に飛び回りターカウスに向けて飛ぶ斬撃を放っていた。

「――――!!」

 悲鳴こそ上げなかったものの、ターカウスは後ろから飛んできた飛ぶ斬撃に打撃を食らった。

「ロード四点!」

 審判が叫ぶ。

「何だこの剣……」

 ターカウスは再び青い剣が放って来た飛ぶ斬撃をローラースケートのスピードで躱す。

 そしてレーザービームを青い剣に向けて撃ち放った。そうすると剣はあらぬ方向へ弾き飛ばされた。

「ミチル!」

 精霊の剣の反応がない。ただ地面に突き刺さっていたのだ。


 ▼ ▼ ▼


 この時、
(ミチルが今の攻撃で気絶した)
 スワンが冷や汗をかきながら試合を見守っていた。


 ▼ ▼ ▼


「ロード選手! 青い精霊の剣を呼ぶが何の反応もなく困惑!」

「今の不意の一撃は良かったですが、剣が使えなくなりましたね」

 ロードはすぐさま落ちていた青い剣に近づこうとしたが、ターカウスに阻まれ、レーザービームの一撃が迫りくる。もうレーザービームは完全に見切っていたので、躱すのだが、ターカウスは腕を振り強引にレーザービームを剣の様に振るった。さすがのロードも驚いて距離を取る。

「うまいな、戦い方が……」

 ロードが相手を褒めた。

「光栄」

 ターカウスは言葉を受け取った。

(もはや剣を取りに行くのは困難、別の手を考えた方がいい)

 ロードは瞬きをせずターカウスの動きを見る。

「お前、強い、とっておきを出してやろう」

 ターカウスは胸部をパカッと開いて隠されたミサイルを射出した。

 二つのミサイルがロードに向かう。

「ここでターカウス選手、切り札を放った!」

「舐めたり油断もしてません。ここで確実に決めに行くつもりです」

 ロードは二つのミサイルを簡単に避けた。
 だが、避けたミサイルは起動を強引に変え、ロードへと向かって行く。

(な、なんだアレは? 精霊でも宿っているのか?)

「誘導ミサイルからは逃げられない」

 ターカウスが呟く中、レーザービームも忘れずに放つ。

「――――!!!?」

 ここでロードはターカウスの方を見て正解だった。光子が手のひらに集まり、レーザーの射出を見切った。

 レーザーが後ろのミサイルに当り、爆風でロードの身体はターカウスの方に吹っ飛んでいく。

 そこでロードはその勢いのまま、ターカウスに拳を振るう。ただの拳ではない。

「極体拳!」

 生命力を力に変換した強力な一撃だ。しかしターカウスは右手で受け止めた。

「――――――!?」

 あまりの力に右腕が弾かれたが防御は成立、おまけにロードを追って来たミサイルが二人に直撃した。

 ドカーーーーンっと大爆発が起きた。

「ターカウス三点!」

 そして、爆煙が晴れていくと、なんとロードがもう一回、極体拳をターカウスの腹部に食らわせる瞬間だった。

「極体拳!!」

 拳にまとわりつくのはロード渾身の生命力。それが振り被られ、激突した。

「――――ゴハッ!?」

 ターカウスは口からオイルを吐き出した。

「ロード五点! 勝者ロード!」

 審判が叫ぶ。

「おおっとロード選手、あれだけの爆発を直撃しながらも気を失わず、拳を振るったーー!」

「見事なまでの耐久力、あの爆発で気絶しないとは驚きました」

 ロードは剣を拾いに行き、ターカウスの前に並び立つ。

「優勝しろ」

 ターカウスは言う。

「分かった」

 ロードも一言。

「礼!」

 二人はお辞儀をして会場から出て行った。


 ▼ ▼ ▼


 そして、東門へと入って行くロードは受付に呼び出された。

「ロード様こちらへ」

「なんでしょう?」

 ロードが訊く。

「まずベストエイトおめでとうございます」

「はい」

「こちら、とある方からの武闘大会参加者への招待状です。今晩予定を開けてハオストラ会場の北にある塔へ向かってください。そこで小さなパーティーが開かれます。是非とも参加なさってと招待状の送り主は言いました」

「は、はぁ……」

 ロードは招待状を受け取った。

(パーティー、せっかくだ。参加して楽しんで来よう)

 今夜開かれるパーティーに参加することにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...