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第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第463話 ロードVS巨人のオオヅチ

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 控室。
 ロードはひとり考えていた。
 グラスとはハズレの試合を見た後別れた。
 グラスは観客席へ、ハズレはおそらく情報収集だろう。
 そして一人、机に手を組んで考えていた。

「ブケン一点!」

 映像越しに聞こえてくる審判の声。

(グラスは敗北した。相手が秘宝玉を使ったこともあってのことだが、オレはその秘宝玉の力をほとんど禁止されている)
(ハズレの戦いを見るに、ここから先は考えなしに相手に出来る様な能力者ではないはずだ)
(アーティモリさんとの試合でも思ったが、オレにはミチルの斬撃ぐらいしか攻撃手段がない)
(これを見切られたり対策されたりするとなす術はない)
(最悪の場合アカを出す手もある、猛獣使いが参加してたところを見ると出していいと思うけど……)
(契約書にアカの名前や能力を記載した覚えがない)
(それにアカを出したとしてもその試合限り、また数日は眠りにつく)
(出すとしたら決勝戦か、魔王戦か)

「ブケン二点!」

 ロードが審判の声を聞いていると、冷たいものが首筋に当たった。

「――――!!!?」

 椅子ごとガタンとロードが倒れた。

「大丈夫?」

 冷たい物の正体はスワンの手だった。

「ブケン三点!」

 審判の声が聞こえる。

「どうしたの? 私がこっそり近づいて来たのに隙だらけだったよ」

 スワンが隣の席に座り弁当を食し始める。

「スワン、飲料水の売り子は?」

「お腹空いたから休憩、それより考え込んでたみたいだけどどうしたの?」

 スワンは箸でおかずを取り食べる。

「いや、ハズレやグラスの試合を見ていてオレはどうしたらいいかと思っていた」

「いつも通りでいいんじゃない?」

「ハズレの試合を見たか? あそこまで必死にならないと勝てない試合だった」

「確かに見てたけど、ロードには最初の一撃があるじゃない」

 スワンが軽く言う。

「それは禁止って受付の人に言われた」

「えっ!? なんで!?」

「プロテクトオイルをすり抜る攻撃と判断されたらしい」

「……昨日言ってたオイルシャワーの事? それがすり抜けるとどうなるの?」

「相手選手に殺傷力のある攻撃になるらしい」

「でも、ミチルの力は使えてたでしょ……」

「秘宝玉の力は特別らしい」

「ふ~~~~ん、それで新技を考えていたんだ」

 スワンが納得する。

「ブケン四点!」

 映像越しの審判が叫ぶ。

(新技……)

 ロードはブケンの試合を見ていた。相手は昆虫人のビートル、頭に触覚が生え、目の模様はハエのよう、加えて口が縦に開く異形な者で、奇妙な液体や網を飛ばして来る。

 しかしブケンのスピードには追い付かずやられる一方だった。

「これだ……」

「何?」

「スワンこれだ! ありがとう!」

「えっ、何が?」

 スワンは箸を止めた。

「ブケン五点! 勝者ブケン!」

 ロードは控室から飛び出していった。

 この時、
(何かいい技思いついたのかな~~)
 スワンは思いながら食事を再開した。

 そのロードとスワンのやり取りを、仮面の女性ミハニーツが壁際で見ていた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ハオストラスタジアム・東門前。
 早速受付に行って見るロード。

「あの~~すいません、今から追加の能力を付け足すって可能ですか?」

「あらロード様、はい可能ですが……申込用紙に申請しなくてはいけません」

「わかりましたすぐに書きます」

「少々お待ちください、ただいま持ってまいります」


 ▼ ▼ ▼


「こちらが申請用紙になります」

 受付の人が優しく手渡す。

「はい」

 早速ロードは申請書に記入していく。

「ロード様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「はい?」

 筆を走らせながら訊くロード。

「ロード様がお持ちになっている赤い剣、秘宝玉の力は備わっていませんか?」

「いえ……どうしてそう思ったんです?」

「アーティモリ選手との試合でマントごと聖法のバリアに突き刺さりました……普通ではバリアが貫通するなど、秘宝玉の力意外に考えられないのです」

「そう言われましても……心当たりがありません」

「少し拝借しても?」

「構いません」

 ロードは赤い剣を受付に渡す。そして受付嬢がメガネを掛けて赤い剣を検査する。

「…………これは秘宝具ですね。ご自身で生み出したものですか?」

「? いえ、貰いものです」

「そうですか……なら今後この剣は使うことを控えるよう大会の運営委員の一人として預かっておきます」

「どうして!?」

「これが秘宝玉によりつくられた秘宝具だからです。幸いアーティモリ選手は怪我をせずに済んだから良かったですが、今後もそうはいきませんこの剣は没収させていただきます」

「……秘宝玉によって生まれた剣?」

「そうです……」

「……分かりました。それがルールなら従います」

 ロードは追加の能力を申請書に書き終えた。

「承りました」

 受付嬢が言う。

「さぁ! Dブロックの試合です! ロード選手対オオヅチ選手まもなく入場です」

 実況者の声がした。

「あっ出番ですね。すぐに申請して来ますので頑張ってください」

 受付嬢が急いでその場を立ち去った。

 ロードは東門の前に立つ。ほどなくして門が開く。

「東門から入場してきたのは二戦とも圧倒的な技で完全勝利したロード選手! 対して西門から入場してきたのはそのヘビー級の攻撃で相手をノックダウンさせてきたオオヅチ選手!」

「両者ともかなりの実力者ですね。いい戦いが見れそうです」

 審判の前に並ぶロードと、身長2メートルの丸腰の男が並んだ。

「礼!」

 互いに無言で見つめ合い、構える。

「始め!」

 審判が赤旗を振り下ろすと、両者が動く。

「ミチル!」

「まずはロードの先制攻撃! 飛ぶ斬撃がオオヅチ選手に向かいます!」

「フン!」

 オオヅチは飛ぶ斬撃を、手の甲に備え付けていた鎧によって弾いた。

「オオヅチ選手、ロード選手の飛ぶ斬撃を対策して来ましたね」

「ということはロード選手、少し余裕がないかーー!」

「お前さんの攻撃は前の試合を見て対策済みだぜーー!」

 オオヅチがロードに拳を振るうが、その拳を難なく片手で受け止めた。

 この時、
(バカな、オレの拳は750キロのパンチを片手で受け止めた)
 オオヅチは驚愕した。

「試合前に申請できてよかった。いや、思いついてよかった」

 ロードが言う。その身体は光り輝いていた。

 オオヅチが下がる。

「調子に乗んなよ!」

 オオヅチがその身体をどんどん巨大化させていく。

「出ました! 巨人の血を引くオオヅチ選手! 聖法のバリアの天井ギリギリまで巨大になったーー!!」

「これはロード選手苦しむのでは? うん?」

「大きいな……」

 ロードが呟く。

「デカいだけじゃない! オレの力はさっきの倍以上の力だ!」

 10メートル級の巨人になって再び拳を叩き込むオオヅチ。しかし、ロードは片手で止めて見せた。

「ロード選手! 潰れるかと思いきやまたも片手で拳を掴み取りました」

 実況が言う中。

「ただいま緊急で申請されたロード選手の秘宝玉の能力ですが、名を極体……生命力を力に変換して身体能力を向上させるというものです」

 解説が説明する。

「な、何?」

「済まないな。試させてもらうぞ……」

 ロードが拳を引っ張ってオオヅチを持ち上げて、脳天から地面にたたきつけた。

「――うがっ!」

 オオヅチが気絶した。審判が様子を見に行き、

「ノックダウン! 勝者ロード!」

 審判が判定した。ロードはオオヅチに向かって礼をしその場を後にした。


 ▼ ▼ ▼


 控室。

「す、すごい」

 弁当を食べていたスワンが呟き、

 後ろの方にいた仮面の女性ミハニーツが、

「まさか――――そんな」

 驚いていた。
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