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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝
第323話 トロイア船の船長シレイ
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トロイア内部。
ズドドドーンという音が何度も響き渡る。
通路の手すりにつかまって揺れに耐えるハズレ。
「機関室っぽいとこに着いたはいいが、何だこの揺れは……?」
「盗賊たちが爆弾でも投げてるの!?」
スワンが予測を立ててみる。
「投げないって話はしてたんだけどなーー」
ハズレが言う。
「ぐっ!!」
トロイアが揺れて内部が傾き、ハズレは壁にぶつかる。
「ハズレ!」
「スワンやっぱりオレはロードの方に向かう魔王が動いているのかもしれない」
「分かったこっちは任せて……」
「こいつを持ってけ……人質たちの脱出用の爆薬だ」
ハズレがスワン水雲鳥状態に爆薬の入った袋を渡す。
「それじゃあ気を付けて」
スーーーーっとスワンは機関室を通って行った。
ハズレは今さら引き返す。梯子に掴まり登っていく。
この時、
(また来た道を戻ることになるが……文句は言ってられない)
(オレは馬鹿か……魔王を倒さないと戦いは終わらない)
(だったらロードのサポートに徹するのがオレの役目だろう)
ハズレはそう思っていた。
スーーーーっと機関室の出口を見つける。しかし扉があって水雲鳥では通れない。
「扉か……はっ!」
仕方なく水雲鳥を解いて元の人間体の姿に戻るスワン。
この時、
(暑い、この熱気、この先長くはいられない。早く終わらせよう)
そう思っていた。
機関室の出口のドアノブに手を掛ける。スッと開いて中を見る。
「はぁ……はぁ……」
息を切らしながら見たものは――
何百人といる人間の保管庫だった。
円筒の段階を重ねた檻の中に収容されているやせ細った人間たち。ぶら下げられるように首と腕を錠に掛けられ、全員力が抜けている。
「これが燃料にされてる人、こんなに……男の人が多い」
その時、目の前に魔物が居ることに気づいたスワンは即座に物陰に隠れた。
「オレたちはどうする」「持ち場を離れるなよクウィップ様に怒られるぞ」「で、でもオイラはクウィップ様になら……」
話し合う魔物たち。
「…………(まずは敵を倒す)」
スワンは水の入ったフラスコを取り出した。
◆ ◆ ◆ ◆
トロイア頭部・操縦室。
「トロイア操縦室に敵だって!!」「どこだ敵!!」
ロードが破った扉から続々と魔物たちが入ってくる。
「ミチル!!」
青い剣から斬撃が放たれる。
「「「あああああああああああ!!」」」
魔物たちの断末魔が聞こえてくる。
更にロードは青い剣を振りまわし、辺りの壁や床を傷つけていく。
(このまま、ここを破壊すれば魔王も出てこざる負えないはず)
ロードは次々とミチルの力を使ってその場に破壊の嵐を振り撒く。
「馬鹿共めむざむざやられに気負って……」
シレイ船長が魔物たちがやられていく様子を見ている。
「強い……もはや、眷属使魔様たちでないと倒せないのでは……」「このままではトロイアの破壊になんてことに!」
シレイ船長のすぐそばにいた魔物たちが言う。
「させんぞ人間!! そのようなことをしても魔王さまは出て来ん!!」
叫ぶシレイ船長。
「……………………」
無視して破壊を続けるロード。
「何故なら魔王さまはこのトロイアにおられんからだ!!」
「――――!!」
流石に聞き逃せないことを聞いて手が止まるロード。
「ここに居ないだと!?」
「そう、フリフライ様はダンジョンに向かい親衛隊を連れ、この天候で進みの悪いトロイアより先に出立なされた。今頃は、すぐそこにある欲深き溝に入っておられるのだ!!」
(既に欲深き溝に入った!?)
「グラスはどこだ!?」
「――――!? なるほど、ヤツを助けに来たわけか……残念ながらフリフライ様とご一緒だ。2度と会えんよ」
「――――!?」
ロードは愕然とした。
「トロイア吹き飛ばせ!!」
シレイ船長がトロイアに指令を出した。
その時、肺のような器官から喉を通って頭部まで空気の圧がやって来た。そのもの凄い空気の圧のよってロードはおろか、シレイ船長も飛んで行った。いや、その各場所にいた魔物たちが残らず飛んできた。そして、トロイアの口部、窓ガラスのようなものが華が咲くように開き、全ての魔物たちを吐き出した。
「――――なっ!!」
ロードももちろんこの空気の動きに逆らえずトロイアの外に吐き出された。
「人間共め……この天翔木馬トロイア……甘く見たことが間違いなのだ。これこそフリフライ様の最大眷属使魔なのだ。そして我ら魔物たち全員の飛ぶ力はフリフライ様より賜りしこの羽がある限り、我らは自由に飛べるのだ」
シレイ船長は宙を浮き、空も飛べない人間であるロードを見向きもしなかった。
「さらばだ翼なき人間……落ちて死ぬがいい……燃料程度の分際が我らに戦いを挑むのが間違いなのだ」
「シレイ船長来てますよ!!」
近くで浮いていた魔物がそう叫んだ。
「――――!?」
シレイ船長は意図不明だった。
しかしそれは背後から突き刺さった剣によって気づかされた。
「――ぐおっ!!」
「――オレも飛べるぞ!!」
ロードの持つ青い剣は飛ぶという能力がある。それを掴んだまま飛ぶことでロード自身の身体も飛ぶことが出来る。
「なら共に落ちよ」
血反吐を吐きながらシレイ船長が言う。
「シレイ船長ーーーー!!」
魔物たちが呼ぶ。シレイ船長はおそらくフリフライにもらった羽の効果で飛ぶことをさせないようにしているみたいだった。つまり――
(おかしい、ミチルの力で飛べない!)
剣が突き刺さったままのシレイ船長とロードが二人して森に落ちていくのだった。
「シレイ船長ーーーー!!」
魔物たちが後を追う。
◆ ◆ ◆ ◆
森の中。
「なんてことだ!!」「お、おい見ろ!」
魔物たちがトロイアを見てざわめく。
「トロイアが止まった」
◆ ◆ ◆ ◆
トゲコッコーが、リョウが、ダイチが、レトリバーが、スワリオが、そして森に落ちてきたロードが見ていた。
ロードの近くにいたシレイ船長は死んで霧散化した。
◆ ◆ ◆ ◆
トロイア内部。
「揺れが収まった。スワンやったか。よくやった」
通路に立つハズレが呟く。
ズドドドーンという音が何度も響き渡る。
通路の手すりにつかまって揺れに耐えるハズレ。
「機関室っぽいとこに着いたはいいが、何だこの揺れは……?」
「盗賊たちが爆弾でも投げてるの!?」
スワンが予測を立ててみる。
「投げないって話はしてたんだけどなーー」
ハズレが言う。
「ぐっ!!」
トロイアが揺れて内部が傾き、ハズレは壁にぶつかる。
「ハズレ!」
「スワンやっぱりオレはロードの方に向かう魔王が動いているのかもしれない」
「分かったこっちは任せて……」
「こいつを持ってけ……人質たちの脱出用の爆薬だ」
ハズレがスワン水雲鳥状態に爆薬の入った袋を渡す。
「それじゃあ気を付けて」
スーーーーっとスワンは機関室を通って行った。
ハズレは今さら引き返す。梯子に掴まり登っていく。
この時、
(また来た道を戻ることになるが……文句は言ってられない)
(オレは馬鹿か……魔王を倒さないと戦いは終わらない)
(だったらロードのサポートに徹するのがオレの役目だろう)
ハズレはそう思っていた。
スーーーーっと機関室の出口を見つける。しかし扉があって水雲鳥では通れない。
「扉か……はっ!」
仕方なく水雲鳥を解いて元の人間体の姿に戻るスワン。
この時、
(暑い、この熱気、この先長くはいられない。早く終わらせよう)
そう思っていた。
機関室の出口のドアノブに手を掛ける。スッと開いて中を見る。
「はぁ……はぁ……」
息を切らしながら見たものは――
何百人といる人間の保管庫だった。
円筒の段階を重ねた檻の中に収容されているやせ細った人間たち。ぶら下げられるように首と腕を錠に掛けられ、全員力が抜けている。
「これが燃料にされてる人、こんなに……男の人が多い」
その時、目の前に魔物が居ることに気づいたスワンは即座に物陰に隠れた。
「オレたちはどうする」「持ち場を離れるなよクウィップ様に怒られるぞ」「で、でもオイラはクウィップ様になら……」
話し合う魔物たち。
「…………(まずは敵を倒す)」
スワンは水の入ったフラスコを取り出した。
◆ ◆ ◆ ◆
トロイア頭部・操縦室。
「トロイア操縦室に敵だって!!」「どこだ敵!!」
ロードが破った扉から続々と魔物たちが入ってくる。
「ミチル!!」
青い剣から斬撃が放たれる。
「「「あああああああああああ!!」」」
魔物たちの断末魔が聞こえてくる。
更にロードは青い剣を振りまわし、辺りの壁や床を傷つけていく。
(このまま、ここを破壊すれば魔王も出てこざる負えないはず)
ロードは次々とミチルの力を使ってその場に破壊の嵐を振り撒く。
「馬鹿共めむざむざやられに気負って……」
シレイ船長が魔物たちがやられていく様子を見ている。
「強い……もはや、眷属使魔様たちでないと倒せないのでは……」「このままではトロイアの破壊になんてことに!」
シレイ船長のすぐそばにいた魔物たちが言う。
「させんぞ人間!! そのようなことをしても魔王さまは出て来ん!!」
叫ぶシレイ船長。
「……………………」
無視して破壊を続けるロード。
「何故なら魔王さまはこのトロイアにおられんからだ!!」
「――――!!」
流石に聞き逃せないことを聞いて手が止まるロード。
「ここに居ないだと!?」
「そう、フリフライ様はダンジョンに向かい親衛隊を連れ、この天候で進みの悪いトロイアより先に出立なされた。今頃は、すぐそこにある欲深き溝に入っておられるのだ!!」
(既に欲深き溝に入った!?)
「グラスはどこだ!?」
「――――!? なるほど、ヤツを助けに来たわけか……残念ながらフリフライ様とご一緒だ。2度と会えんよ」
「――――!?」
ロードは愕然とした。
「トロイア吹き飛ばせ!!」
シレイ船長がトロイアに指令を出した。
その時、肺のような器官から喉を通って頭部まで空気の圧がやって来た。そのもの凄い空気の圧のよってロードはおろか、シレイ船長も飛んで行った。いや、その各場所にいた魔物たちが残らず飛んできた。そして、トロイアの口部、窓ガラスのようなものが華が咲くように開き、全ての魔物たちを吐き出した。
「――――なっ!!」
ロードももちろんこの空気の動きに逆らえずトロイアの外に吐き出された。
「人間共め……この天翔木馬トロイア……甘く見たことが間違いなのだ。これこそフリフライ様の最大眷属使魔なのだ。そして我ら魔物たち全員の飛ぶ力はフリフライ様より賜りしこの羽がある限り、我らは自由に飛べるのだ」
シレイ船長は宙を浮き、空も飛べない人間であるロードを見向きもしなかった。
「さらばだ翼なき人間……落ちて死ぬがいい……燃料程度の分際が我らに戦いを挑むのが間違いなのだ」
「シレイ船長来てますよ!!」
近くで浮いていた魔物がそう叫んだ。
「――――!?」
シレイ船長は意図不明だった。
しかしそれは背後から突き刺さった剣によって気づかされた。
「――ぐおっ!!」
「――オレも飛べるぞ!!」
ロードの持つ青い剣は飛ぶという能力がある。それを掴んだまま飛ぶことでロード自身の身体も飛ぶことが出来る。
「なら共に落ちよ」
血反吐を吐きながらシレイ船長が言う。
「シレイ船長ーーーー!!」
魔物たちが呼ぶ。シレイ船長はおそらくフリフライにもらった羽の効果で飛ぶことをさせないようにしているみたいだった。つまり――
(おかしい、ミチルの力で飛べない!)
剣が突き刺さったままのシレイ船長とロードが二人して森に落ちていくのだった。
「シレイ船長ーーーー!!」
魔物たちが後を追う。
◆ ◆ ◆ ◆
森の中。
「なんてことだ!!」「お、おい見ろ!」
魔物たちがトロイアを見てざわめく。
「トロイアが止まった」
◆ ◆ ◆ ◆
トゲコッコーが、リョウが、ダイチが、レトリバーが、スワリオが、そして森に落ちてきたロードが見ていた。
ロードの近くにいたシレイ船長は死んで霧散化した。
◆ ◆ ◆ ◆
トロイア内部。
「揺れが収まった。スワンやったか。よくやった」
通路に立つハズレが呟く。
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