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第八章 スライム達の暮らす可愛らしい異世界

第418話 第1の試練、橋渡り

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 魔王祭参加者の列に並ぶトンガリとスワン。
 周りも魔王祭参加者のスライム達でひしめいていた。スワンがざっと見る限り1500匹。
 そしてスライム達の先頭のものは前へ進めなかった。
 何故なら魔王城の会場へ行くための橋が降ろされていなかったからだ。
 そして下には川があった。

「どうしたんだ前」「全然進めないぞ」「誰だ止まってるの」「早く会場に行こうぜ」

 後ろのスライム達がざわめく。

「だってよー」「橋がない」「先に進めない」「1メートル下は川だ」

 前にいたスライム達がざわめく。

 そして、魔王城の方からやっと橋が降ろされたが、スライム一匹分の渡れる幅と5メ―トルはある長さだった。しかも本数は7つ。

 魔王城の城から先ほどのノッポ大臣が顔を出す。

「それでは伝統と格式のある魔王祭を始めます。早速ですが皆さんには一つ目の試練に挑んでもらいます。それは橋渡りです。魔王たるものこの長い橋くらい、恐れず渡りきれるはず、そして渡り切った者だけが次の種目に参加できます。それでは制限時間は30分。魔王祭開始です」

 この時、
(空を飛べるウィング系は簡単なんじゃない)
 スワンは自分もついでに見た。

「よ、よーし行くぞ!」「お、おい押すな!」「危ないだろ」「落ちる落ちる」「いや、先に渡ってしまえばいいんだよ」

 スライムのの種族の中でも活発なアニマル系が先陣を切る。

「うおおおおおおおお!!」

 一気に走って渡り切る者もいれば、

「う、うわあああああああ!!」

 後ろから押されて落ちていくスライム達もいた。

 制限時間は25分。アニマル系たちは渡り切ったり、落ちて行ったり色々だった。

 制限時間20分しびれを切らしたウィング系のスライム達が飛び上がり、橋を使わず飛んで魔王城に辿り着く。

 制限時間15分のところで怖いもの知らずのホラー系が前へ出た。その異形な顔に驚くネイチャー系スライムも逃げるように橋を渡って行った。

 制限時間10分のところいよいよシンプル系の出番が来た。シンプル系スライム達はそれぞれ自分のペースでゆっくり橋を進んで行く。

「よし、トンガリこれなら……」

 スワンはチャンスな種目と見た。何故ならトンガリは以前、橋渡りを成功してたからだ。

「あわわ、長い橋……」

 トンガリは固まっていた。

「え!! 怖いの!」

 スワンが驚く。

 続々とシンプル系スライムが橋を渡っていく。しかしふらついて落ちていく者の方が多かった。

「うーー無理だよーー落ちちゃうって……」

 トンガリが川の流れを見て言う。

 この時、
(あーーそうか、渡った時の記憶がないんだっけ……)
 スワンはそう考えた。

「どうしよう魔王になれないよ」

 その時シンプル系のスライムがバランスを崩し落ちて行った。

「ひぃーーーー」

 それを見たトンガリは自分もそうなるイメージをした。

 この時、
(スワン、トンガリにはただやることを教えてやってくれ)
 というロードの言葉をスワンは思い出していた。

「トンガリ橋はただ行くだけでいいんだよ。ただ真っ直ぐ渡ってみて……」

 次はトンガリが橋を渡る番になった。

「ま、真っ直ぐ行くだけ……?」

 トンガリが不審そうな目を向ける。

「それなら出来そうでしょ……」

 スワンが橋を渡るよう促す。

「う、うん……真っ直ぐ行くだけ」

 トンガリはゆっくり進んで行く。

 前を行っていたシンプル系はことごとくバランスを崩し落ちて行った。浅い水路なのか溺れることはないようだ。

 制限時間5分のところ、フィッシュ系達がその習性の為か、川の中へダイブしていった。

「あーー水だ」「気持ちいいな」「あっ」「しまった橋を渡らなくちゃ」

 ドジなスライム達だった。

 トンガリはゴール目前まで、

「ただ前に行くだけでいい」

 と、呪文のようにその言葉を繰り返していた。

 そして渡り切る。

「やった、やったよスワン!」

「うん、見てた」

「声が、声がしたんだ。心の中で声がしたんだ」

「それ私の応援じゃない?」

「違うよ! スワンの声じゃなかった」

 トンガリが否定する。

 それから10メートルもあるスライムが橋を渡ってきて、他の橋を渡っていたにもかかわらず、余りの大きさに無理矢理突破するスライムや、その後に続く、卵の殻を被ったスライムも無事ゴールした。

 制限時間1分のところゴールしたトンガリの元に、友達たちが現れた。

「おっ、トンガリ、渡れたのか?」

 ガボが訊く。

「やるなー」

 シーボが言う。

「こっちはニットが落ちちまってさー」

 オニブリが言う。

「えーーニットが? 意外と簡単だったのに……」

 そして制限時間はゼロとなった。

 橋を渡れてない者たちはその場で固まっていた。

「もう、制限時間だキミたちはリタイヤだ。ここで魔王祭は終わり、国を見回るか、魔王祭の観客として魔王誕生を見守るかにしてくれ」

 そう言って衛兵は橋を引き上げる。

「うーー怖かったよーー」「渡れないよーー」

 スライム達は渋々会場から後にした。

 これで第1試練が完了した。

 ゴールしたスライムの数はスワンがざっと見る限り、500匹。

 いよいよ魔王祭の会場に招待されるトンガリたちだった。
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