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第八章 スライム達の暮らす可愛らしい異世界

第401話 管理局の対応

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 森・切り株の地。
 カァーーッと日差しが照りつける午前中。

「オレ、トンガリ忘れちゃってごめん皆……次からは忘れないようにするよ」

 トンガリがドノミに記憶を消されたということは内緒にしている。

「ああ、気にするな……また、一緒に旅すればいい」

 先日のピラメイルーネによって目の見えないロードが言う。

「うん」

 こちらもピラメイルーネによって目を潰されたスワンが言う。

「………………」

 切り株に座り込むドノミ、彼女は報告書を読んでいた。

 この時、
(現在、魔物の侵入を確認。遅い、もうそれは済んでいる。そんなことより密猟団の調査の報告書はまだなの)
 ドノミは焦っていた。

「ドノミさん。そろそろ出発しよう」

 ハズレが呼びかける。

「あ……はい」

 ドノミが立ち上がる。

「ドルちゃん、世話をかけるな」

 ロードがドルフィーナに跨る。目が見えないから移動はドルフィーナに乗って移動する。

 そしてもう一人、スワンがドルフィーナに跨る。スワンは乗り出して早々、ロードの首筋にピタッと手を当てる。

「わあーーーー!!」

 ロードがびっくりした。

「何だどうしたロード……」

 先頭を行くハズレが言う。

「朝っぱらからうるせーぞ」

 グラスがうんざりと言う。

「大丈夫か?」

「ああ、すまん、少しびっくりしただけだ」

「ごめん……どこか痛かった?」

 スワンが謝る。

「いや、冷たかっただけだ」

 ロードが肝を冷やして言う。

「………………えい、えい」

 スワンがロードの脇腹をくすぐる。

「うわあ!!」

 ロードはびっくりする。

「――スワン!!」

 ロードが叫ぶ。

「大丈夫マッサージしてあげるから、疲れてるでしょ……」

 スワンがいたずらっ子の顔をする。

「オイ、何じゃれてるんだ? 早く行くぞ……」

 ハズレが振り返り言ってくる。

「ったく、見えてんじゃねーのか?」

 グラスが鬱陶しく言う。

「スワン、見えてるのか?」

「えっ……まだ全然」

「じゃあ、もうしないでく――――」

「えいえい」

 スワンがロードの脇腹をくすぐる。

「っ!!!?」

「フフフ、それ以上は言わせない……」

「ドルちゃん全速力で泳げ……」

「クパパパパパパ!!」

 ドルフィーナが荷船を引き、ハズレやグラスを追い抜かして全速力で移動する。

「やあああああああああああああああああ!! ――しがみつくだけ!!」

 スワンが驚きのあまり悲鳴を上げ、思いっきりロードに抱きつく。

「待った待った!! 止まれドルちゃん!!」

「クパパパパ」

 ドルフィーナは止まった。

「スワン離れろ……」

「フフフ、トンガリに言ってた。こうすれば怖くないんでしょう? この程度の事……ロードがいれば大したことじゃない」

 スワンがロードを抱き寄せる。

「――オレは降りる」

「えっ!!」

「降りるな、降りるな、スワンイタズラはやめろ。見えないと怖いだろ……ロードに嫌われるぞ」

「き、嫌われたくない……分かった、ごめんなさいロード」

「別に嫌わない……ちょっと……くっつかれるのが苦手なんだ」

「ハァーーーーその程度のことだったら克服しろよーー情けねーー」

 グラスが並び前に出る。

「それも一理ある」

 ハズレが顎に手を当てる。

「えっ?」

「ロード……怖いならしがみついてればいいんだぞ」

「怖いなら私にしがみつく? 前行こうか?」

 スワンが提案する。

「もうこのままでいい」

 ロードは顔を赤くしていた。

「そう……遠慮しなくていいのに……」

 スワンが残念がる。

「さぁ、皆さんホーン魔王国はこちらです」

 ドノミが先頭を歩く。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 管理局拠点。
 白く大きなサーカス場のようなテントがあった。
 そこはドノミの所属する管理会社の拠点だった。

「あったあったありましたよ~~カサックさん」

 垂れ目の男が言う。

「で、どうなんだ?」

「報告書の通りの見た目ならそいつらフットチームです……リーダーメットを筆頭にグロウ・マーア・パド、密猟の常習犯、管理世界を狙って来たのはこれが初めてみたいですね」

 ブラックリストを見る垂れ目の男。

「常習犯か……専門家を呼ぼうか」

 メガネの中年男、カサックが言う。

「うわっ! こっちを狙ってくるって書いてある、もう逃げましょうよ」

 前髪で目を隠した男が言う。

「そうもいかんだろ……」

 その時さえない男がテントの中に入って来た。

「ウィーーーーッス……巡回終わりました異常なしっス。じゃあ寝まーす」

「やめた方がいいですよーー、密猟団がこっち来てるらしいんで」

「まだ解決していないんスか」

「じゃあ僕、防壁修復も終わらしたんで帰りますねーー」

「ダメだよ、マルサ―くん」

「だって専門家来るの数日後でしょ――それまでに密猟団来ちゃいますって……」

「ってかドノミさんは!? あの人戦闘職でしょ、どこ行ったの?」

 さえない男が言う。

「彼女からの報告だよ。どうやらスライム達の文化遺産を狙ってるらしいから、その先回りだ。だから密猟団がこっちに来るのはまだかかるはずだ。チャッチャラ君連絡をしてくれ」

 カサックが言う。

「えーー本部の人たち苦手ーーマルサー君やっといて」

 チャッチャラが言う。

「チャッチャラさんの仕事でしょ……人に押し付けないでよ」

「えーーーー専門家の要請すればいいんスよねーー」

「ああ、頼むなるべく早く」

「へいへい」

「まったく……管理世界に乗り込んでくるなんて、何を考えてるんだか……」

 コーヒーを注ぐ垂れ目の男。

「金になれば何でもいい馬鹿な奴らなんだろ、捕まれば管理される側になり自由はないというのに、まぁそんなことはいい、後は待つだけだ」

「調査員の人……どうなりました?」

 コーヒーを人数分運ぶ垂れ目の男。

「知らん知らん、勝手にやってるだろ。問題起こさなきゃどーでもいい。どうせこんな異世界では何にもならんし我々にも何も出来ん。魔物も密猟団も専門家に任せればいい、直ぐにドノミ君にも報告しよう。あの子が来てから面倒事ばかりだが、これも仕事だ。あーー疲れる……」

 カサックが心底うんざりして言う。
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