上 下
458 / 774
第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会

第458話 ブケンVS聖職者のセイジ

しおりを挟む
 Cブロックの試合を見ていたロードとグラス。

「いよいよだな……」

 電光掲示板に表示された二人の名前を見て言う。

「ブケン対セイジ……か……」

 グラスが呟く。

「さぁ! 東門から出てくるのはドノミ選手を圧倒したブケン選手! そしてそして西門から出てくるのは数々の聖法使いの大会で優勝や準優勝の経歴を持つ聖職者セイジ選手! 今大会のでデビュー戦も相手は何も出来ずに終わりました! 果たしてこの試合はどうなるのか!」

「おい、せいほう使いだとよ」

 グラスが言う。

「ああ、どんな技が出て来るか楽しみだ」

 門から歩いてきたブケンとセイジが面と向かう。

「礼!」

 審判が言うと両者はお辞儀をする。

 ブケンが拳を、セイジが錫杖を、互いが構えると、

「始め!」

「聖法第4条――――ごあ!」

 セイジが何かを唱えていたが、

「遅い――――!」

 ブケンがセイジの顔面を殴りつけた。

「ブケン一点!」

「くっ――――聖法――」

 受けた箇所を手で押さえながら、ぼそぼそ呟くセイジ。

「だから遅い――」

 ブケンがセイジの顔面を殴りつけた。

「ブケン二点!」

「おっとこれはどうしたことか! セイジ選手何も出来ません! 解説のキートさんこれをどう見ます?」

「セイジ選手が何もしないというより、ブケン選手が何もさせないように攻撃してますね。なにせ相手は聖法使い……何をしてくるか分かりませんから」

「ブケン三点!」

 またもブケンが顔を殴りつける。

 しかし、セイジはぼそぼそと口で何かを唱えていた。

「たぁーーーー!」

 ブケンがセイジの顔面を殴りつける。

「ブケン四点!」

「ここでブケン選手リーチ! セイジ選手ブケン選手の前になすすべがありません!」

 ブケンが最後の拳を振り上げたとき、

「――神々は守護する――化身のお守り」

 その時、ブケンの拳は阻まれて、広がる球状の聖なる力に吹き飛ばされた。セイジの有効ダメージかと思いきや態勢を整えたブケンが構える。そして――

 この時、
(壁か……)
 ブケンは思った。

「出ました! 聖法! これで勝負は分からなくなりました!」

 実況者モスが興奮する。

「化身のお守り、これは術者が相手に近づけないようにするための壁を張る聖法です。これを利用して数々の聖法を撃つ気でしょう」

「しかし、突然聖法が発動したのはどういうことでしょう」

「ブケン選手に顔を殴られながらも、詠唱を続けていたんでしょうね」

 解説するキート。

「さぁ、ここからが僕のターンだ!」

 セイジの言葉に耳を傾けるが、ブケンは拳で壁を殴り続ける。

(どうするブケン?)

「何をしても無駄さ、四点取られるのは織り込み済み、あとはここから攻撃し続ければ僕の勝ち」

 ブケンは拳の構え方を変える。

「これでもそう言えるか?」

「?」

「はぁーーーー!」

 ブケンが拳を前に突き出す。すると拳は壁に阻まれたが――

「何をしても無――ぐあ!」

 セイジが吹っ飛ばされた。

「ブケン五点! 勝者ブケン選手!」

 観客たちがわーーーーっと歓声を上げる。

「ブケン選手の攻撃がセイジ選手にクリンヒット! しかし壁を張っていたのにどうして攻撃が通ったのでしょう? それも離れたところからの拳が……」

「聖法を覆す力は結構ありますが、今のはブケン選手の秘宝玉の力ですね」

「なるほどなるほど、ブケン選手はまだ奥の手を隠しているみたいですね。これは第三回戦も楽しみです」

「礼!」

 ブケンとセイジがお辞儀をする。

「油断したまさか秘宝玉使いだったとは……」

「こっちもだ。殴られ続けても詠唱はやめなかったんだな」

 言葉を交わして、両者は踵を返し会場から立ち去った。

「せいほう、全然見られなかったが……」

 グラスが言う。

「ブケンも秘宝玉を持っているのか……」

 重大な事実を知った。


 ▼ ▼ ▼


 観客席。
 ブケンが戻ってくる頃。

「間に合ったか……」

 電光掲示板フンカー対ギュウと表示されていた。

「遅かったな……どこ行ってたんだ?」

「いや、取材陣たちに囲まれてなかなか道を通してくれなかったんだ。それより始まるか」

「んだ? この試合に興味があるのか?」

 グラスが訊く。

「ああ」

 ブケンが頷く。

「さぁCブロックの試合がまだまだ続きます! 東門から出てくるのは5年前のハオストラ大会優勝者、ご老人フンカー選手です! そして西門から出てくるのは3メートルの巨体の牛の獣人ギュウ選手です!」

「優勝候補のフンカー選手、五年ぶりの大会ですが身体がなまっていないといいですね」

 実況と解説が話す。

「もしかして、あのフンカー選手の試合が見たいのか?」

 ロードが訊く。

「ああ、なにせあの人は5年前オレを瞬く間に倒してくれた心の師匠だからな」

 ブケンが言う。

「礼!」

 ギュウ選手は構えるが、フンカー選手は背中越しに腕を回したままだった。

「始め!」

 そして、ブケンの試合と同じように、フンカー選手は瞬く間に五点取り、ギュウ選手に勝利した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。 しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて…… テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...