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第八章 スライム達の暮らす可愛らしい異世界
第424話 秘宝玉の選定
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魔王祭は終盤を迎えていた。最終試練も終わり、いよいよ魔王祭の本番、秘宝玉選定が行われる時が来た。
会場に残ったのは20匹のスライム。1500の中から難関を乗り越えた猛者たちだった。
観客席がざわつく。ホーン魔王国のティアーラ姫が会場の上に続く壇上に佇んでいた。
姫の周りにはノッポ大臣と数名の衛兵、そして秘宝玉が壇上に置かれていた。
「選定式の始まりだ! 障害物競走を1番から順にゴールした者から並んでもらう。皆の中から新しい魔王が誕生することを期待する」
衛兵長が最後の言葉をかける。
「ぬん!」
まずはビッグスライムが階段を上がっていく。その凄まじい巨体はまさしく魔王に相応しい。彼こそが魔王になるのではと観客たちは話していた。
「すげーデカいよな」「アレがホントにシンプル系か」「魔王は決まったも当然だな」「さっきの障害物競走もぶっちぎりの1位だったし」「新魔王の誕生だ」
観客はもう魔王が決定した気でいた。
「ぬん!」
ビッグスライムが壇上の前に立つ。
「うむ、一番乗り見事シンプル系スライムよ。さぁ秘宝玉を取るがよい」
大臣が壇上の上の秘宝玉を取るよう促す。
「よし!」
ビッグスライムは透明色の秘宝玉を手にした。そして観客たちにも見えるように掲げた。
「おお!」「あれが秘宝玉」「あなた見に来てよかったわね」「ああ、あの小さいスライムの坊やに取ってもらいたいが、これは決まりかな」
観客たちがざわめくこと30秒。秘宝玉は何の反応も示さなかった。
「ぬん?」
ビッグスライムが不思議がる。
「もうよいであろう。秘宝玉を壇上に置きなさい」
ノッポ大臣の言う通り、ビッグスライムは秘宝玉を置いた。つまり秘宝玉に選ばれるだけの才能がなかったのだ。
「ぬん…………」
落ち込みながら階段を下るビッグスライム。彼の魔王祭は終わった。
「やったーーチャンスだ!」
シンプル系スライムがビッグスライムと入れ違いに壇上まで駆け上る。
「2着目のもの秘宝玉に触れよ」
ノッポ大臣が言う。
「これでオレは魔王だ! 見てるか息子よ! 母さんよ!」
シンプル系スライムが叫ぶがまったく反応しない。
「次だな……」
ノッポ大臣が2着を取ったシンプル系スライムに宣告する。
「とほほ……」
ガックリとしたシンプル系、アニマル系スライムと階段ですれ違う。
「やっぱり、シンプル系とじゃあ俺たちの方がカリスマ性が違うんだよ」
アニマル系スライムが壇上の前にやって来て秘宝玉をぶんどる。
「おお、なんという気迫これはもしや――――」
ノッポ大臣が口にすること数十秒、秘宝玉は何の反応も見せなかった。
「アレ?」
掲げた秘宝玉を見るアニマル系。
「壇上に返しなさい」
返上を求めるノッポ大臣だった。
それからというものシンプル系とアニマル系が代わる代わる壇上まで行き、秘宝玉に触れたがまったく反応しない無色透明のままだった。
「ああ~~オレの祭りが~~」「そんなここまで頑張ったのに」「やっぱり年か……」「秘宝玉何故だ~~」
次々と秘宝玉選定達が会場を後にしていった。
そしてついに残ったのは、ホラー系スライムとシンプル系スライムだった。
一方は卵の殻を被ったスライム。もう一方は小さな子供のスライムだった。
「ホラー系頑張れーー!」「頼む魔王になってくれ」「今年こそ魔王誕生を」「お願いしますーー」
卵の殻を被ったスライムが階段を登って壇上に近づいて行く。
この時、
(お願い、反応しないで、トンガリにチャンスを与えて……)
スワンは心の底から思っていた。
そして、
(あのスライムが魔王になれなかったらオレの番か、あ~~ドキドキしてきた)
トンガリが緊張していた。
「さぁ、秘宝玉に触れてくれ」
ノッポ大臣が、到着した卵の殻を被ったスライムに早速催促した。
ホラー系スライムが手のようなものを伸ばす。そして、秘宝玉を引き込んだ。
その時――引き込んだ秘宝玉を表に出すと――
――――黒く輝く秘宝玉が現れた。
秘宝玉が反応したのだ。
「おおーーーー!!」「輝いてる黒く輝いてる!」「魔王の誕生だーー!」「この日を何年待ったことかーー!」
観客たちは大盛り上がりだった。
「ああ~~~~終わった」
トンガリがその場で溶ける。
「そんな、魔王が決まったの?」
スワンが遠目に黒く輝く秘宝玉を見ていた。
「えーーおほん! こたびの魔王祭の主役は――――」
ノッポ大臣がそう語ろうとした時だった。壇上の上に上がる卵の殻を被ったスライム。
「あ~~~~、これで名実ともに俺様の魔王かが決まった! お前たちこれからはオレを魔王と呼び、オレの為だけに働け!」
ホラー系スライムがそう宣言する。
――その時だった。上空から何者かがやって来た。
「アレはフットチーム!」
スワンは見覚えのあるリーダーの顔を見た。そしてそいつは卵の殻を被ったスライムの持つ秘宝玉をいともたやすく奪って退散していった。再び上空を飛んで、
「な、何だあやつは!? 秘宝玉を持ち逃げした! 衛兵衛兵追いかけるのだ!」
ノッポ大臣は衛兵たちに命令する。
「………………返せ、俺様の秘宝玉を返せ!」
「――――あ、あの~~スライムさん?」
ホーン魔王国のティアーラ姫が声を掛けようとした時、
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
卵の殻を被ったスライムが異形な形になった。それはまるでウーパールーパーとクモを足したような形をし、背中からはなん十本もの触手が伸びていた。
「この魔王バグバニッシャー様の秘宝玉を返せええええええええええええええええええええええええええええ!!」
咆哮を上げる魔王だった。
会場に残ったのは20匹のスライム。1500の中から難関を乗り越えた猛者たちだった。
観客席がざわつく。ホーン魔王国のティアーラ姫が会場の上に続く壇上に佇んでいた。
姫の周りにはノッポ大臣と数名の衛兵、そして秘宝玉が壇上に置かれていた。
「選定式の始まりだ! 障害物競走を1番から順にゴールした者から並んでもらう。皆の中から新しい魔王が誕生することを期待する」
衛兵長が最後の言葉をかける。
「ぬん!」
まずはビッグスライムが階段を上がっていく。その凄まじい巨体はまさしく魔王に相応しい。彼こそが魔王になるのではと観客たちは話していた。
「すげーデカいよな」「アレがホントにシンプル系か」「魔王は決まったも当然だな」「さっきの障害物競走もぶっちぎりの1位だったし」「新魔王の誕生だ」
観客はもう魔王が決定した気でいた。
「ぬん!」
ビッグスライムが壇上の前に立つ。
「うむ、一番乗り見事シンプル系スライムよ。さぁ秘宝玉を取るがよい」
大臣が壇上の上の秘宝玉を取るよう促す。
「よし!」
ビッグスライムは透明色の秘宝玉を手にした。そして観客たちにも見えるように掲げた。
「おお!」「あれが秘宝玉」「あなた見に来てよかったわね」「ああ、あの小さいスライムの坊やに取ってもらいたいが、これは決まりかな」
観客たちがざわめくこと30秒。秘宝玉は何の反応も示さなかった。
「ぬん?」
ビッグスライムが不思議がる。
「もうよいであろう。秘宝玉を壇上に置きなさい」
ノッポ大臣の言う通り、ビッグスライムは秘宝玉を置いた。つまり秘宝玉に選ばれるだけの才能がなかったのだ。
「ぬん…………」
落ち込みながら階段を下るビッグスライム。彼の魔王祭は終わった。
「やったーーチャンスだ!」
シンプル系スライムがビッグスライムと入れ違いに壇上まで駆け上る。
「2着目のもの秘宝玉に触れよ」
ノッポ大臣が言う。
「これでオレは魔王だ! 見てるか息子よ! 母さんよ!」
シンプル系スライムが叫ぶがまったく反応しない。
「次だな……」
ノッポ大臣が2着を取ったシンプル系スライムに宣告する。
「とほほ……」
ガックリとしたシンプル系、アニマル系スライムと階段ですれ違う。
「やっぱり、シンプル系とじゃあ俺たちの方がカリスマ性が違うんだよ」
アニマル系スライムが壇上の前にやって来て秘宝玉をぶんどる。
「おお、なんという気迫これはもしや――――」
ノッポ大臣が口にすること数十秒、秘宝玉は何の反応も見せなかった。
「アレ?」
掲げた秘宝玉を見るアニマル系。
「壇上に返しなさい」
返上を求めるノッポ大臣だった。
それからというものシンプル系とアニマル系が代わる代わる壇上まで行き、秘宝玉に触れたがまったく反応しない無色透明のままだった。
「ああ~~オレの祭りが~~」「そんなここまで頑張ったのに」「やっぱり年か……」「秘宝玉何故だ~~」
次々と秘宝玉選定達が会場を後にしていった。
そしてついに残ったのは、ホラー系スライムとシンプル系スライムだった。
一方は卵の殻を被ったスライム。もう一方は小さな子供のスライムだった。
「ホラー系頑張れーー!」「頼む魔王になってくれ」「今年こそ魔王誕生を」「お願いしますーー」
卵の殻を被ったスライムが階段を登って壇上に近づいて行く。
この時、
(お願い、反応しないで、トンガリにチャンスを与えて……)
スワンは心の底から思っていた。
そして、
(あのスライムが魔王になれなかったらオレの番か、あ~~ドキドキしてきた)
トンガリが緊張していた。
「さぁ、秘宝玉に触れてくれ」
ノッポ大臣が、到着した卵の殻を被ったスライムに早速催促した。
ホラー系スライムが手のようなものを伸ばす。そして、秘宝玉を引き込んだ。
その時――引き込んだ秘宝玉を表に出すと――
――――黒く輝く秘宝玉が現れた。
秘宝玉が反応したのだ。
「おおーーーー!!」「輝いてる黒く輝いてる!」「魔王の誕生だーー!」「この日を何年待ったことかーー!」
観客たちは大盛り上がりだった。
「ああ~~~~終わった」
トンガリがその場で溶ける。
「そんな、魔王が決まったの?」
スワンが遠目に黒く輝く秘宝玉を見ていた。
「えーーおほん! こたびの魔王祭の主役は――――」
ノッポ大臣がそう語ろうとした時だった。壇上の上に上がる卵の殻を被ったスライム。
「あ~~~~、これで名実ともに俺様の魔王かが決まった! お前たちこれからはオレを魔王と呼び、オレの為だけに働け!」
ホラー系スライムがそう宣言する。
――その時だった。上空から何者かがやって来た。
「アレはフットチーム!」
スワンは見覚えのあるリーダーの顔を見た。そしてそいつは卵の殻を被ったスライムの持つ秘宝玉をいともたやすく奪って退散していった。再び上空を飛んで、
「な、何だあやつは!? 秘宝玉を持ち逃げした! 衛兵衛兵追いかけるのだ!」
ノッポ大臣は衛兵たちに命令する。
「………………返せ、俺様の秘宝玉を返せ!」
「――――あ、あの~~スライムさん?」
ホーン魔王国のティアーラ姫が声を掛けようとした時、
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
卵の殻を被ったスライムが異形な形になった。それはまるでウーパールーパーとクモを足したような形をし、背中からはなん十本もの触手が伸びていた。
「この魔王バグバニッシャー様の秘宝玉を返せええええええええええええええええええええええええええええ!!」
咆哮を上げる魔王だった。
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