上 下
359 / 774
第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第359話 グラスの行く自由の道

しおりを挟む
 とある分かれ道。
 タチクサでエミさんたちと別れた後、ロードたちは分かれ道に辿り着いた。

「じゃあ、ここでお別れだスワリオさん」

 ロードが言う。

「ロードこれを……」

 スワリオが渡してきたのはエミさんから貰っていた盗賊団のバッチだった。

「ん? 盗賊団のバッチか……スワリオさん、オレは盗賊団には……」

「わかってる。そいつはリョウのだ」

 スワリオが言う。

「いいのか? リョウさんの形見なんだろ?」

 ロードが訊く。

「構わない、それよりお前たちに共に命を預け合った者同士受け取って欲しい、もしオレがリョウならそうする。お前たちはツルバシセン団の仲間だ。盗賊は関係ない。何か困ったことがあたら遠慮なく頼ってくれ」

「ありがとう、貰っておくよ」

 バッチを見つめるロードだった。

「スワリオさん、私……色々失礼なこと言ってごめん。リョウさんも思っているような人じゃなかった。もっと早く盗賊になんて偏見を捨てていれば仲良くやれたのにな」

 スワンが謝る。

「リョウはそんなこと気にしない。スワンが正直にぶつかっていたのなら仲良くやれていたさ」

 スワリオはそう考える。

「そっか……」

 スワンは笑顔だった。

「ではな、ロード、ハズレ、スワン、オレも新たなツルバシセン団を引っ張って行く」

 スワリオが馬にまたがる。

「また会うときはもう盗賊ではなくなっているかもな」

 そう言い残し、馬を走らせて、分かれ道の右へ去って行くスワリオであった。

「これで三人に戻ったな」

 ハズレが言う。

「これからどうする?」
 
 スワンが訊く。

「もうこの異世界はオレたちがいなくても大丈夫だ。広い場所に行こう扉の邪魔にならないような場所に……」

 ロードが宣言した。
 
 三人は分かれ道の左へ行く。荷船を牽いていくドルフィーナもついて来る。

 その時、一行を草むらから見張る集団がいた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 林・広々とした場所。
 ロードたち一行は林の中、人目に付かない場所に来ていた。

「ここでいいか……?」

 ロードが言う。

「問題ないだろうな」

 ハズレが口にする。

「――後ろ!!」

 その時スワンが叫んだ。

 ガサガサと茂みの中から現れる荒くれ者たち。

「へっ! 女だ、女がいるぞ」「いいもん着てるじゃねーか」「おっ! 武器も荷物も大量だぞ」「こりゃいい、動く宝箱だ!」

 ロードたちの前に現れたのは小さな盗賊団のようだった。

「おい、大人しくオレたちの言うことを聞くんだぞ!!」「まず全員武器と服を脱げ!!」

 盗賊たちは宝を前に調子に乗っていた。

「油断するとすぐこれだ」

 スワンが眉間にしわを寄せる。

「まぁ、当然こんなのはいるよな」

 ハズレが余裕の口調で言う。

「オレとしたことが全然気が付かなかった」

 ロードも盗賊たちの姿を見る。15人くらいはいるようだった。

「ちっ、めんどくせー女以外殺せ!」「さっさと言われた通りにすりぁいいのによう」

 盗賊団が武器を構える。その時――――

「おう!!」「ばぁはぁ!!」「あぐ!!」「なっぶ!!」

 ドガッバキッボコッと人を殴りつける鈍い音が盗賊団の後ろの方からした。

「なんだ?」「おい! どうした」

 盗賊たちが後ろを振り返ると仲間たちが気絶していた。

「ったく、そんな目立つ格好してるからオレみてーなのに寄ってたかられるんだよ。ちっとは学習したらどうなんだぁ? ここはそういうところだ」

 草むらからもう一人の影が出て来た。緑色のフード付きマントを羽織ったグラスだった。

「ガフ!!」

 グラスが盗賊の首を肘で打って気絶させる。

「おう!!」

 グラスが盗賊の顔面を殴って気絶させる。

「グラス」

 ロードは意外そうなものを見るかのように驚いた。

「おい、かかしテメーはオレが人を殺さねーとは言うが、オレはそんなこと思わねー自分なんてもんがどんな奴かも知らねーだがこれだけは事実だ。オレはテメーを殺せねー、お前はオレの衝動を見張るかかし役には丁度いい」

 グラスが言う。

「――――!?」

 ロードはどういうことか気づく。

「つまり、どういうことハズレ」

 スワンが訊いてくる。

「ついて来るって言いたいんじゃないか?」

 ハズレが答えを言う。

「えっ!! ついて来る!? 待って、その前に一つ確認させて、あなたは改心した!?」

「さぁな」

「!!!? は、初めて話が出来た」

 スワンが喜んだ。

「……………………(以前とは違うみたいだ。これもロードがグラスを信じた結果か……)」

 ハズレは思う。

「どうするロード……オレたちは苦しむ人々を救うために最魔の元凶を目指して旅をしているが、グラスが同行してどうなるか……」

「グラスはオレにしか用はない。その言葉を信じる、二人にも他の人にも危害は加えないさ」

 その時ロードは鍵を回して異世界の扉を開く。

「――――!!」

 グラスは突然出て来た扉に驚いた。

「グラス、言っておくぞ。オレたちはお前の言うここの世界の人間じゃない。そしてもっと多くの世界を渡り歩くつもりだ。そこには全く違うルールや敵、危険、困難が待っているはずだ。もう二度と故郷へも帰れないかもしれない。友人にも会えないかもしれない。それでも来るか?」

 ロードは試す。

「分かり切った答えだ。どこへ行こうがオレの自由だ!」

 グラスは扉の中へと入って行った。

 そしてハズレもスワンも荷船を牽くドルフィーナも入って行く。

 木の葉が舞う。

 ロードはこの時、思い出した。希望のダンジョンで言の葉につむいだ言葉を、

『真実を答えろ、ここに何を求めて来た?』

「グラスの自由だ」

 ロードは扉の中へと入って行き、バタンと扉を閉める。

 木の葉が落ちる。

 この異世界から去って行ったのだった。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 フォックスグリード・ハラパの街。

 スタスタスタと廊下を歩くオハバリがいた。その背中には剱山刀を背負っている。

 この時、
(グラスが昔の様に戻ってくれてよかった)
(ロードたちには感謝しかない、グラスをよろしくな)
(オレはもうアイツとはつるめない)
(アイツは優しいから、オレがこれからすることには向いてないし、させたくもない)
(グラス、そいつらと行け! そして二度と落とすな大事な物を)
(お前は悪くないぜグラス)
(悪いのはお前をあんな風に、あんなことをさせたこの世界だ)
(お前だけじゃない、もっと多くの人間がお前よりも酷いことをしているはずだ)
(だからオレは世界を取る)
 オハバリはこう思っていた。

「それがオレの自由だ」

 オハバリは自分に喝を入れた。

 タッと廊下を出ると高台に立つ。そこから見えるのは何万人もの奴隷たち。

 いかつい顔をした男たちがそれらを前に並んでいた。そしてオハバリはその中央へ行く。

 タッと奴隷たちの見える場所から、スーーーーと息を吸い込み宣言する。

「オレはオハバリ!! 独裁者ゲロベルデに裁きを下しお前たちを自由にした者だ!! だが独裁者共はまだ残っている!! ここに集まった勇気ある協力者たち、共に世界を独裁者共から奪い取り、俺たちのような奴隷を自由にするぞ!! 今からオレたちは革命ハモン団だぁ!!」

 木の葉舞う中オハバリは堂々と宣言した。

『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』

 奴隷たちが雄叫びを上げる。

 のちにこのハモン団とオハバリは、グラスから受け取った葉々の秘宝玉を使い宣言通り独裁者たちから奪い取り、全ての奴隷を解放し自由を与えたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...