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第九章 正々堂々と実力を発揮する武闘大会
第450話 グラスVSドワーフのグロック
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第1回戦から白熱する数々のバトル。
ハズレは何やら情報取集を、スワンは美味しい水の売り子をしていた。
そしてついに、ロード組最初の一人が出陣しようとしていた。
「それでは次の試合に移りましょう! 東の門からーーグラス選手ーー入場でーーす」
実況モスの言う通り、グラスが開いた門から姿を現した。
「いよいよグラスさんの戦いですけど……大丈夫でしょうか」
「ドノミさん、アイツは勝つよ」
ロードが言う。
「さて、お手並み拝見」
ブケンが呟く。
「西の門からーー対するはーーグロック選手の入場でーーす」
何やら斧を手に持った、ロードたちの腰くらいまでの背丈の人が現れた。
「えっほえっほ」
グロックが小走りにやって来る。
「グロック選手はドワーフ界からやって来た、なかなかの強者の様です。経歴にはドワーフ大会準優勝やベストフォーの実績がいくつかあります。対してグラス選手、実績は全くの空欄これは勝負あったか!? 解説のキートさんどう思われます?」
「グラス選手の貧困の過酷な生活世界というところが気になります、これは常日頃から命を狙われる境遇の人物かと……」
「なるほど、一筋縄ではいかないかもしれないと、これは気になる試合です」
実況モスが盛り上げる。
「両者! 前へ!」
審判の男がグラスとグロックに言う。
「暗い顔をしているな……緊張してるなら棄権した方がいいぞ」
グロックが言う。
「……小せーわりに力持ちなことだ」
グラスがドワーフの身の丈ほどある斧を見て言う。
「礼!」
審判の掛け声でグロックはお辞儀する。対してグラスは立ったままだった。
「おっとグラス選手、礼をしないぞどうしたんだ!?」
「恐らく彼の出身界では礼という規律がなかったのでしょう」
「なるほど、がむしゃらに生きて来た礼儀作法の知らない世界から来たという訳ですか……おっと審判の方が優しく礼の仕方を教えています」
モスの声が会場に響き渡る。
そして審判の指導の元、礼をするグラス。
「それではグラス対グロック試合始め!」
審判が赤旗を振り下ろす。試合が始まった。
グロックが背中に担いだ斧を構える。
一方グラスはただ立ったままだった。
「隙だらけだぞーーひょろいのーー」
グロックが斧を横なぎに振る。しかしグラスには当たらなかった。それは一歩後ろへ下がったからだ。
「おっとグラス選手! グロック選手の先制攻撃を避けたーー!」
「もう始めていいのか?」
グラスが問うが答えはいらない。腰に提げていた5本の短剣の輪に指を引っかけて構えるグラス。
「変わった持ち方をするな……」
グロックが様子を見ている。
そしてグラスが短剣を5本、あらぬ方向へ投げ飛ばす。この時輪っかは手の指に引っ掛かったままだった。
「グラスの奴……アレをやる気だな」
ロードが言う。
「何です? 相手に当てなくていいのですか?」
ドノミが訊く。
「まぁ、グラスの戦い方は荒っぽいんだ」
審判の男がイヤな予感がしたのか下がる。
「どこ狙ってんだノーコンヤロー!」
グロックが間合いを詰めてくる。
「うるせーんだよ! チビやろーーーー!!」
「――なっ!」
「おっと、グロック選手の動きが止まったーー!」
「自分のコンプレックスを言われたがために精神的な急所に刺さったのでしょう」
「なるほど、育ちの悪い世界ならではの罵倒という訳ですか……?」
「山嵐!!」
グラスが糸を引いた短剣を引っ張った。すると短剣に刺さっていた地面が持ち上がり、隙だらけのグロックの真上に落とされていく。2メートルほどの地盤、勝負あったかに見えたが――
グロックは斧を真上に構え、上から来る地盤を真っ二つに割った。
「面白い攻撃だ」
鼻のデカいグロックが言う。
「ちっ」
舌打ちするグラスは即座に短剣を引き戻す。
「それぐらいならオレでもできるけどな」
グロックが足場に斧を突き刺した。そして持ち上げると地盤ごと引っこ抜いた。まるでフォークで刺したイチゴを持ち上げるかのように簡単だったが、グラスは隙を見逃さなかった。
グラスは短剣を投げ飛ばす。今度はグロックの周りにだ。
「また外してるぞ、さっきと同じ攻撃か? どっちでもいいけどくらえ!」
グロックは斧に突き刺さった地盤を投げ飛ばした、グラスはそれを容易にかわして、グロックの周りを走っていく。するとグロックはあることに気が付いた。その時には遅かった。
「おっとグラス選手! グロック選手の周りを回る回る!」
「これは短剣の仕掛け糸によってグロック選手を縛り上げる作戦でしょう。あの手持ちの斧のせいで簡単な移動やジャンプは重さによって封じられてしまいますからね」
「なるほど、キートさんの言う通り、グラス選手がグロック選手の周りを走り回ってその身体を、何重にも糸で縛り上げていっています!」
グラスの狙いは短剣の糸による拘束。そしてとどめの一撃。
「こ、この――」
腕力で縛られた身体をどうにかしようとするグロック。
「とどめだ」
縛り終わって身動きの取れないグロックに、グラスが宣告した。
「ま、待て――」
「十六夜」
グラス必殺の手刀がグロックの腹に食い込み、白目をむいて気絶する。
グラスが短剣を引き戻す。
「今の一撃は利きますね」
解説のキートが言う
「審判……気絶はオレの勝利だろ?」
「――しょ、勝者、グラス選手」
「決まったーーーー! 斧使いグロック選手を破ったのは短剣使いのグラス選手だーー!!」
実況者モスが言うと、観客席は拍手と喝采で埋め尽くされた。
「凄い戦い方しますね……」
ドノミが圧巻されていた。
「相変わらず荒っぽいな」
ロードが呟く。
「………………やるな」
ブケンも拍手を送る。
ハズレは何やら情報取集を、スワンは美味しい水の売り子をしていた。
そしてついに、ロード組最初の一人が出陣しようとしていた。
「それでは次の試合に移りましょう! 東の門からーーグラス選手ーー入場でーーす」
実況モスの言う通り、グラスが開いた門から姿を現した。
「いよいよグラスさんの戦いですけど……大丈夫でしょうか」
「ドノミさん、アイツは勝つよ」
ロードが言う。
「さて、お手並み拝見」
ブケンが呟く。
「西の門からーー対するはーーグロック選手の入場でーーす」
何やら斧を手に持った、ロードたちの腰くらいまでの背丈の人が現れた。
「えっほえっほ」
グロックが小走りにやって来る。
「グロック選手はドワーフ界からやって来た、なかなかの強者の様です。経歴にはドワーフ大会準優勝やベストフォーの実績がいくつかあります。対してグラス選手、実績は全くの空欄これは勝負あったか!? 解説のキートさんどう思われます?」
「グラス選手の貧困の過酷な生活世界というところが気になります、これは常日頃から命を狙われる境遇の人物かと……」
「なるほど、一筋縄ではいかないかもしれないと、これは気になる試合です」
実況モスが盛り上げる。
「両者! 前へ!」
審判の男がグラスとグロックに言う。
「暗い顔をしているな……緊張してるなら棄権した方がいいぞ」
グロックが言う。
「……小せーわりに力持ちなことだ」
グラスがドワーフの身の丈ほどある斧を見て言う。
「礼!」
審判の掛け声でグロックはお辞儀する。対してグラスは立ったままだった。
「おっとグラス選手、礼をしないぞどうしたんだ!?」
「恐らく彼の出身界では礼という規律がなかったのでしょう」
「なるほど、がむしゃらに生きて来た礼儀作法の知らない世界から来たという訳ですか……おっと審判の方が優しく礼の仕方を教えています」
モスの声が会場に響き渡る。
そして審判の指導の元、礼をするグラス。
「それではグラス対グロック試合始め!」
審判が赤旗を振り下ろす。試合が始まった。
グロックが背中に担いだ斧を構える。
一方グラスはただ立ったままだった。
「隙だらけだぞーーひょろいのーー」
グロックが斧を横なぎに振る。しかしグラスには当たらなかった。それは一歩後ろへ下がったからだ。
「おっとグラス選手! グロック選手の先制攻撃を避けたーー!」
「もう始めていいのか?」
グラスが問うが答えはいらない。腰に提げていた5本の短剣の輪に指を引っかけて構えるグラス。
「変わった持ち方をするな……」
グロックが様子を見ている。
そしてグラスが短剣を5本、あらぬ方向へ投げ飛ばす。この時輪っかは手の指に引っ掛かったままだった。
「グラスの奴……アレをやる気だな」
ロードが言う。
「何です? 相手に当てなくていいのですか?」
ドノミが訊く。
「まぁ、グラスの戦い方は荒っぽいんだ」
審判の男がイヤな予感がしたのか下がる。
「どこ狙ってんだノーコンヤロー!」
グロックが間合いを詰めてくる。
「うるせーんだよ! チビやろーーーー!!」
「――なっ!」
「おっと、グロック選手の動きが止まったーー!」
「自分のコンプレックスを言われたがために精神的な急所に刺さったのでしょう」
「なるほど、育ちの悪い世界ならではの罵倒という訳ですか……?」
「山嵐!!」
グラスが糸を引いた短剣を引っ張った。すると短剣に刺さっていた地面が持ち上がり、隙だらけのグロックの真上に落とされていく。2メートルほどの地盤、勝負あったかに見えたが――
グロックは斧を真上に構え、上から来る地盤を真っ二つに割った。
「面白い攻撃だ」
鼻のデカいグロックが言う。
「ちっ」
舌打ちするグラスは即座に短剣を引き戻す。
「それぐらいならオレでもできるけどな」
グロックが足場に斧を突き刺した。そして持ち上げると地盤ごと引っこ抜いた。まるでフォークで刺したイチゴを持ち上げるかのように簡単だったが、グラスは隙を見逃さなかった。
グラスは短剣を投げ飛ばす。今度はグロックの周りにだ。
「また外してるぞ、さっきと同じ攻撃か? どっちでもいいけどくらえ!」
グロックは斧に突き刺さった地盤を投げ飛ばした、グラスはそれを容易にかわして、グロックの周りを走っていく。するとグロックはあることに気が付いた。その時には遅かった。
「おっとグラス選手! グロック選手の周りを回る回る!」
「これは短剣の仕掛け糸によってグロック選手を縛り上げる作戦でしょう。あの手持ちの斧のせいで簡単な移動やジャンプは重さによって封じられてしまいますからね」
「なるほど、キートさんの言う通り、グラス選手がグロック選手の周りを走り回ってその身体を、何重にも糸で縛り上げていっています!」
グラスの狙いは短剣の糸による拘束。そしてとどめの一撃。
「こ、この――」
腕力で縛られた身体をどうにかしようとするグロック。
「とどめだ」
縛り終わって身動きの取れないグロックに、グラスが宣告した。
「ま、待て――」
「十六夜」
グラス必殺の手刀がグロックの腹に食い込み、白目をむいて気絶する。
グラスが短剣を引き戻す。
「今の一撃は利きますね」
解説のキートが言う
「審判……気絶はオレの勝利だろ?」
「――しょ、勝者、グラス選手」
「決まったーーーー! 斧使いグロック選手を破ったのは短剣使いのグラス選手だーー!!」
実況者モスが言うと、観客席は拍手と喝采で埋め尽くされた。
「凄い戦い方しますね……」
ドノミが圧巻されていた。
「相変わらず荒っぽいな」
ロードが呟く。
「………………やるな」
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