上 下
316 / 743
第七章 千年以上眠り続ける希望のダンジョンの宝

第316話 我慢ならずに意見を言うスワン

しおりを挟む
 ツッチーの前に立ちはだかるスワン。

「邪魔なのはどっちか……」

 その言葉はツッチーを立ち上がらせたダイチに届けた。

「ああ? 何か言ったか? クソガキ……」

 机に肘をつきながら聞くダイチ。

「だから、話の邪魔をしてるのはどっちかっていうと、そっちなんじゃない」

 スワンは声を押し殺したが怒りに震えていた。

「あんだと!?」

 ダイチは立ち上がった。

「だって、ハズレもロードも魔王の怖さをよく知ってるから皆に必死で教えようとしている」
「あなた達を生かそうとしている。勝たそうとしている」
「でもこの世界のほとんどの人は自分のことしか頭にない」
「こっちがいくら手を差し伸べても、そっちは手なんか差し伸べてくれない」
「わかる? いざ戦いが始まったら、私たちがあの恐ろしい魔物と戦って」
「あなた達はすぐさま逃げ出す見捨てるに決まってる」
「協力する気がないのならここから出てって、邪魔」

 スワンは言いたいことを言いきった。

「ハッ、何を分け分かんねーことを……まぁいい、どうせこっちは持って来てねー拾える情報は拾ってやる」

 ドサッとソファーに座り直すダイチ。

「何だよダイチ、気圧されやがって珍しい」

 リョウが言う。

「理想の女でも見つけたか?」

 レトリバーが茶化す。

「うっせーぞ、ちげーよ」

 ダイチの文句がやんだことでツッチーも座り直す。

「ねぇお嬢ちゃん。あなたが怒る気持ちもわかるけど、私たちは盗賊よ。お互い奪うことで生きてきた……そんな私たちが集まったとはいえ協力して戦うことが出来ると思う? 答えは出来ない。私たちは信用なんてしない……いつ裏切られてもいいようにね……今はただ共通の敵がいる。それだけの関係よ」

 チワが分かりやすいように説明する。

「だからもし背後から奪ってくる奴らがいれば、全員で潰すための集り会い。好き勝手やってもいいが邪魔をするな……というのがオレたち盗賊のやり方だ」

 レトリバーが補足説明する。

「フフフ」

 笑うチワ。

「……………………」

 静かに話を聞くスワン。

「とまぁ、そういうことだ勘違いさせてすまねーが、当日それぞれが何するかが重要なんだ。まっオレたちは出来るだけ協力するからよ」

 リョウも説明する。

 そしてスワンは踵を返し、魚の尾ひれのような髪を揺らす。

「二人共、わたし先に休んでる」

「「スワン」」

 テントから出ていくスワンだった。

「今は一人にしておこう、何か気持ちの整理をしたいんだろう」

 ハズレが言う。

「ああ」

 ロードが同意する。

「じゃあオレたちが知ってる魔王側のことを話す」

 ハズレが情報を提供する。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 集会場テント前。
 スワンは外で腰を下ろして俯いていた。

 この時、
(こんなのおかしい……けど、ロードの言ってたことがわかった)
 スワンはそう思っていた。


 ◆ ◆ ◆ ◆


 その夜。
 集会場のテントで座りながら眠っているスワンがいた。
 ロードが揺すって起こす。

「スワン起きろ……」

「ん……」

 目を覚まして顔を上げるスワン。

「ロード、ハズレ」

「会議終わったぞ……」

 ロードが報告する。


 ▼ ▼ ▼


 ダメスト・テントの郡。
 盗賊たちが集まる地は血気盛んだった。
 目つきの悪い人が多すぎて尻すぐみしそうなくらいだ。

 そして、あまりのも落ち着けない場所だったので、テントの郡から少し離れた林の中で焚火をしていた。

「それでどうなった?」

 スワンが訊いてくる。

「当日どの方向から奴らが来るかにもよるが大体地形や戦術は固まった」

 ハズレが報告する。

「木馬にいる盗賊団の仲間、まぁ、一般人もいるだろう人たちを巻き込ませない程度に好き勝手やるだとさ」

 ロードも報告する。

「結局それか……魔王の強さとか眷属使魔の話を聞いてもその対応……上手くいく気がしない」

 スワンは愕然とする。

「そこはオレがカバーすればいい」

「私たちがね!!」

 スワンが強調した。

「「――――!!」」

 その時、ロードとハズレは林の中に入って行く馬に乗った一団を見つけた。マテヨを先頭にしていた。

「マテヨさん、一足先に出発したか……」

 ハズレが目で見送る。

「オレたちは明日の早朝か、起きれるかスワン?」

 ロードが訊く。

「昼間寝たから全然眠くない」

 スワンが答える。

「あとで火薬を調達してこようかなーー」

 ハズレが口にする。

「私たちはどう動くの……決めておこう」

「オレはハズレの言う通り直接乗り込みたいと思ってる」

「でも矢は?」

「木馬が現れたらすぐに竜封じの剣を解放してアカを呼び出す」

「――――!! アカってロードの友達の竜の事?」

「ああ、聞いていたかアカ」

「うむ、問題ない」

 竜封じの剣から声が聞こえてきた。

「アカか、考えたな」

「スワンにハズレ、久しいな、明日は共に魔王打倒を果たそうではないか」

「何させる気?」

「アカが火を噴いて木馬の側面を破壊してそこから乗り込む」

「アカさんに乗ってトロイアまで乗り込むのはわかった」

 スワンが納得した。

「よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします」

 アカとスワンが打ち解け合う。

「乗り込んだ後はどうするの?」

「オレが魔王を木馬から引き離す」

「「――――!?」」

 二人が驚いた。

「ジョーダンだろ!? ロード何考えてるんだ!!」

「忘れたの!? あのゴワドーンでさえ倒すどころかまともにダメージさえ――」

「――それは分かってるさ。だから倒すんじゃなく注意を引くんだ。その隙に二人は木馬を奪って、捕まっている人たちを逃がしてくれ」

「ロード……囮になるってこと?」

「逃がすのはいいが、ロードはどうする。魔王相手に……」

 ハズレが提案に乗るがまだ引っ掛かっていた。

「魔王は欲深き溝へ突き落す」

 それはロードの秘策だった。シャキンと竜封じの剣を鞘の中へ仕舞い込む。

 勝負の前の夜はまだ終わらない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...