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第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第460話 グラスVS聖剣士のライズ

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 Dブロックの試合も終わり、第二回戦は終了した。

 しかし各選手たちには第三回戦が控えていた。それぞれ昼食を合間にとって自分の番を待っている。

 ロード、グラス、ブケンは試合を観戦していた。

 Aブロックの試合が消化されて行き、とうとうグラスが立ち上がった。

「行ってくる」

 グラスがぼそっと言う。

「応援してるぞ……」

 ロードが言う。

「健闘を祈る」

 ブケンも言う。

 そしてグラスは観客席を抜け消えて行った。

 しばらくして観戦していた試合も終わり、次の試合に移る。

「さぁ! お待ちかねの試合がやって来ました! 注目の対戦カードです! 東門から入場して来るのはファンも多いことでしょう! ライズ選手の入場です!」

 キャーーーーーー! 女性の観客たちがライズ選手へと声援を送る。

「優勝候補と言われるライズか……」

 ロードが真剣な眼差しでその素顔を見つめる。整った顔立ちと金髪のキレイにサラッと切りそろえられた髪が輝く。武器は腰に一本の剣を提げていた。

「さぁ! 西門から入場するのは猛者たちを倒してきたグラス選手です! 一回戦はグロック選手を気絶させ、二回戦はモンカミ選手をくだしました!」

「いやーー戦闘センスは抜群にありますよ。しかし今回は相手が悪いでしょうね」

 今までグラスを褒めていた解説が、ライズの入場でそう言う。

 両者はあと数歩のところまで近づいた。

「礼!」

 グラスとライズはお辞儀をする。

「いい試合をしよう」

 ライズが言う。

「できねーー提案だ。オレは荒っぽいからよーー」

 グラスが皮肉を言う。

「フフフ、建て前さ……」

 ライズは冗談を言っていたのだ。

「始め!」

 審判が赤旗を振り下ろす。

 ライズが剣の柄を掴み、引き抜く。

 グラスは優勝候補ということもあって最初から本気の状態、全ての指に短剣の輪っかを引っかけ、右手に五本、左手に五本、口に五本の短剣を咥え構える。

「まるで狩猟をする肉食動物の目だ」

 ライズは剣一本を緩やかに構える。

「どちらかと言えば、オレは草食系だ……」

「キミ、面白いな」

「そっちは何を見せてくれる!」

 グラスは全ての短剣をライズに向かって飛ばす。

「な、何だ! 何だ! グラス選手今まで見たこともない構えを取ったーー!」

「彼の本領発揮なんでしょうね……獣の勘と言うかなんというか優勝候補に対して、決して甘く見ない姿勢です」

 ライズはいくつかの短剣を剣で弾き、避けて行く。

「山嵐!」

 グラスが放ったいくつかの短剣は地面に突き刺さり、短剣を引っ張る力で地面をひっぺがえした。そしてその地面はライズに向かう。

「はぁーー!!」

 ライズは地面の中心点を正確に突き、刺し割った。そして瓦礫を剣で弾き、避けて行く。

「隙ありーー!!」

 グラスは自慢のスピードで手刀を作り、必殺の一撃、十六夜を披露しようとしていた。

「――――――」

 ギンとライズがグラスの目を見る。その時グラスは本能的に後ろへ下がった。

 この時、
(――!? 何だ奴の今のプレッシャーは――)
 グラスは全ての短剣を引き戻し間合いを取った。

「臆したな……」

 ブケンが呟く。

「流石優勝候補なだけはある」

 ロードも相手を冷静に見ていた。

 ザリッと地面を削る音がした。グラスが足を引いているのだ。

 この時、
(こいつ、かかしヤロー並みに強いかもしれねー)
 グラスはかつて、ロードにぶっ飛ばされたことを思い出す。

「面白い構えと技だ……いいモノを見せてもらったお礼に、こちらも見せよう」

 ライズが正面に剣の刀身を構えて見せる。

「この距離なら見物するには丁度いい」

 グラスは憎まれ口をたたく。

「本当に面白い――――照らせ、日よ」

 その時、ライズの剣が光り輝いた。その光は正確にグラスを捉え、目の神経へと侵入していった。

 この時、
(なんだ……いきなり真っ白な景色に……)
 グラスの視界は真っ白で、自分の武器も腕も足元の地面さへ真っ白に染まっていた。

「がぁ!!」

 グラスは腹部に打撃を感じた。

「ライズ一点!」

 審判が叫ぶ。グラスはわけが分からない顔をしていた。

「これはこれは! ついに出たかーー!」

「日光の秘宝玉――技名、日光剣――相手の目を潰す技」

「ぐおっ!」

 今度は首に痛みが走った。

「ライズ二点!」

 審判が叫ぶ。

 この時、
(ふざけるな、秘宝玉だと?)
 朦朧とする意識の中でグラスは思っていた。

 今度は蹴りを受けて、身体が大きく仰け反る感覚に見舞われたグラス。

「ライズ三点!」

 審判が叫ぶ。

「これが僕の見せられる世界だ」

 ライズがグラスの腹部を思いっきり踏みつけた。

「ライズ四点!」

 審判が叫ぶと――

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 グラスが叫んだ。声にすくんだライズは、一歩二歩と後ろへ下がる。

「そこ――だ!」

 グラスは全ての短剣を足音の鳴った方向へ投げた。当たった感触が一つ。

「グラス一点!」

 審判が叫ぶ。

「うん、面白かった」

 ライズの一言を聞いたグラスは、剣の一太刀を浴びて倒れ伏した。

「……ノックダウン! 勝者ライズ!」

 審判が宣言すると、観客たちがわーーーー!! と歓声を贈る。

「視力はじきに回復する」

 ライズは倒れたグラスに近づいて礼をした。

「やりましたーー! ライズ選手! 秘宝玉の力で圧倒しましたーー!!」

「グラス選手も目が見えない状態で、よく音を聞き攻撃しました。すばらしい試合でした」

 実況と解説が言う。

 ライズは東門の中へと消えていき、グラスは担架で運ばれて行った。

(グラス……一矢は報いたな)

 ロードが口角を吊り上げ、目元を緩ませた。
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