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第八章 スライム達の暮らす可愛らしい異世界

第410話 スライム検査中の時間

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 ロードたちは管理局本部から派遣されてきたベラッタという名前の調査員と出会った。

 そしてその手には籠があり、どこで捕まえたのか分からないがスライムが閉じ込められていた。

 そのシンプル系のスライムは眠っていた。

「な、なんてことを――この異世界のルールは――」

 ドノミさんが抗議しようとしていたが、

「あーーーーやめてくれ、ここに来た時、少し説明を受けた。スライムと関わってはいけないだとか、文化に干渉してはならないとか、そっちのルールを踏まえたうえで、こっちは仕事してんだ。それにこのスライムはその辺で捕まえた、ただのスライムじゃない。異常なスライムなんだよ」

「異常なスライム? それって暴走してるスライムってことか?」

 ハズレが訊いてみる。

「ああ、こっちの仕事に首は突っ込まないでくれ、さぁ……どいたどいた。こっちはこいつを調べなくちゃならないんだからな」

「あの~~さっきの伝書鳥は?」

 ドノミが聞いていた。

「ああ、これから異常なスライムを直接調べるための許可書だよ。分かったら退いてくれ、検査キットがテントにあるんだ」

 ベラッタの発言にロードたちはその場の道を開けた。

 ゆらゆらと歩くベラッタ。ロードはその後をついて行こうとしたが、

「ロードさん、専門家に任せましょう」

 ドノミが引き止める。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 1時間後。

 ロードは荷船にあったフルーツでジュースを作っていた。

 ハズレとグラスとドノミは味見をしていた。

「このピーチジュースもいいんじゃないか?」

「なれねーー味だ」

「おいしいですね。ジュースミキサーを使わずにどうやってこれほど濃厚な味を引き出しているんです?」

「スワンが買ってくれた専用の搾り容器が、ってジュースミキサーってなんだ?」

 ロードが得意げに語ろうとしたが、ドノミの単語が気になった。

「ジュースを作る機械のことですよ……知りませんか?」

 ドノミが不思議そうに話す。それが彼女の常識だからだ。

「きかい?」

 ハズレが怪訝な顔をする。

「機械、知りませんか?」

「知らないな……ロード知ってるか?」

「知らない」

「えっ、機械を知らない? お二方はどんな異世界で育って来たんですか?」

 ドノミが率直に聞く。

「オレは動物たちと暮らす異世界から……ゼンワ語で動物たちと話すんだ」

 ロードが言う。

「オレは普通に魔物がはびこってる異世界から……生まれ故郷はよく覚えてない。確か騎士団のいた異世界だ」

 ハズレが話す。

「動物に、魔物がはびこる。それだけですか?」

「ちなみにグラスは――痛っ――」

 ハズレはドスッとグラスの肘打ちを食らう。

「きやすく喋んな」

「す、済まない」

「そうですか……結構な田舎世界から来てるんですね」

 ドノミが普通に言う。

「田舎世界か……よく言われる」

 ロードがイチゴを容器で潰しながら言う。イチゴジュースを作っているのだ。

「今度、本部に帰るようなことがあったら調べてみますね……それからグラスさんの異世界も教えて欲しいです」

 ドノミが頼み込む。

「んな聞いて楽しいもんじゃねーぞ」

 グラスが突き離すが、

「いえ、勉強させてください。色々な異世界を知っておきたいんです。ぜひ教えてください」

 ドノミは食い下がらない。

「めんどくせーー」

 グラスは語らない。

「ハズレさん」

「あはは、たった今肘打ちされちゃったし」

「ロードさん」

「聞かない方がいい」

「余計気になります」

「そんな事より次の一杯はまだか……」

 グラスがロードに催促する。

「ああ、もう少しだ。待ってろ」

 四人が和気あいあいと話をしてる中――

「グアアアアアアアーーーー」

 もの凄い雄叫びがテントの中から聞こえて来た。

「があああああああああ!!」

 今度はベラッタの叫び声まで聞こえて来た。

「――!!」

 すぐにロードは作業をやめて、ベラッタのテントに向かう。

「――待ってロードさん!!」

 そんな声で止められるほどロードの心中は穏やかではない。まずい予感がしたと思って駆け込んだのだ。

 そしてテントの中で見たものは――

 ――シンプル系を籠から出して、肩を噛み付かれているベラッタ氏だった。

 ベラッタはシンプル系スライムを引きはがそうとしているが力が強いのか、噛み付かれたままだった。

「く、くっそーー!! 離れろおおお!!」

 その惨状を見たロードはすぐに、ベラッタに近づいて、噛み付くスライムを取り払おうとした。

「――――!!」

 スライムを掴んだ時、ロードは見た。ベラッタの肩から血が流れているのを、

 そしてロードの力強さには抗えなかったのか、スライムは引きはがすことが出来た。

「――――そいつを籠に閉じ込めてくれ!!」

 血の染みる制服の肩を抑えるベラッタがロードに命じる。

 ロードはすぐにスライムを籠に入れて、施錠した。

「――ベラッタさん! その傷は――!?」

 ドノミがテントの中に入って来て言う。

「スライムは無害じゃなかったのか?」

 染み込んでいる血を見て言うロード。

「そのスライムはたぶん第四段階だ……」

 ベラッタが痛みをこらえて言う。

(第四段階?)
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