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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第346話 やっと一息つけるロード

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 グラスが呪われしアマノを鞘付きの剣で地面に抑えていた。

「バカやろーー!! 早くしろーー!!」

 グラスが放心状態のロードに命令する。

「――――!!」

 ロードは揺れる意識を正常にする。

 その時、アマノの這いつくばる地面から葉っぱが舞い踊る。

「おお!!」

 勢い余ってグラスの抑えが弾かれる。そのまま後ろに下がる。

 ザンッと木の葉の中から現れるアマノ。その顔を見たグラスは――

「――――オハバリ!?」

 グラスは別人と勘違いする。そのせいで葉っぱの剣に気づくのに少し遅れた。

「大人しくなれ!!」

 ロードが渾身の左ストレートを繰り出す。アマノの顔面に直撃し吹っ飛ばす。

 ズザザザザザザザザッと葉っぱの地面を滑っていく。

「はぁ……はぁ……」

 ロードはフラフラになりながら、倒れたアマノに近づいて行く。

 その顔を見ると安らかに眠っているようだった。

(顔にあった妙な紋様は消え去ったが、首の印は消えてない)

「どうだ!! ロードくん」

 ガシラ先生が近づいてくる。

「成功ですか?」

 ヂカラが近づいてくる。

「しらべましょうか?」

 モトが近づいてくる。

「大丈夫だ……」

 今にも倒れそうなロードは頭を手で押さえていた。

「この人がアマノか……」

 ロードは改めてその顔を見る。

(どこかオハバリに似ているな)

「そのようだ。このようなことになっていようとは、驚いたが……かつて強欲王と戦い、一矢報いた唯一の男。あの特殊な葉の力がその証拠だろう」

「特殊な葉の力……まさか、このダンジョンに最初からあった葉っぱは全て――」

「それどころか、このダンジョン全て葉っぱで作られておるだろう」

(なんて人だ。まさか秘宝玉の力だったりするのか?)

「恐ろしいのはそれでも倒せん強欲王かもしれん。しかしこれでアマノの伝説も終わりだ」
「強欲王により深手を負ったアマノは死を悟り、強欲王から取り戻せなかった故郷のあったこの地へと呪いと共に帰り、誰の目にも触れないこの欲深き溝に」
「希望の宝を隠すことにしたのだろう」
「長くない命……死後の呪い」
「それらを踏まえ最後に葉っぱの力を使い、ダンジョンを作り上げ、その最奥でゴスベージャスの呪いを持つ自分をも超える相応しい者に宝を授けることにしたのだろう」

 ガシラ先生がアマノの人生を語る。

「世界を変える希望の為にか……凄い人だな」

 ロードはしゃがみ込みよーくその顔を覗き込んだ。

「けど宝はどこに……」

「しらべる。しらべる」

 ザッザッとグラスがアマノに近づいてく。

「――――!?」

 ロードは彼がおとなしいため、意外そうな顔をする。

「そう言えば似ているな。オハバリに……」

 ロードはグラスに話しかけた。

「……随分会ってねーーーー」

 グラスが落ち着いた調子で言う。

「アイツは会いたがってたぞ」

 ロードが伝える。

「………………そのうちなぁ」

 グラスは一呼吸おいて一言放つ。

「わかった」

 ロードはそういうとふらりと葉っぱの地面にドサッと倒れた。
 
「あーーーーーーーー」

 ロードは疲れた声を上げる。

「もう無理だ……少し眠るよ」

 その目を閉じようとした瞬間上空を見た。すると――

「――――――――!!!?」

 驚くべき物体を見た。

 ダァダァン!! と葉っぱの地面に上空から何かが降り立って来た。

 反応したロードは仰向けからうつ伏せになり、絶望する。

 その恐怖を具現化したような声がその場に響く。

「この程度で翼を折った気か? それでは届かない、この魔王フリフライにはな」

 両腕の翼を広げるフリフライ。悪しき存在が君臨していた。

 ゾオ!! とロードの背中に悪寒が走った。

 戦いはまだ終わっていなかったのだ。
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