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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第329話 いけない、いけない、いけ好かない子

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 スワンはクウィップの喉を掴みながら落ちて行った。

 一方クウィップは木のパイプにムチを絡ませたのだが、スワンの水の術により、切断された木のパイプ諸共落ちて行った。

 ガゴゴッと落ちていくパイプたち。

「九蛇苦のムチ!!」

 クウィップはのどを掴むスワンに尾羽から伸びるムチで攻撃していった。

「うあああああああああ!!」

 バシシシンとムチの嵐を浴びながら、それでもスワンは敵の喉を離さなかった。

 この時、
(絶対~~離さない、力は~~緩めない!!)
(最後まで!!)
 スワンの思考はこれだけだった。

 ミシミシと鳴る腕、クウィップが手を使って離そうとしていた。だが足と違ってそれ程の力はなかった。

「落ちたところで私に勝てると思ってるの!!」

 バシシシシシシシシシシシシンとムチで攻撃するが掴まれた手は離れない。

「それは落ちた先による!!」

 もはやいっぱいいっぱいのスワンこれが最後の賭けだった。

「――湖!?」

 二人の落ちる先はハズレの爆薬で空いた大穴だった。その下には湖がある。

 しかし、クウィップは落ちない。何とか9本のムチを使って穴の外に出た身体を引き留めた。

「――――!?」

 スワンが驚くがそんな暇はない。

「おうぅ!!」

 ドッと腹部に膝蹴りを食らうスワン。

「あえっ」

 くらっと意識が遠のきクウィップを掴んでいた手を離した。

「ぐう!!」

 そして、クウィップはスワンを足場にしてトロイアの中へ戻るためのジャンプをする。

「いけない子、戻ってまたお仕置きね」

 その際、しっかりとムチを一本使いスワンの腹部を捕えた。しかし――

 クウィップがトロイア内に戻ろうとした時、目の前を水の手が塞ぎにかかった。

「――――!!!?」

 この時、
(実力は完全にお前の方が上だ)
(けど私は諦めない)
(それだけで渡り合って見せる)
 ぐいっと水の腕を振るうスワン。

「ごぶっ――――!!」

 流石のクウィップもこの激流には逆らえなかった。勢い余った水の流れが、トロイアの穴に引っ掛けた鞭を一本一本剥がして来る。

 ゴゴボオ!! と穴から水の手が激流のように流れて来た。そのまま下の湖とゴバンと衝突し交わる。

「ごぶぶぶ」

 クウィップは湖の中に落ちた。そしてスワンも湖の中に入り込む。

 この時、
(捕まえたぞ……私の水はいい子でしょ)
 スワンはそう言い返したかった。

 この時、
(いけないいけない!! いい子ぶりやがってぇ!! いけ好かないわああ!!」
 クウィップが水中の中でさえムチを振るいスワンを襲うが、

 ゴボボボッと水圧による攻撃でクウィップは力尽き、水底へと落ちて行った。

 この時、
(水の中なら、わたしに負けはない……水底でいい子に眠っていて……)
 スワンは絶命したクウィップの沈んでいく様を眺めた。

 ギュッと両手で絆結びの腕輪を抱擁する。

 この時、
(ありがとう……ロード、ハズレ……私最後まで諦めなかったよ)
 スワンはそう思って腕輪にキスするのだった。

 そして、湖の中から地上に這い出るためにスーーーーっと静かに泳いでいく。

 この時、横腹を抑えて、
(さっきより痛みが強くなってる)
(水はもうこれでいい)
(脱水症状からは抜け出した)
(けど体の疲れがひどい)
(もうほとんどの術も、水雲鳥にもなれない)
(けど、休んでなんていられない)
(2人の元へ行かないと)
 スワンは湖から顔を出した。

 そして信じられないことが起きていた。

「えっ――――嘘……」

 目を見開いてもさっき在ったものがどこにもない。

「木馬が消えた!? どうして! どうなって! ロードとハズレは!? どこに!?」

 驚愕の事実、天翔木馬トロイアはスワンがクウィップと湖の中で戦っている間に消えてしまった。
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