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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝
第318話 テメーの信じてる正義を奪ってやる
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とある場所。
夜の闇が天翔木馬トロイアを染め上げる。
トロイアの内部にいる魔王フリフライはただじっと座していた。
その姿は夜の闇で見えにくい。
「まだ飛べないか? クウィップ……」
魔王フリフライの間にはもう一体の魔物が居たそれが先日、スワンを縛り上げた孔雀のような魔物だった。
「ただいま、燃料たる人間を調達している最中……しばしお待ちください」
「オレが言っているのは何故このトロイアが地に足をつけているかだ」
「はい……蓄えた人間たちの消耗が予想よりも早く、人間たちの質に問題がありました。それについてはロッカーライが単独で探索をしておりましたが、その後の消息が不明となっておりまして……」
「もうかれこれ三日は音信不通か」
「はい」
「俺への定時報告すら忘れるとは思えない……考えられんが死んだか?」
「まさか……!!」
クウィップは驚きの発言を耳にした。
「考えても仕方がない……グラスは逃げていないな?」
「はいご安心を……ボクネンジンが100もの部下を率いて厳重に連行しております……アレをかいくぐり、逃げるのは今のグラスには不可能でしょう」
「ならばよい、グラスが戻り次第、ただちにトロイアを浮上させるようトゲコッコーたちを急がせろ……」
「はい! 仰せのままに……」
頭を下げるクウィップ。
一方トゲコッコーという魔物は100の軍勢を連れ近隣の街に向かい人間たちをさらっていったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
グラスの隠れ家。
そこはただの樹木だったが根っこの方に洞窟らしきものが見え、中に入れるようになっていた。
今そこは木の魔物たちが見張っている。洞窟内でも間隔をあけて見張っている。
木の化物たちが見張っているのはグラスであった。
隠れ家の最奥。
グラスは希望のダンジョンが描かれた地図のところまで案内されていた。
ボクネンジンの部下たちが必死にグラスの隠れ家を調べている。すると――
「ボクネンジン様! 見つけました!」
「――――!!」
ボクネンジンが部下から地図を受け取る。前にグラスが言ったようにただの落書きにしか見えなかった。
「ふむ……」
「ぐおっ!!」
ボクネンジンはグラスを地面に取り押さえた。
「これだな?」
地図を見せびらかしてくるボクネンジン。
「ああソレだ」
「――立て!!」
「――ぐうっ!!」
グラスは顎を蹴られ無理やり立たせられる。
「戻る」
それだけ言うと魔物たちはグラスを連れて隠れ家から出ようとしていた。
この時、
(あと一日)
(けっオレは一体何をやってんだ?)
(あんな奴にオレの正しさを証明させる為だけに、この命、人生をかける)
(博打だ、頭がおかしくなってやがる)
(全部アイツのせいだ)
脳裏にロードの姿がよぎる。
(ああ……そうだ……アイツに見せてやる)
(奪ってやるテメーの信じてるもんを……)
(このオレが死んで教える。思い知らせてやる見せてけてやる)
(それでテメーは殺したも同然、オレの勝ちだ)
(もう宝もいらねー地図も……何もかもいらねー)
(だから奪ってやる。テメーの正しさを奪ってやる)
(奪い合いそれが世界の全てだ! かかしヤローー!)
唇から血を流すグラスの形相は怒りに満ちていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ダメスト・近場の林。
ロードたちはハズレの持って来た肉の串焼きを食べていた。
ロードとハズレはそれぞれの丸太に座り、スワンは水のクッションの上に座っている。
「火薬のついでに貰って来た。久しぶりだろ。この世界で肉が食べられるなんて感動さ」
「いいのか……この世界でこんな贅沢……苦しむ人々の為にこれはとっておくべきじゃ」
またロードが人を思いはかった発言をする。
「魔王を倒すために食べなよ」
ハズレが若干引いていた。
肉を頬張るロードとスワン。
「感動する味だ」
「この味一生忘れられないかもお肉さん」
三人ともハフハフ言いながら食べている。
「決戦前夜のささいな幸せ……一切れ一切れ、よく味わってくれ」
ハズレが言う。三人は今ほどこの異世界で幸せを感じたことが無いかもしれない。
そろそろ眠る時間も近づいて来ていた。
夜の闇が天翔木馬トロイアを染め上げる。
トロイアの内部にいる魔王フリフライはただじっと座していた。
その姿は夜の闇で見えにくい。
「まだ飛べないか? クウィップ……」
魔王フリフライの間にはもう一体の魔物が居たそれが先日、スワンを縛り上げた孔雀のような魔物だった。
「ただいま、燃料たる人間を調達している最中……しばしお待ちください」
「オレが言っているのは何故このトロイアが地に足をつけているかだ」
「はい……蓄えた人間たちの消耗が予想よりも早く、人間たちの質に問題がありました。それについてはロッカーライが単独で探索をしておりましたが、その後の消息が不明となっておりまして……」
「もうかれこれ三日は音信不通か」
「はい」
「俺への定時報告すら忘れるとは思えない……考えられんが死んだか?」
「まさか……!!」
クウィップは驚きの発言を耳にした。
「考えても仕方がない……グラスは逃げていないな?」
「はいご安心を……ボクネンジンが100もの部下を率いて厳重に連行しております……アレをかいくぐり、逃げるのは今のグラスには不可能でしょう」
「ならばよい、グラスが戻り次第、ただちにトロイアを浮上させるようトゲコッコーたちを急がせろ……」
「はい! 仰せのままに……」
頭を下げるクウィップ。
一方トゲコッコーという魔物は100の軍勢を連れ近隣の街に向かい人間たちをさらっていったのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
グラスの隠れ家。
そこはただの樹木だったが根っこの方に洞窟らしきものが見え、中に入れるようになっていた。
今そこは木の魔物たちが見張っている。洞窟内でも間隔をあけて見張っている。
木の化物たちが見張っているのはグラスであった。
隠れ家の最奥。
グラスは希望のダンジョンが描かれた地図のところまで案内されていた。
ボクネンジンの部下たちが必死にグラスの隠れ家を調べている。すると――
「ボクネンジン様! 見つけました!」
「――――!!」
ボクネンジンが部下から地図を受け取る。前にグラスが言ったようにただの落書きにしか見えなかった。
「ふむ……」
「ぐおっ!!」
ボクネンジンはグラスを地面に取り押さえた。
「これだな?」
地図を見せびらかしてくるボクネンジン。
「ああソレだ」
「――立て!!」
「――ぐうっ!!」
グラスは顎を蹴られ無理やり立たせられる。
「戻る」
それだけ言うと魔物たちはグラスを連れて隠れ家から出ようとしていた。
この時、
(あと一日)
(けっオレは一体何をやってんだ?)
(あんな奴にオレの正しさを証明させる為だけに、この命、人生をかける)
(博打だ、頭がおかしくなってやがる)
(全部アイツのせいだ)
脳裏にロードの姿がよぎる。
(ああ……そうだ……アイツに見せてやる)
(奪ってやるテメーの信じてるもんを……)
(このオレが死んで教える。思い知らせてやる見せてけてやる)
(それでテメーは殺したも同然、オレの勝ちだ)
(もう宝もいらねー地図も……何もかもいらねー)
(だから奪ってやる。テメーの正しさを奪ってやる)
(奪い合いそれが世界の全てだ! かかしヤローー!)
唇から血を流すグラスの形相は怒りに満ちていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ダメスト・近場の林。
ロードたちはハズレの持って来た肉の串焼きを食べていた。
ロードとハズレはそれぞれの丸太に座り、スワンは水のクッションの上に座っている。
「火薬のついでに貰って来た。久しぶりだろ。この世界で肉が食べられるなんて感動さ」
「いいのか……この世界でこんな贅沢……苦しむ人々の為にこれはとっておくべきじゃ」
またロードが人を思いはかった発言をする。
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肉を頬張るロードとスワン。
「感動する味だ」
「この味一生忘れられないかもお肉さん」
三人ともハフハフ言いながら食べている。
「決戦前夜のささいな幸せ……一切れ一切れ、よく味わってくれ」
ハズレが言う。三人は今ほどこの異世界で幸せを感じたことが無いかもしれない。
そろそろ眠る時間も近づいて来ていた。
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