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第八章 スライム達の暮らす可愛らしい異世界
第421話 第4試練、スライム落とし
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魔王祭に参加したスライムはおよそ1500名、その内の66匹が勝ち残っていた。
その中にはビッグスライム、トンガリの友達ガボなどが含まれていた。
観客席は大いに盛り上がっていた。応援の声が止まらない。
VIP席たるガラス越しの席では、ティアーラ姫とノッポ大臣がくつろぎながら見ていた。
「さて、第4の試練を始める。その名もスライム落とし!」
衛兵長の宣言と共に、50以上の魔物オオーレムたちが会場に階段を使って上がってくる。
「お、オオーレムさん!?」
トンガリがその数にビックリする。
「何びびってんだ……田舎者だと思われるぞ」
子供のわりに大きな図体をしているガボが言う。
「そ、そっかーーわかった。びびらないようにするよ」
トンガリはオオーレムの大群をしっかり見つめた。
この時、
(スライム落としって何? この会場から突き落とすってこと? ひょっとして、このオオーレムたちが適役。にしては数が多すぎる気がするけど……うん?)
スワンは考えていたのだが、
オオーレムたちは何かを運んできただけだった。その何かとはスライムの置物が乗った切り株のような積み木。
この時、
(えっ、スライム落としって、ダルマ落としみたいなもの?)
スワンはそう推測した。
オオーレムたちはスライム落としをそれぞれの選手たちの前に置いて行く。
66匹いるので、50個持って来たオオーレムたちはすぐに戻って、16匹分のスライム落としを持って来る。
そして役目を終えたオオーレムたちは、後でスライム落としを回収するので会場のふちに並んで待機していた。
「それでは第4試練の説明をする。各自目の前のスライム落としを見たまえ」
ビッグスライムが、ガボが、卵の殻を被ったスライムが、トンガリが目の前のスライム落としを見る。
この時、
(あれ? でもダルマ落としに使うハンマーがない)
スワンはそう思っていた。
「よく積み木の上に乗ったシンプル系スライムの置物を見てくれ、試練はそれを地面に落とすことだ。ただし置物に触れずに地面に落とすんだ」
衛兵長が言う。
「じゃあ、どうやって落とせばいいんだ?」
アニマル系が訊く。
「いい質問だ。スライムの置物を落とす方法、それは体当たり!」
衛兵長が言い切った。
「もしかして、この置物の乗った積み木に体当たりすればいいのか?」「落とすだけなら楽勝だな」
アニマル系たちが言う。
「果たしてそうかな、その積み木の重さは5キロ、生半可な体当たりでは逆にはじき返される」
「うっ、5キロ、オレの体重の2倍か……」
息を飲むガボ。
「オレの体重の5倍ある」
トンガリも言う。
「そして制限時間は5分間その間に、何としてもスライムの置物を落とした者を、次の試練に挑ませる。ちなみに置物に一切触れることは許可しない。触れた場合はオオーレムたちが強制退場させるから、そのつもりでいてくれ」
衛兵長が言う。
「5キロか」「あのビッグスライムなら余裕だろ」「へへへ、オレだって余裕だぜ毎日荷車を運んでるんだ」「力比べには自信ある」
アニマル系のスライム達が言う。
「それでは第4試練、スライム落とし、始め!」
ピピーーーーッと笛を吹く衛兵長、試練が始まったのだった。
「ふんぬ!!」
まずビッグスライムが突撃した。それだけで積み木は吹っ飛びスライムの置物は宙を舞い、地面に落ちた。
「合格!」
衛兵長が赤旗を上げる。試練を突破した証だった。
「す、すげ~~」「何キロあるんだあのスライム」「10メートル、オレは30センチ」
アニマル系たちは早速クリアしたビッグスライムに驚く。
そんな中、地味に体当たりをした卵の殻を被ったスライムがいた。彼もまた5キロもある積み木に体当たりをし、スライムの置物を地味に落とした。
「すげーー」「あのホラー系力があるんだ」「よくやったぞ!」「合格おめでとーー!」
観客たちが卵の殻を被ったスライムを称賛していた。
「赤旗! 合格だ!」
衛兵長が言う。
それから1分が経過して、数匹のアニマル系達がクリアした。
「えい、えい、もういっちょ!」
ガボは必至で切り株のような積み木に体当たりしていた。何度も何度も体当たりして、少しづつ上の置物をずらしていく。図体がでかいので有利に見えた。そして、
「あらよっと!」
ガボが渾身の体当たりをぶつけると、スライムの置物がぐらりと落ちた。
「や、やったぞ!!」
「赤旗! 合格!」
衛兵長が言う。
「いいぞ坊主!」「よく頑張った!」「魔王いなれるかもな!」
観客たちが賞賛する。
そして後3分というところで、体当たりを続けていたスライム達が疲れを見せて、へばっていた。その多くがフルーツ系スライムとスイーツ系スライムだった。もう体力の限界なのか諦めていた。
「無理ーー」「もうくたくた」「落とせるわけないよ」
一方トンガリは体当たりを続けていたが一向にスライムの置物が動く気配がない。
この時、
(やっぱり図体のデカいスライムとか、活発な筋力のあるアニマル系が有利なのかな)
スワンはトンガリの姿を見て思った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が上がるトンガリ。
「あと1分!」
衛兵長がそう宣言する。
「もうダメなのかな……」
トンガリが諦めようとしていたが、
「思いっきりぶつかればいい?」
トンガリは突然その言葉をつぶやいた。その一言をヒントにトンガリは会場のふちまで移動した。
「トンガリどこ行くの!?」
スワンが呼ぶがトンガリはその位置から猛ダッシュして、スライム落としに激突した。5キロの積み木を落とすために助走をつけて、力いっぱい体当たりしたのだ。そうすることでやっと置物がズレて、トンガリは味を占め、もう一度、猛ダッシュで突撃する。これを繰り返すことで、残り10秒のところ、スライムの置物を地面に落とすことに成功した。
「や、やった!」
「赤旗! 合格!」
衛兵長が言う。
そして程なくして、ピピーーーー! ッと笛の音が鳴り、スライム落としの制限時間が来たのだった。
「合格者の確認をする。皆いったんその場で止まるんだ!」
衛兵長が合格したスライム達を数える。
「やったね。トンガリ、まさか合格するなんて思わなかった」
「うん、オレもピンチかと思ったけど、心の中で思いっきり当たれって声がしたんだそれで、あの作戦を思いついた」
トンガリは身体を痛めていても元気だった。
「いいガッツだった!」「よくやったぞ! 小さいの!」「感動したわ!」「頑張ったな!」
観客たちの目がトンガリに集まっていた。
「……え、えへへへへへ」
この時、
(今までの頑張りは無駄じゃなかったのかもしれない)
スワンはそう思っていた。
「よし、合計37名。最終試練への挑戦を許可する!」
ついに、魔王祭は最終試練を迎えようとしていた。
その中にはビッグスライム、トンガリの友達ガボなどが含まれていた。
観客席は大いに盛り上がっていた。応援の声が止まらない。
VIP席たるガラス越しの席では、ティアーラ姫とノッポ大臣がくつろぎながら見ていた。
「さて、第4の試練を始める。その名もスライム落とし!」
衛兵長の宣言と共に、50以上の魔物オオーレムたちが会場に階段を使って上がってくる。
「お、オオーレムさん!?」
トンガリがその数にビックリする。
「何びびってんだ……田舎者だと思われるぞ」
子供のわりに大きな図体をしているガボが言う。
「そ、そっかーーわかった。びびらないようにするよ」
トンガリはオオーレムの大群をしっかり見つめた。
この時、
(スライム落としって何? この会場から突き落とすってこと? ひょっとして、このオオーレムたちが適役。にしては数が多すぎる気がするけど……うん?)
スワンは考えていたのだが、
オオーレムたちは何かを運んできただけだった。その何かとはスライムの置物が乗った切り株のような積み木。
この時、
(えっ、スライム落としって、ダルマ落としみたいなもの?)
スワンはそう推測した。
オオーレムたちはスライム落としをそれぞれの選手たちの前に置いて行く。
66匹いるので、50個持って来たオオーレムたちはすぐに戻って、16匹分のスライム落としを持って来る。
そして役目を終えたオオーレムたちは、後でスライム落としを回収するので会場のふちに並んで待機していた。
「それでは第4試練の説明をする。各自目の前のスライム落としを見たまえ」
ビッグスライムが、ガボが、卵の殻を被ったスライムが、トンガリが目の前のスライム落としを見る。
この時、
(あれ? でもダルマ落としに使うハンマーがない)
スワンはそう思っていた。
「よく積み木の上に乗ったシンプル系スライムの置物を見てくれ、試練はそれを地面に落とすことだ。ただし置物に触れずに地面に落とすんだ」
衛兵長が言う。
「じゃあ、どうやって落とせばいいんだ?」
アニマル系が訊く。
「いい質問だ。スライムの置物を落とす方法、それは体当たり!」
衛兵長が言い切った。
「もしかして、この置物の乗った積み木に体当たりすればいいのか?」「落とすだけなら楽勝だな」
アニマル系たちが言う。
「果たしてそうかな、その積み木の重さは5キロ、生半可な体当たりでは逆にはじき返される」
「うっ、5キロ、オレの体重の2倍か……」
息を飲むガボ。
「オレの体重の5倍ある」
トンガリも言う。
「そして制限時間は5分間その間に、何としてもスライムの置物を落とした者を、次の試練に挑ませる。ちなみに置物に一切触れることは許可しない。触れた場合はオオーレムたちが強制退場させるから、そのつもりでいてくれ」
衛兵長が言う。
「5キロか」「あのビッグスライムなら余裕だろ」「へへへ、オレだって余裕だぜ毎日荷車を運んでるんだ」「力比べには自信ある」
アニマル系のスライム達が言う。
「それでは第4試練、スライム落とし、始め!」
ピピーーーーッと笛を吹く衛兵長、試練が始まったのだった。
「ふんぬ!!」
まずビッグスライムが突撃した。それだけで積み木は吹っ飛びスライムの置物は宙を舞い、地面に落ちた。
「合格!」
衛兵長が赤旗を上げる。試練を突破した証だった。
「す、すげ~~」「何キロあるんだあのスライム」「10メートル、オレは30センチ」
アニマル系たちは早速クリアしたビッグスライムに驚く。
そんな中、地味に体当たりをした卵の殻を被ったスライムがいた。彼もまた5キロもある積み木に体当たりをし、スライムの置物を地味に落とした。
「すげーー」「あのホラー系力があるんだ」「よくやったぞ!」「合格おめでとーー!」
観客たちが卵の殻を被ったスライムを称賛していた。
「赤旗! 合格だ!」
衛兵長が言う。
それから1分が経過して、数匹のアニマル系達がクリアした。
「えい、えい、もういっちょ!」
ガボは必至で切り株のような積み木に体当たりしていた。何度も何度も体当たりして、少しづつ上の置物をずらしていく。図体がでかいので有利に見えた。そして、
「あらよっと!」
ガボが渾身の体当たりをぶつけると、スライムの置物がぐらりと落ちた。
「や、やったぞ!!」
「赤旗! 合格!」
衛兵長が言う。
「いいぞ坊主!」「よく頑張った!」「魔王いなれるかもな!」
観客たちが賞賛する。
そして後3分というところで、体当たりを続けていたスライム達が疲れを見せて、へばっていた。その多くがフルーツ系スライムとスイーツ系スライムだった。もう体力の限界なのか諦めていた。
「無理ーー」「もうくたくた」「落とせるわけないよ」
一方トンガリは体当たりを続けていたが一向にスライムの置物が動く気配がない。
この時、
(やっぱり図体のデカいスライムとか、活発な筋力のあるアニマル系が有利なのかな)
スワンはトンガリの姿を見て思った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が上がるトンガリ。
「あと1分!」
衛兵長がそう宣言する。
「もうダメなのかな……」
トンガリが諦めようとしていたが、
「思いっきりぶつかればいい?」
トンガリは突然その言葉をつぶやいた。その一言をヒントにトンガリは会場のふちまで移動した。
「トンガリどこ行くの!?」
スワンが呼ぶがトンガリはその位置から猛ダッシュして、スライム落としに激突した。5キロの積み木を落とすために助走をつけて、力いっぱい体当たりしたのだ。そうすることでやっと置物がズレて、トンガリは味を占め、もう一度、猛ダッシュで突撃する。これを繰り返すことで、残り10秒のところ、スライムの置物を地面に落とすことに成功した。
「や、やった!」
「赤旗! 合格!」
衛兵長が言う。
そして程なくして、ピピーーーー! ッと笛の音が鳴り、スライム落としの制限時間が来たのだった。
「合格者の確認をする。皆いったんその場で止まるんだ!」
衛兵長が合格したスライム達を数える。
「やったね。トンガリ、まさか合格するなんて思わなかった」
「うん、オレもピンチかと思ったけど、心の中で思いっきり当たれって声がしたんだそれで、あの作戦を思いついた」
トンガリは身体を痛めていても元気だった。
「いいガッツだった!」「よくやったぞ! 小さいの!」「感動したわ!」「頑張ったな!」
観客たちの目がトンガリに集まっていた。
「……え、えへへへへへ」
この時、
(今までの頑張りは無駄じゃなかったのかもしれない)
スワンはそう思っていた。
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