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第八章 スライム達の暮らす可愛らしい異世界
第413話 明日に備えて眠ろう
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夜闇が支配する夜。
トンガリとスワンは無料の宿屋に泊まっていた。
そこは魔王祭に参加する者を歓迎してくれる宿屋だった。
泊まる際、トンガリはサインを書かされた。
他の宿泊客たちもそうだった。サインを書かされ、それを飾られている。
トンガリはでかでかと自分の名前を書いた。
スワンには文字が読めない為、本当にサインなのか疑っていた。
そして豪華な夕食も食べ終わり、トンガリとスワンは自分たちの部屋へと戻った。
「ふあ~~~~」
トンガリが大きなあくびをしていた。
「眠いトンガリ?」
水雲鳥状態のスワンが問いかける。
「うん、今日はたくさん動いたし、大騒ぎして疲れたよ」
トンガリがまぶたを落としそうになっていた。
「寝る?」
「そうしよっかなぁ~~」
「明日は魔王祭だし、身体も休めておかなくちゃいけないもんね」
スワンが優しく語りかける。
「うん! レベル50なんて今でも信じられないけど、仲間のロードたちが言うんだから間違いないんだろうなぁ~~」
トンガリが窓に目をやり月夜を見るすると、
「ねぇ~~! スワンあの雲ロードに似てない? あっ、あっちにはハズレ! グラスもいる!」
トンガリが雲の形を見て言った。
スワンも同じ景色を見に窓に近づいたらホントにあった。
この時、
(凄いホントにあるんだ……けどトンガリには私たちがスライムに見えてるはずってドノミさんが言ってたのに、なんで人間の姿を認識できるんだろう?)
スワンは感じた。
「ふあ~~~~、うん、今日はもう寝よう。お休みスワン!」
ベッドにダイブするトンガリ。
「うん、おやすみトンガリ」
言葉を返すスワン。
数分後。
「く~~~~く~~~~」
トンガリは寝息を立て深い眠りについていた。
一方スワンの方はまだ起きていた。ドノミにあることを頼まれていたのだ。
スワンは精霊の術で隠していた注射器を取り出す。
それは、トンガリの記憶を消す液体の入った注射器だった。
この時、
(「トンガリさんが寝静まったら必ずその注射をしてください。人間の記憶を持ったままにしておくわけにはいかないので、そのことだけは忘れないでください。これもこの異世界の規則、あなた達不法入界者を守ることにもつながりますから……」ドノミさん……)
スワンはトンガリに連れそう前の言葉を思い出していた。
(記憶を消す。この注射で、寝ている間だから痛みはないって言ってたけど……これ打つ方が怖い。けどやらないと……)
スワンは眠るトンガリに近づいて、注射針をその柔らかな肌に当てる。
(ごめんね、トンガリ、また明日事情を説明してあげるからね)
プスッと注射を打ち込むスワンだった。
(トンガリ魔王になって、いつかこんなものを使わなくなる異世界にしてね。私たちのことは忘れていいから)
「う、」
スワンは涙をこらえていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ベラッタのテント。
取りあえず、ロードたちは明日に備えて眠ることにした。
しかし、ベラッタは今もスライムの生態系を研究し、一人読書をしていた。
ロードたちはハンモックを木と木の間に設置して寝ていた。
「なぁ、ドノミさん?」
ハズレが目を閉じながら呼ぶ。
「はい、なんですかハズレさん」
ドノミが口を開く。
「理性の秘宝玉ってどんな力があるんだ?」
「さぁ~~分かりませんね」
「管理してるくせにわからねたーー仕事サボってんじゃねのか?」
グラスが皮肉を言う。
「私は新人の管理人ですし、それに魔王はもう何十年も決まっていないそうですよ?」
「どういうことだ?」
ロードが訊く。
「魔王選抜が行われても、必ず秘宝玉が反応し選ばれるわけではないのはご存じでしょう?」
ドノミが当たり前のように言う。
「なるほど、誰もその秘宝玉に選ばれていないわけだ……」
ハズレが言う。
「そう言うことです」
「けど、確か、秘宝玉を手にするにはもう一つ手段があるってスワンが言っていた」
「ん? もう一つそれは存じ上げませんね」
「ソレを使うには、それ相応の覚悟を決めるとかって言ってたなぁ」
ハズレが回答を出す。
「皆さんは仕事熱心ですね……」
「仕事じゃねーだろ」
グラスが吐き捨てる。
「実際、飲料店は休業中だしな」
ハズレが言う。
「ドノミさんには敵わない」
「そんなことないですよ。皆さんは働き者だと思います。少なくとも私の先輩方よりはこの異世界を管理してくれてます。本当にありがとうございます」
ドノミが突然お礼を言った。
「ふん、オレあ寝る」
グラスがそっぽを向いて寝た。
「管理ね~~まぁ密猟団捕まえて、自分たちの罪を軽減させるため手伝ってるだけなんだけどさ」
ハズレが軽口をたたく。
「それでも、私を助けに来てくれたこともありました」
「それはロード、オレは逃げようとしたけどさ……」
「でも皆さん来てくださいました。ありがとうございます」
「…………まぁ何でもいいさ、オレたちも秘宝玉が使えるようになれば、ということで明日に備えて寝ます。お休み~~」
ハズレはあくびをして眠りについた。
「……ロードさん起きてますか?」
「ああ、もう寝るけど……」
「寝る前に一つ言っておくことがあります」
「改まってなんだ?」
「実は――――」
ロードとドノミはその夜ある会話をした。
それから眠りについたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
第3516界拠点。
夜勤をしていた垂れ目の男ゼフが気付いた。何者かがテントに近づいてくることを、
「カサックさんですか? 眠れないなら書類仕事手伝って――――!!」
ゼフは紫色の制服を身に纏った男を見た。それも知っている人物でないし、複数人いた。
「密猟団の件でここに来た、ここの部長は誰かな?」
整った前髪を見せる男性。それとゾロゾロと拠点に入って来るのは、同じ管理局の人間と言ってもエリートの集団。戦闘員だった。
「はっはい、今起こしてきます!」
「手早く頼むよ」
男性はその場を後にしたゼフの机の上を見た。
「ドノミの報告書か」
男性は部長が来るまでの間、熱心に報告書を読んでいた。
トンガリとスワンは無料の宿屋に泊まっていた。
そこは魔王祭に参加する者を歓迎してくれる宿屋だった。
泊まる際、トンガリはサインを書かされた。
他の宿泊客たちもそうだった。サインを書かされ、それを飾られている。
トンガリはでかでかと自分の名前を書いた。
スワンには文字が読めない為、本当にサインなのか疑っていた。
そして豪華な夕食も食べ終わり、トンガリとスワンは自分たちの部屋へと戻った。
「ふあ~~~~」
トンガリが大きなあくびをしていた。
「眠いトンガリ?」
水雲鳥状態のスワンが問いかける。
「うん、今日はたくさん動いたし、大騒ぎして疲れたよ」
トンガリがまぶたを落としそうになっていた。
「寝る?」
「そうしよっかなぁ~~」
「明日は魔王祭だし、身体も休めておかなくちゃいけないもんね」
スワンが優しく語りかける。
「うん! レベル50なんて今でも信じられないけど、仲間のロードたちが言うんだから間違いないんだろうなぁ~~」
トンガリが窓に目をやり月夜を見るすると、
「ねぇ~~! スワンあの雲ロードに似てない? あっ、あっちにはハズレ! グラスもいる!」
トンガリが雲の形を見て言った。
スワンも同じ景色を見に窓に近づいたらホントにあった。
この時、
(凄いホントにあるんだ……けどトンガリには私たちがスライムに見えてるはずってドノミさんが言ってたのに、なんで人間の姿を認識できるんだろう?)
スワンは感じた。
「ふあ~~~~、うん、今日はもう寝よう。お休みスワン!」
ベッドにダイブするトンガリ。
「うん、おやすみトンガリ」
言葉を返すスワン。
数分後。
「く~~~~く~~~~」
トンガリは寝息を立て深い眠りについていた。
一方スワンの方はまだ起きていた。ドノミにあることを頼まれていたのだ。
スワンは精霊の術で隠していた注射器を取り出す。
それは、トンガリの記憶を消す液体の入った注射器だった。
この時、
(「トンガリさんが寝静まったら必ずその注射をしてください。人間の記憶を持ったままにしておくわけにはいかないので、そのことだけは忘れないでください。これもこの異世界の規則、あなた達不法入界者を守ることにもつながりますから……」ドノミさん……)
スワンはトンガリに連れそう前の言葉を思い出していた。
(記憶を消す。この注射で、寝ている間だから痛みはないって言ってたけど……これ打つ方が怖い。けどやらないと……)
スワンは眠るトンガリに近づいて、注射針をその柔らかな肌に当てる。
(ごめんね、トンガリ、また明日事情を説明してあげるからね)
プスッと注射を打ち込むスワンだった。
(トンガリ魔王になって、いつかこんなものを使わなくなる異世界にしてね。私たちのことは忘れていいから)
「う、」
スワンは涙をこらえていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ベラッタのテント。
取りあえず、ロードたちは明日に備えて眠ることにした。
しかし、ベラッタは今もスライムの生態系を研究し、一人読書をしていた。
ロードたちはハンモックを木と木の間に設置して寝ていた。
「なぁ、ドノミさん?」
ハズレが目を閉じながら呼ぶ。
「はい、なんですかハズレさん」
ドノミが口を開く。
「理性の秘宝玉ってどんな力があるんだ?」
「さぁ~~分かりませんね」
「管理してるくせにわからねたーー仕事サボってんじゃねのか?」
グラスが皮肉を言う。
「私は新人の管理人ですし、それに魔王はもう何十年も決まっていないそうですよ?」
「どういうことだ?」
ロードが訊く。
「魔王選抜が行われても、必ず秘宝玉が反応し選ばれるわけではないのはご存じでしょう?」
ドノミが当たり前のように言う。
「なるほど、誰もその秘宝玉に選ばれていないわけだ……」
ハズレが言う。
「そう言うことです」
「けど、確か、秘宝玉を手にするにはもう一つ手段があるってスワンが言っていた」
「ん? もう一つそれは存じ上げませんね」
「ソレを使うには、それ相応の覚悟を決めるとかって言ってたなぁ」
ハズレが回答を出す。
「皆さんは仕事熱心ですね……」
「仕事じゃねーだろ」
グラスが吐き捨てる。
「実際、飲料店は休業中だしな」
ハズレが言う。
「ドノミさんには敵わない」
「そんなことないですよ。皆さんは働き者だと思います。少なくとも私の先輩方よりはこの異世界を管理してくれてます。本当にありがとうございます」
ドノミが突然お礼を言った。
「ふん、オレあ寝る」
グラスがそっぽを向いて寝た。
「管理ね~~まぁ密猟団捕まえて、自分たちの罪を軽減させるため手伝ってるだけなんだけどさ」
ハズレが軽口をたたく。
「それでも、私を助けに来てくれたこともありました」
「それはロード、オレは逃げようとしたけどさ……」
「でも皆さん来てくださいました。ありがとうございます」
「…………まぁ何でもいいさ、オレたちも秘宝玉が使えるようになれば、ということで明日に備えて寝ます。お休み~~」
ハズレはあくびをして眠りについた。
「……ロードさん起きてますか?」
「ああ、もう寝るけど……」
「寝る前に一つ言っておくことがあります」
「改まってなんだ?」
「実は――――」
ロードとドノミはその夜ある会話をした。
それから眠りについたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
第3516界拠点。
夜勤をしていた垂れ目の男ゼフが気付いた。何者かがテントに近づいてくることを、
「カサックさんですか? 眠れないなら書類仕事手伝って――――!!」
ゼフは紫色の制服を身に纏った男を見た。それも知っている人物でないし、複数人いた。
「密猟団の件でここに来た、ここの部長は誰かな?」
整った前髪を見せる男性。それとゾロゾロと拠点に入って来るのは、同じ管理局の人間と言ってもエリートの集団。戦闘員だった。
「はっはい、今起こしてきます!」
「手早く頼むよ」
男性はその場を後にしたゼフの机の上を見た。
「ドノミの報告書か」
男性は部長が来るまでの間、熱心に報告書を読んでいた。
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