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第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第317話 それぞれの思惑

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 ロードは魔王を欲深き溝に突き落とすと言った。

「そうか、その手があった」

 スワンが感心する。

 この時、
(底の深さがわからないがもしかしたら)
(落とせばそのまま魔王の脅威はなくなるかもしれない)
(ロードは精霊の剣で飛んで戻って来られる)
 ハズレは名案だと思った。

「オレは魔王に最初からかかるから力を温存しておく。もしもの時は眷属使魔とグラスを頼む」

 ロードは決意を固くする。

「分かったやってみよう」

 ハズレが賛成した。

「どうせダンジョンに辿り着いても戻って来られないし、魔王と言えど二度と上がって来られないかも」

 スワンが調子よく言った。

「ダンジョンにある人々を救うという希望の宝……手に入れるべきなんだろうけど、魔王を倒すにはこれが最善策だ」

「そう気を落とすことはないさ」

「うん、とりあえず魔王さえいなくなればこれ以上の被害はなくなる。また皆で乗り切ろう」

「ありがとう二人共」

 ロードは感謝する。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ダメスト・スコップザラ団のテント群。
 明日は決戦だというのに、浮かれて酒を飲み続けるスコップザラ団の団員たち。

「浮かれてやがんな」

 首領・ダイチが酒を飲み買う団員を見てぼやく。

「ドロ、アイツらに言っとけ……魔物共とは手ー抜いて戦えってな」

「分かってるよドン・ダイチ」

「ツルバシセン団とシャベルマス団……アイツらは戦いに乗り気だ。戦いの後、誰があの木馬を手に入れるかが重要だ。魔王の宝も分捕る……」

「その後、ガキ共の言っていた希望のダンジョンに向かうのもいいかもな……」

 ドロがビールの入ったジョッキを片手に言う。

「そいつはまた後日だ。なんにせよ。最後に全部いただくのはスコップザラ団だ」

 ダイチがニヤリと笑う。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ダメスト・集会場テント。
 空になった酒瓶がいくつも転がっていた。

「とまぁ……アイツらは考えるだろうな」

 ゴトッとまた空になった酒瓶を置くのはリョウだった。

「いいのか? 後でもめることになるぞ?」

 レトリバーが友人に忠告する。

「背後から刺してこねーなら構わなーよ。それに宝が誰の手に落ちるか……ゴクゴク、決まった訳じゃねー」

 ジョッキに入ったビールを一気飲みして、また机の上に空瓶を転がすリョウ。

「最後は俺たちのもんだ……」

 口から零れたビールを手の甲で拭いながら言う。

「山分けだな」

 レトリバーが言う。

「確認するまでもねー、いつも通り昔通り大人共に見せてやろうぜ、俺たちのやり方」

「ああ、まず俺は捕らわれた仲間を助けてやらねーといけねーけどな」

 ゴクゴクと酒瓶にそのまま口をつけて飲み干していくレトリバー。

「オレもアイツらに協力しねーとな」

「そこだ。一体どういう風の吹き回しだ……お前が他人に手を貸すなんて……」

「ん? アイツらエミさんの恩人でな」

「そういうことか……」

「だが、アイツらの輝きはその辺の宝とは違う。何か見えてきそうだ」

 リョウが右手で空気を掴む。

「なるほど……長い話になりそうだ」

「オメー真面目に言ってんだぞ!!」

「ハハハ」

 リョウとレトリバーは二人で酒を飲み交わしていた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 ダメスト・テント群。
 ロードとスワンは明日の準備の為、色々と用意していた。
 盗賊たちをかいくぐってやっと水を手に入れるスワン。
 水差しから五個のフラスコに水を注いでいく。
 そして蓋をした。一方ロードはというとコップに入れた水を口に含んでいた。

「こんなもんかな」

 スワンがビンに水を入れ終わる。

「もっと大量に持って行ければいいのにな」

「そうなんだけどあまり持っていくと重いから、だからこれは精霊たちへの供物。私の代わりに水分を集めてもらう」

 水の入った瓶を精霊の術か何かで小さくし、腕輪に引っ掛けていくスワンだった。

「そういうカラクリだったのか精霊の術は……」

 ロードは飲んでいた水のコップを元の位置に戻した。

「うん、そういうカラクリ」

「終わった。行こう」

 スワンが準備を終えて誘う。

 
 ▼ ▼ ▼


 盗賊たちのいるテントを通り過ぎていく。

「私一人でもよかったのに……」

「ハズレが辺りが盗賊だらけだからと言っていた」

「まぁ……いいけど」

「「――――!!」」

 その時ロードとスワンの耳に問題ごとが聞こえてきた。

「えーーーー、こんな日にまで争ってるの? これだから荒っぽい人たちは……ってロード!?」

 ロードが即座に走り出したのでスワンは驚いた。


 ▼ ▼ ▼


「オイ、どこに目―つけてんだデクヤロー共!!」

 そいつはシャベルマス団のドーベルという男だった。

「小さい」「悪いのお前」

 その大男たちはいつかフォックスグリード入国時に見たスコップザラ団の双子の男ファイとゴー。

「文句あるなら来い」「よわっち―ヤツ来い」

「上等だ!!」

 二人の男が拳を握り振り被る。そして――――

 ロードが仲裁するように間に入って拳を両手で止めた。

「「「――――!!」」」

「どけよぶん殴るぞ!!」

「じゃまじゃま」「あっちいけ」

「ダメだ。俺たちの敵は魔王だ。拳を解くんだ」

 ロードは止める。スワンが野次馬の中から見守る。

「ちっシラケちまった」

 ドーベルが拳を引く。

「いつでもこい」「ケンカかう」

 双子の男たちもその場を後にした。

「こんな時くらい、手と手を取り合えばいいのに」

 ロードが近づいて来たスワンに言う。

「ホントに……もう行こ……ハズレも戻ってるかも」

 そう言うとスワンはロードの手を引き、その場から連れ出した。

「ああ」

 まだまだ夜は終わらない。
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